日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『聖母たちのララバイ』 岩崎宏美 ~ この子守歌はテンションが高すぎて眠れない

どこまでも、上がっていく音階の歌唱。

どこまでも、ヒートアップしていく演奏。

 

歌いだしからクライマックスまで、

この歌唱と演奏の二つが

螺旋のように絡み合い上り詰めていく。

まさに圧巻。

 

 

ん~、あふれる思いが強すぎるのか

うまく文章で表すことができない。

自分の中では10本の指に入るくらいの

名曲だとおもっている*1

 

 

しかし、「♪さぁ 眠りなさい~」とやさしく始まる割には

次第に歌い手がエキサイトしてしまって

これではとてもじゃないが眠れない!

 

 

 

ところで、タイトルの『聖母たちのララバイ』だが、

なぜ、聖母(ここではマドンナと読ませている)「たち」と

複数形になっているのだろうか。

「マドンナ」以外の語句は歌詞中には登場しないので、

おそらく曲ができてから後付けされたタイトルだろうと思う。

 「聖母」という字があてられたのもその時かもしれない。

 

「たち」を入れた方が言葉の響きがいいことは確かだが、

「♪いつも私は あなたを遠くで見つめている 聖母」

歌詞中には、女性は主人公一人しか登場しない。

 

しかし、「たち」を抜いて「聖母のララバイ*2」では

聖母マリアの子守歌、という意味になってしまう。

 

おそらくそのためだろう。すでに歌詞中に使用している

「マドンナ」という語句を違和感なく受け入れられるように、

女性が持つ、”普遍的な母性”の象徴としての「聖母」

という意味合いを持たせるため、

女性一般をさすように「たち」をつけた、という推測が成り立つ。

 

それ以前に、「♪私は、、マドンナ」

というのは、何かとまずかろう

という判断が働いたのかもしれない。

 

 

女性は一人しか登場しない、と書いたが

「♪男はみんな 傷を負った戦士」

男は複数登場している。

 

男たち一人ひとりに、

弱い部分を見せることで、母性をくすぐられた、

聖母がいるのかもしれない。

 

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

この曲を語るうえで避けて通れない部分なのでここで触れておく。

この曲の作曲者「木森敏之、ジョン・スコット」と連名になっている点だ。

これは発表後に盗作の指摘があったことに由来する。

 

問題の『Laurel And Owens』(1980年)と聴き比べると、

たしかに、Aメロがそっくりだ。

これが故意の盗作*3か、偶然の一致か、潜在意識下の引用*4か、

どれが正しいのかはここでは置いておいて、

このときは、名を捨てて実を取る対応が行われたことに着目したい。

 

通常は、プライドを守るため、そして

言いがかりだという気持ちを先行させて

降りかかる火の粉は払いのけるのが通常の対処だ。*5

しかし、この争いでは、訴えられた側があっさりと折れた。

 

争えば、勝つにしろ負けるにしろ販売に影響も出るだろうし、

場合によっては販売差し止めになる可能性だって無くはない。

ブームが去ってもなお、裁判だけが延々と続く、

なんて事例も過去にいくらでも見受けられる。

 

そこを、訴訟人を共作者のひとりとしてクレジットすることで、

曲が売れるほど訴訟人にも利益になるように和解を成立させた。

敵対するのではなく、むしろ味方に引き入れて

バックアップさせる道を選んだのだ。

 

もちろんこのことは、盗作を公に認めることとなるので

作者側の名誉は相当損なわれる。

 

しかし、『聖母たちのララバイ』という曲にとっては、

足を引っ張るものがなくなるので、

これが一番良い幕引きだったのだろう。

  

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「生まれ変わり あなたの母になって」

屁理屈をこねれば、女性の方が生まれ変わっても、母になることはできない。

男が生まれ変われば、女性が母になることもあるかもしれない。

 

「この街は戦場だから 男はみんな傷を負った戦士」

短絡的に、戦地での歌、と思ってはいけない。

この街を戦場としてとらえると、男はみんな戦士なんだ。

という意味。

本当に戦場であれば、「戦場だから」

という前提条件を付けるはずがない。

 

世間でもまれる男が、ふと見せた涙を見て

恋愛よりも強い、母性の愛で包み込もうという

主人公の決心を表した曲。

 

勝沼*6のよう地形を見ると、

「♪この街は 扇状地だから~」

とおもわず歌ってしまうのは、大変良くない。

 

 

 

amazonで現在入手可能な収録CD 2曲目/視聴可能

 

iTunes / 視聴も可能
聖母たちのララバイ

聖母たちのララバイ

 

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シングルジャケット/CDandLP.comより

作詞 山川啓介、作曲 木森敏之・John Scott、編曲 木森敏之

1982年(昭和57年)5月21日、ビクターエンターテイメントより発売

 

歌詞はうたまっぷへ 

岩崎宏美/歌詞:聖母たちのララバイ/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

聖母たちのララバイ - Wikipedia

 

オリコン最高位4週連続1位(年間3位/1982年)

 

脚注 

*1:一般的なヒット曲の中では、の話。ほとんど知られていないけど自分は大好き、というようなものは除く

*2:ララバイ:イタリア語で子守歌の意

*3:いわゆるパクリ

*4:思いついたフレーズが、実はどこかで聴いて刷り込まれていたものだった

*5:わが敬愛なるジョージ・ハリスンは『マイ・スウィート・ロード』(1970年)が

盗作騒ぎで訴えられた時には、結局裁判で負けたが最後まで争っている。

このときは、第3者が、賠償金をとるために曲の権利を買い取って訴えたのだから

非常にたちが悪い

*6:山梨県の町の名前。ワインとブドウと、扇状地で有名