センチメンタル、という言葉の意味を
思わずはき違えてしまいそうになるこの曲、
歌詞の最中に自己紹介が入るという
画期的なチャレンジを施した曲でもある。
そしてチャレンジャーの最たる部分は
自らが、賞味期限を数か月に絞ってしまっているところだ。
「♪伊代はまだ 16だから」
1981年10月21日リリースのこの曲は、馬鹿正直に捉えれば、
松本伊代が17才になる翌1982年6月21日には、歌えなくなってしまう。
わずか8か月がこの曲のリミットだったはずだ。
発売日が誕生日と同じ21日、という点にやや作為的なものが感じられる。
「♪読み捨てられる 雑誌のように」、瞬間消費される運命の
一発限りの歌、のつもりだったとしても
相当なチャレンジだったに違いない。
まさか、その後何十年たっても
「♪伊代はまだ 16だから」と
歌う機会に恵まれ続けるとは誰も思ってもみなかっただろう。
いつまでたっても時折、バラエティー番組で半分シャレで歌う姿をテレビで見かける。
こんな歌ほかにはない。
タイトル自体は、明らかに
ジャズのスタンダードナンバー*1からとったもので、
日本語で直訳すると「感傷旅行」。
しかし、松本の『センチメンタル・ジャーニー』は
まったくセンチメンタル(感傷的)ではない。
ハラハラドキドキの恋物語である。
いったい誰が、どこで間違えたのだろう。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
微妙に難しいメロディーラインのAメロを、
たどたどしくボーカルが渡る。
最初の「♪センチメンタル・ジャーニー」で
ほっと一息ついたと思いきや、
さらに微妙なBメロに突入する。
取る音程も不安げに、おそるおそる綱渡りした後の、
件の「♪伊代はまだ 16だから~」
でやっと地に足をついて、
生き生きとサビを歌いあげる。
危なっかしいバランスから一転、
一気に解放されてのびのびと歌いあげる、
おそらくここが、この曲の一番のキモなんだと思う。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
センチメンタル=涙もろく、ちょっとしたことにも感傷的になる状態。
ジャーニー=旅行。
しばしば、失恋の傷をいやすための旅を指す。はず。。
しかしなぜかこの曲では、ちょっと背のびした、怖いもの見たさ、の旅になっている。
「♪私のページがめくれるたびに 放り出されてしまうのかしら それが知りたくて」
「♪見知らぬ国の謎の湖 覗き見たくなる不思議な気持ち」
「♪扉の前で ためらいながらも 背中をそっと押されたい」
ちなみに、「センチメートル・定規」ではないのはもちろん言うまでもない*2。
iTunes これは50歳になった記念バージョン
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