日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『タイムマシンにおねがい』 / サディスティック・ミカ・バンド ~ 時代に早すぎたギターサウンド

初めてパフィーを聴いた時の、激しいまでの既視感は、
これだったのかもしれない。

当時は、shampoo*1などとの類似性が言われ、
どこか腑に落ちないままに、ああ確かに、と半ば納得していたが、
まさかそこから20年以上もさかのぼったところ*2
既視感*3の源が転がっているとは思わなかった。



それにしてもこの表題曲、今日、今の時代にリリースしても
なんら違和感のない曲だと思う。
ましてや、パフィーの曲と嘘紹介をしても信じる人がいるんじゃないかな?

現代においてもちょくちょくテレビとかでも部分的に使われている曲なので、
前からタイトルとメロディーはなんとなく知っていたのだけれど
改めて聴いてみると、その正統派ともいえるギターサウンド
古臭さがあんまりないのだ。

あえて時代の音を探すと、ラストのループから突然の沈黙までに
アナログ時代の手作り感*4を見出す程度にとどまる感じだ。


シングルジャケット/駿河屋より
  • 作詞 松山猛、作曲 加藤和彦、編曲 クリス・トーマス
  • 1974年(昭和49年)10月5日、東芝EMIより発売
  • オリコンチャート圏外(月並みな言い方だが、時代が付いてきていなかったのだろうか)
  • 歌詞はうたまっぷへ:タイムマシンにおねがい サディスティック・ミカ・バンド 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:黒船 (サディスティック・ミカ・バンドのアルバム) - Wikipedia


  • 歌詞においては、タイムマシーンでめぐる古今東西の事象
    (どうやらこのタイムマシンは未来には行けないらしい)
    を歌っている都合上、古いものが出て来るのは当然の成り行きで、
    当時の視点でも現在の視点でも、昔は昔であることには変わりはなく、
    ありがちな「現在との比較」の表現が出てこないため、時代の差異による違和感はない。

    あえて、時代を感じる言葉を探すと
    スイッチを「廻す」という表現に行き当たる程度*5だろうか。

    もう一つ意外なところでは、変に筋が通った歌詞で、支離滅裂さがあまりないのが、
    逆に時代の古さを露呈しているのかもしれない。
    テーマ的には、もっとぶっ飛んだ歌詞の方が合うのではないかと思うが。
    このあたりに、まだまだ時代がこなれていないのかもしれないな、とも思う。

    そういったハチャメチャな歌詞が時代に認められてくるのは、
    表題曲の頃とほぼ時を同じくして頭角を現してきた
    井上陽水*6の台頭を待たなければいけない。


    しかしながら、ミカによる力の抜けたボーカルが
    歌詞にあいまいさと意味不明感を与え、同じような効果を生み出しているのだが。

    偶然の生んだ結果か、はてさて?





    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    この曲は、突然始まり、突然終わる。
    また歌い始めの1拍目に、休符を持ってくるあたりにただならぬセンスを感じるが、
    そんなサウンドを、ビートルズなどの英国ロック史に必ずと言っていいほど登場する
    クリス・トーマスがプロデュースしていたことに
    思わずのけぞるような驚きを感じて、おもわず声高になるんだが。

    ひょっとして、こういうことに驚くのは
    自分がマニアだからだろうか。たぶんそうだ。


    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    ジュラ紀の世界
    1番のタイムトラベル先はジュラ紀。1億5千~2億年位前。
    数字が大きすぎてまったくピンと来ないが、
    巻貝化石の代表、アンモナイトに始まり、恐竜時代の全盛のころ。
    もっとも「ティラノサウルス」は時代をもうひとつ時代を経た
    白亜紀の恐竜なので時代が一致しない。
    ことによるとこのタイムマシン、ダイアルが対数的*7になっていて
    古い時代になるとタイムスリップの精度が悪く誤差が大きいのかもしれない。

    きらめく黄金時代
    2番のタイムトラベル先は、アメリカのハリウッド映画の全盛期。1920~50年頃か。
    「ボギー」は名優ハンフリー・ボガートのことで、
    「ソフト」はそのトレードマークのソフト帽*8のこと。
    デューセンバーグ」は同時期に栄えたアメリカの自動車メーカーらしいが、
    これについてはよく知らない。

    鹿鳴館では夜ごとの
    3番は1880年代の日本。当時の迎賓館「鹿鳴館」にタイムスリップ。
    「ポンパドール」は前髪を上げてデコを出し、後ろでまとめた髪型らしいが、
    これもよく知らないのでパス。
    そんな髪型を持つ貴婦人たちと、シルクハットの似合う名士たちの社交場だとおもいねぇ。


    現在入手可能な音源
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。



    脚注

    *1:【shampoo】イギリスの二人組。『trouble』(1994年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)が有名

    *2:【20年以上もさかのぼったところ】これを書いているいま現在(2015年)からみると、その倍以上もさかのぼったところ

    *3:【既視感】あ、ビジュアルではなくサウンドの話だから“既聴感”と書くべきか。

    *4:【アナログ時代の手作り感】このループは編集でコピペして作り上げたものではなく、そのように演奏しているようだ

    *5:【スイッチを「廻す」】ダイアルのようなアナログスイッチはほとんど見かけなくなってしまって久しい

    *6:井上陽水】デビュー時の芸名は、アンドレ・カンドレ。芸人のような名前からしてむちゃくちゃだ。

    *7:【対数的】対数とは、大雑把に言えば桁数のこと。ダイアルの目盛が「桁数」になってて、1目盛ごとに1年前、10年前、100年前、、、というダイヤルになっているのではないかと思う。

    *8:【ソフト帽】中折れ帽ともいう。インディー・ジョーンズ博士がかぶっている帽子を想像するといいだろうか。