歌詞の内容はともかくとして、イチイチかっこいい曲である。
跳ねるようなストリングスのリフ*1、
静寂の中、時計の秒針が時を刻むような、乾いたドラムの音、
青江三奈のタメのきいたハスキーボイス、
そしてブレイク、
「ドゥドゥヴィドゥヴィドゥビ・・・」のスキャット*2、
その後に絶妙なタイミングで入る三連の演奏。
そんなふうに、ただカッコいいサウンドだけであれば、
ここまでヒットはしなかっただろうが、
そこに
「アッ・・・ ンッ・・・」
吐息、というより、まんまの喘ぎ声を加えたところ、
絶妙な背徳感を抱え、見事に大ヒットした。
今の世にこういうものをメジャーシーンに持ち出したら、見事に炎上しそうなもんだが
当時でもやっぱり非難ゴーゴーだったと思われる。
けど、世に出した。その決断がすごいね。
とはいうものの、歌詞に直接的な性的表現はまったく出てこない。
「夜」や「恋」、「夢」といったキーワードを見せるだけで、
肝心なところは「♪ドゥドゥビ・・・」と伏せてしまう。
こういうのをもっと露骨にやったのが、のちの
『美・サイレント』(山口百恵/1979年/ by)で、
肝心なところでマイクを外し、口パクする演出がニクい。
オブラートに包む、という慣用表現*3があるが、
これらでやっていることは、まさにその逆。
肝心なところを隠すんだけど、却ってそれが余計に際立ってしまう。
言うなれば、言葉によるチラリズムだ。
スケベを餌に、渋くてカッコいい音楽をヒットさせるなんて、、
なんていやらしいのだろう!
名曲・聴きドコロ★マニアックス
この曲一番の大問題、その喘ぎ声。
一つ一つ、喘ぎ方というか、発声を変えている。
おそらく意識してやっているのだと思う.
わざとらしい喘ぎ声が
女の小ずるさを演出している・・・ように聞こえるのは
考えすぎか。
妄想はそこそこに!
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
伊勢佐木町
横浜の中心にほど近い伊勢佐木。関内駅から横浜スタジアムや中華街へ向かうのとは反対側にある。群馬の伊勢崎ではない。
曲のイメージから勘違いされがちだが、昔も今も色町だったことはなく、百貨店などが立ち並ぶ繁華街。日本最初の歩行者天国はこの街だという。
灯がともる
繁華街の明かりとも取れるが、上記のように、伊勢佐木は色町ではないので、おそらくは恋心に火が付いたことを表現しているのだと思われる。恋多き女の歌、なのだろう。
雨がそぼ降り
これは雨の降り方の表現というよりは、
雨に降られて、傘や雨合羽もたいして役に立たず、服の中までぐっしょり濡れてしまった、
そんな状態を想像する方がニュアンスとしては近いと思う。
「そぼる」とは濡れてビショビショになること。
濡れそぼる、という文学的な言葉にも使われる。
しょんぼりとするとか、眼がショボショボする、という表現も
ここから来ているものと思われる。
現在入手可能な音源
ライブはもう見ることができないので、映像をどうぞ
脚注
*1:【ストリングスのリフ】ストリングスは、バイオリンを中心とした、弦楽器の多重奏のこと、リフは決まった旋律を、コード(和音)に合わせた音程を変えて繰り返すこと
*2:【スキャット】意味を持たない歌詞。「♪ラララ・・・」「♪ルルル・・・」や、ハミングみたいのもスキャットのひとつ。
*3:【オブラートに包む】デンプンでできた薄い透明なフィルムをオブラートという。苦い薬や、飛び散りやすい粉薬を飲みやすいように包んで飲むのに使われる。
比較的身近なところでは、「南国特産ボンタンアメ」などについている、口の中で溶ける包み紙のようなもの、
あれがオブラートだ。
「オブラートに包む」とは、直接的にものを言うのではなく、間に何かを挟むように、遠回しに言うことの例え。