日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『探偵物語』 薬師丸ひろ子 ~ 連想ゲームの時間です。お題は「とまどい」

詩といい、メロディといい

かなり映像的な曲だと思う。

 

 「♪あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む」

激しく波音を立てていた海が、

ひとりの人物を映しだした瞬間に、無音の世界に変わる。

 

「♪夢で叫んだように唇は動くけれど 言葉は風になる」

激しく何かを叫んでいるが、何を言っているのかは聴こえない。

聴こえるのは、ただ風の音だけ。

 

イメージがひしひしと沸いてくるが、

映画の方は見たことないので、

実際にはどういうシーンで使われたのかは知らない。

 

たぶん全然違うのだろうと思う。

妄想とはそんなもんだ。

 

 


シングルジャケット/CDandLP.comよりより
探偵物語

探偵物語

 
  • 作詞 松本隆、作曲 大瀧詠一、編曲 井上鑑
  • 1983年(昭和58年)5月25日、東芝EMIより発売
  • オリコン最高位7週連続1位(年間4位/1983年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:探偵物語 薬師丸ひろ子 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:探偵物語/すこしだけやさしく - Wikipedia
  •  

     

    内容からは全く意味不明な曲のタイトルは、

    まんま映画のタイトルそのもので、まさに“取って付けた”もの。

    前作の『セーラー服と機関銃』(1981年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)の原題が

    『夢の途中』だったように、

    この曲も『海のスケッチ』という原題を持っていたらしい。

    といっても、作者の来生たかおによって

    原題でリリースされた『夢の途中』(1981年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)とは違い、

    原題はあくまで裏話として語られているだけで、公式なものではない。

     

    その場限りのタイトルをつけられたことが、

    マイナスになっているよな、と思う。

    曲名で人に伝えたい時などに、とっさに思い浮かばないのだ。

    正直、この曲ほんとにこのタイトルでよかったんだっけ、

    といつも不安に掻き立てられる。*1

     

     

    タイトルだけでなく、曲調も、

    透き通った美しさ、と表現するには

    あまりにもムズムズするような不安さ、不気味さがある。

     

    ちょっと暗いけど、とてもいいメロディ、、なんだけど、

    どこが盛り上がりのサビかはっきりとしない。

    どこで終わるんだかもはっきりしない。

     

    スローテンポのようで、実は通常のミドルテンポ。

    ドラマチックな展開を見せるのは実はイントロだけ。

     

     

    はっきり言って、落ち着かなく気持ち悪い。

    無表情な薬師丸の歌い方が、いっそうそれを煽っている。

     

     

    しかし、この気持ち悪さが、

    こんなにもやすらかに、

    気持ちいいと感じるのは、いったいどうしたことだろう。

    僕の体が昔より、大人になったからなのか?*2

     

    お子様にはこの良さがわかるまい。

    大人ってホントやーね。

     

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    不思議な始まり方をして、不思議な終わり方をする。

     

    遠くで聞こえるような寂しげなピアノの音--聞き逃しそうになる--、

    ピアノに遅れをとったかのように慌てて飛び出すストリングス。

    そんな意外な始まりが、曲の世界の中に

    聴き手を引きずりこんでいく。

     

    そして最後に余韻を残した終わり方、と言えば聞こえがいいが

    何だろう、このもやもやした感じは。

     

    曲の終わりとともに、聴き手は解放されて

    訪れる静寂から日常の音が復帰してくる。

     

    いや、おっかない曲だな。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    この曲、言葉の持つイメージからくる

    例えだけで構成されているようなもので、

    難解というよりも、むしろ連想ゲームのようなものだ。

     

    テーマは、たぶん「戸惑い」。

    そんな感情をいろんな例えで表現している

     

    「あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む

               身動きも取れないの 見つめられて」

    背景と人物が一緒に見えるような、少し離れた位置から、

    頭の先からつま先まで-もしかしたら心の中まで-観察され、

    周囲の音まで聞こえなくなるような戸惑いをおぼえた。

     

     

    「話をそらして歩いても 心はそのまま置き去りね

                 昨日からはみ出した私がいる」

    戸惑いから逃れようと話を逸らすが、どうしたら良いかわからず

    そこから心が一歩も動けなくなってしまった、

    まるで時間が止まってしまったような

    心ここにあらずの自分がいる。

     

     

    「波のページをめくる 時の見えない指先」

    本のページをめくるように、規則正しく引いては寄せる波。

    止まったように思える時の中でも

    時間はたえず過ぎていく。

     

     

    「透明な水の底 ガラスのカケラが光る」

    どちらも透明で見えないのだけれど、

    うっかり足を踏み入れると怪我するもの、

    あるいは壊れやすいものが潜んでいる。

    純粋さの心に潜む危うさか。

     

     

    「離れて見つめないで」

    ここでやっというべき言葉が見つかる。

    言葉にならない言葉を無理に言おうとするのではなく、

    戸惑いの原因となるものをまず排除するべき、と気づく。

     

     

    amazonで現在入手可能な収録CD 2曲目/視聴可能

    エッセンシャル・ベスト 薬師丸ひろ子

    エッセンシャル・ベスト 薬師丸ひろ子

     

    脚注

    *1:だって探偵物語といえば、SHOGUNの『Bad City』(1979年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)だもんな。どちらも松田優作主演なところが余計に混乱する。タイトルが同じだけで、全然関係ない話らしい。実際同じ物語だと思っていた。

    *2:『壊れかけのRadio』(徳永英明/1990年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)より引用