日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『お嫁サンバ』 郷ひろみ ~ 追っかけに追い越されてるんですけど。

ある種、ネタのひとつとして、

ことあるごとに郷ひろみがエピソードを披露しているうた。

 

メロディーが先にできていて、

あとからそれに合わせて歌詞が加えられるという

いわゆる“曲先”*1の曲にあって、

メロディーのよさに仕上がりを楽しみに待っていたら、

歌詞のあまりのギャップに崩れ落ちた、という話。

 

 

だけど郷ひろみの歌って、もともとこういう

ある種ふざけた、

もうちょっと良い表現を使うと

遊び心のある曲のイメージがあったので、

このエピソードはかえって意外だった。

 

 

デビュー曲『男の子女の子』(1972年)だって、

アイドルソングとはいえかなり恥ずかしい感じの歌詞だし、

『林檎殺人事件』(樹木希林とのデュエット/1978年)

なんかサビが「♪フニフニフニフニ フニフーニ」だし、

『比呂魅卿の犯罪』(1983年)なんてタイトルからして

ふざけているとしか思えない。

 

*2本人はいたって真面目なのだろうが、

周囲が彼に対し、魔がさすかのように

いたずら心を起こしてしまうのだろう。

 

どこか、あれっ、と違和感や面白みを与える

フレーズを入られずには居られない、

そんな存在なのだと思う。

 

郷ひろみの代表曲のうち、

『セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)』(1980年)

『哀愁のカサブランカ』(1982年)

『僕がどんなに君を好きか、君は知らない』(1993年)

あたりのおちゃらけのない歌は、実はカバー曲だったりする。

 

 

 

「♪イチ、ニ、サンバ ニイ、ニ、サンバ

  お嫁、お嫁 お嫁サンバ」

 

何ともキャッチ―だけど、

何ともいたずらがすぎるフレーズだろう。

 

歌詞を見渡してみても、この部分がなければ

そんなにふざけた感じはしない。

 

若い女性たちに、

慌てないでもう一度よく考えて、これからが女の見せ所だよ、と

やさしく諭しているだけだ。

 

だけど、だけど、「お嫁サンバ」

しょーもない駄洒落が、かえってこのうたに

サンバのハッピーさを強調させる効果を与えている。

 

のちの『マツケンサンバII』(松平健/1999年)

にも通ずる、

真面目にふざけたエンターテイメントこそが

郷ひろみの真骨頂なのだろう。

 

ひょっとすると本人が意識していないだけで。

 

 

 

 

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

 途中で驚くべきことが起こる。

「♪あの街この街(あの街この街)日が暮れて」

「♪あの人この人(あの人この人)ウェディングベル」

郷ひろみの歌を追っかけていたコーラスが、

あろうことか「♪あぁあーああー」と歌っている間に

「♪(それが大事それが大事)」

次の歌詞を先取りして歌ってしまっている。

 

まるで、郷が歌詞を忘れて「あぁー」でごまかしているのを

バックコーラスが、こっそり教えているかのよう。

 

追っかけのコーラスに、追い越される歌詞というのは

あまり聞いたことはない。*3

 

 

楽曲的なことで蛇足をもう一つ。

この曲は演奏がサンバのリズムにいまひとつ乗りきっていない。

これはイントロの最後、歌の始まる直前の

3連符が2回続くところなんかに明白で、

今のプレーヤーだったらもっとキレのある演奏をするのだろうと

勝手に想像してしまうが、

そうなると今度は、間違いなくホイッスルのやかましい音が

挿入されてしまうことは間違いないので、

それもどうかと思ってしまう。

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「お世辞じゃないよ」

おせいじ、と歌っているのはメロディーが一音多いせいか。おせじ。

「おせいじ じゃないよー」

 

「花の命はこれからなのに蕾のままでいいわと言うの」

「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」(林扶美子)

という句にもあるように 

女性の人生を花にたとえる表現は、

どこから来ているのだろう。

『お嫁サンバ』では結婚を花の命、女としての

終わりとしてとらえている。

 

昔、日本生命の「ニッセイナイスデイ」のCM曲で「花の命は結構長い♪」

と歌われていて*4、そっちの方がホントだよな、としみじみ感じてしまう今日この頃。

 

「それが大事だよ」

それってどれよ、と思わず突っ込みたくなる。

直前の「♪一人のものにならないで」というのがそれにあたると思われるが、

そうなると『それが大事』(大事MANブラザーズバンド/1991年)では、

「♪負けないこと 投げ出さないこと 逃げ出さないこと 信じぬくこと

   ダメになりそうなとき それが一番大事」

ダメになりそうな瞬間が、一番大事ってことになってしまう。

 

ていうかそもそもこの歌、

嫁入り直前の女に、つい手を出そうとしてしまう、という

プレイボーイの不届きな内容の歌なんだよね。

 

 

amazonで現在入手可能な収録CD 6曲目/視聴可能

 

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お嫁サンバ[郷ひろみ][EP盤]シングルジャケット/amazonより

作詞 三浦徳子、作曲 小杉保夫、編曲 船山基紀

1981年(昭和56年)5月1日、CBSソニーより発売

 

歌詞はうたまっぷ

郷ひろみ/歌詞:お嫁サンバ/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい 

お嫁サンバ - Wikipedia

 

オリコン最高位6位(年間51位/1981年)

脚注

*1:きょくせん。逆に詩が先の場合は詞先(しせん)という

*2:郷ひろみ、ってフルネームで呼びたくなる存在だよな。本人は「郷です!」っていうけど

*3:ビートルズの『ヘルプ!』(1965年)なんかはもっと変で、終始コーラスが先を行っている

*4:近年では同じ日生の「ニッセイフラウ」でも同じ曲が

使いまわされていた