日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『センチメンタル・ジャーニー』 松本伊代 ~ 短命を宿命づけられていた長寿曲

センチメンタル、という言葉の意味を

思わずはき違えてしまいそうになるこの曲、

歌詞の最中に自己紹介が入るという

画期的なチャレンジを施した曲でもある。

 

そしてチャレンジャーの最たる部分は

自らが、賞味期限を数か月に絞ってしまっているところだ。

 

「♪伊代はまだ 16だから」

1981年10月21日リリースのこの曲は、馬鹿正直に捉えれば、

松本伊代が17才になる翌1982年6月21日には、歌えなくなってしまう。

わずか8か月がこの曲のリミットだったはずだ。

発売日が誕生日と同じ21日、という点にやや作為的なものが感じられる。

 

「♪読み捨てられる 雑誌のように」、瞬間消費される運命の

一発限りの歌、のつもりだったとしても

相当なチャレンジだったに違いない。

 

 

センチメンタル・ジャーニー[EPレコード 7inch]
シングルジャケット/amazonより
  • 作詞 湯川れい子、作曲 筒美京平、編曲 鷺巣詩郎
  • 1981年(昭和56年)10月21日、ビクター音産より発売
  • オリコン最高位9位(年間53位/1982年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:センチメンタル・ジャーニー 松本伊代 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい: センチメンタル・ジャーニー (松本伊代の曲) - Wikipedia
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    まさか、その後何十年たっても

    「♪伊代はまだ 16だから」と

    歌う機会に恵まれ続けるとは誰も思ってもみなかっただろう。

    いつまでたっても時折、バラエティー番組で半分シャレで歌う姿をテレビで見かける。

    こんな歌ほかにはない。

     

     

    タイトル自体は、明らかに

    ジャズのスタンダードナンバー*1からとったもので、

    日本語で直訳すると「感傷旅行」。

     

    しかし、松本の『センチメンタル・ジャーニー』は

    まったくセンチメンタル(感傷的)ではない。

    ハラハラドキドキの恋物語である。

     

    いったい誰が、どこで間違えたのだろう。 

      

     

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    微妙に難しいメロディーラインのAメロを、

    たどたどしくボーカルが渡る。

     

    最初の「♪センチメンタル・ジャーニー」で

    ほっと一息ついたと思いきや、

    さらに微妙なBメロに突入する。

    取る音程も不安げに、おそるおそる綱渡りした後の、

    件の「♪伊代はまだ 16だから~」

    でやっと地に足をついて、

    生き生きとサビを歌いあげる。

     

    危なっかしいバランスから一転、

    一気に解放されてのびのびと歌いあげる、

    おそらくここが、この曲の一番のキモなんだと思う。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    センチメンタル・ジャーニー

    センチメンタル=涙もろく、ちょっとしたことにも感傷的になる状態。

    ジャーニー=旅行。

    しばしば、失恋の傷をいやすための旅を指す。はず。。

     

    しかしなぜかこの曲では、ちょっと背のびした、怖いもの見たさ、の旅になっている。

    「♪私のページがめくれるたびに 放り出されてしまうのかしら それが知りたくて」

    「♪見知らぬ国の謎の湖 覗き見たくなる不思議な気持ち」

    「♪扉の前で ためらいながらも 背中をそっと押されたい」

     

    ちなみに、「センチメートル・定規」ではないのはもちろん言うまでもない*2

     

     

    iTunes これは50歳になった記念バージョン

    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    センチメンタルI・Y・O+3(紙ジャケット仕様)

    センチメンタルI・Y・O+3(紙ジャケット仕様)

    • アーティスト:松本伊代
    • 発売日: 2009/09/23
    • メディア: CD
    [rakuten:book:15977413:detail]
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ 松本伊代
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。

     

     

     

    脚注

    *1:ドリス・デイの1945年のバージョンがオリジナルだが、その後多くのカバーを生んでいる。自分はリンゴ・スターのカバーで初めて聴いた。 by しかし、松本伊代の曲を先入観に持って聴くと、あまりのギャップにびっくりする

    *2:ああ、こういうのを書くのはよくないことだと解っているんだけど、、ついつい書いてしまう