日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『大きな玉ねぎの下で』 爆風スランプ ~ 純粋な少年が大人になる通りゃんせ

爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野という人物は

つくづく不思議な歌い手で、

そもそも上手いのか下手なのかがよくわからない。

 

・・・イヤ、もちろん上手ですよ?

だけどなんて言うか、情緒の襞(ひだ)というのか、

そういうのをあまり感じさせない歌い方をしてくる*1

平坦に歌うか、平坦に叫ぶ*2かどっちかという感じで、

この『大きな玉ねぎの下で』のような感傷的なバラードも

彼にかかれば、まるで他人ごとだ。

 

 

だけど、だけどそのブッキラボー加減が、

淡い恋心を砕かれた高校生*3の青い歌に非常にマッチしている。

「♪君がいないから 僕だけ寂しくて」

ひしひしとしたやりきれない感と、

強がっている感を、このボーカルから感じるのは自分だけ?

 

 

 

ペンフレンドとの恋、というテーマがいい。

手紙だけでのやり取りというのは、

いまのネット時代の匿名のやり取りとくらべ

共通点も多くあるが、決定的な違いもあって、

基本的に1対1であること、そしてなにより

手紙でやり取りできる、というのは

実在の証拠でもある点が決定的に違う。

 

もちろん、年齢や性別を偽ったり、

「定期入れの中のフォトグラフ」は別人のもの、

あるいはずいぶん若い時のもの、という芸当は可能。 

たとえば自分の息子や娘のふりをした

おっちゃんおばちゃんが正体だったりする可能性もあるわけだ。

 

しかし、まったく架空の人物を騙ることや、

どこに住んでいるか、どんな筆跡かとかは隠し立てできない。

結構、文体や筆跡には性格出るしね。

 

だけど、そんな大きな嘘でなくても、

ちょっとした見栄や、自分を飾り立てた言葉のために、

相手に直に会って素がばれる、というのは避けたいところだろう。

実際に対面を果たすペンフレンドというのは

それほど多くないのではないだろうか*4

文通したことないの、で想像でしかないけれど。

 

 

その点この主人公は、素直というかなんというか

純粋に飾り立てることも少なく文通をしていたのだろう。

勇気を出して、おそらく相手の好きなミュージシャンのコンサートだろう、

相手にチケットを贈って、実際に会う約束を取り付けてしまう*5

 

相手は、最後の最後でそこまでの勇気が持てなかったのか、

結局、現れることはなかった。

 

淡い恋がほろ苦い思い出に変わった瞬間。

 

青春だねぇ。しみじみ。

 

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

正直に言う。かねてより自分が聴き親しんでいたものが

1989年のシングル『大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い』だと思っていた。

それがこの稿を書くにあたって、85年のバージョンだということが発覚した。

というよりも、バージョン違いがあることを知らなかった。

 

リアルタイムで聴いていた人や、アルバムを集めている人であれば

自明のことなのだろうが、

自分のように、洋楽ばっか聴いていたのが、

あるとき思い立って日本の曲を新旧問わず

手あたり次第一斉に収集したような、"後追い"の聴き手にとっては

どれが本当なのかの判断をするのが非常に困難になる。

 

編集の違いならまだしも、シングルとアルバムでアレンジからそもそも違ったり、

ベスト盤やオムニバスをリリースするのに、ご丁寧にも録り直したり、

レアな別バージョンを収録したりしているからだ。*6

 

雛鳥の刷り込みのように、最初に慣れ親しんだものこそが

当の本人には真実になってしまうので、

百名曲に選んだのは、ヒットしたシングルバージョンではなく、

85年のバージョン、ということでひとつよろしく。

 

89年のは、自分にとっては

まるでレコードで回転数を間違えたかのように聞こえてしまうのだ。

*7

 

また、後日作られたという続編*8

同じ理由でここでは触れないことにする。

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「大きな玉ねぎ」

日本武道館の屋根の一番てっぺんにある飾り、宝珠(擬宝珠)のこと。

牛若丸と弁慶が戦った橋の欄干や、

黒柳徹子塩沢ときのてっぺんについているあれ。

 

ちなみに、「武道館」や「コンサート」を直接指す言葉が

全く出てこないのが、この歌のキモ。

九段下、千鳥ヶ淵、屋根の上の・・・玉ねぎ、

で、ああ日本武道館ね、と

知っている人にだけ分かる仕組みになっている。

 

チケットが、柔道やボクシングのものではないと判るのが、

「アンコールの拍手」・・なのだが

いや、もしかしたらプロレスかもしれないと今思い始めた。

やんないよね?アンコール。。プロレスで。。。

ノリでやりそうなのが怖い。

 

 

 

「九段下の駅を降りて坂道を 人の流れ追い越して行けば」

「九段下の駅へ向かう人の波 僕は一人涙をうかべて」

行きは、期待に胸を躍らせて足早に、

帰りは、打ちひしがれて立ち尽くす。

行きはよいよい帰りは恐い。怖いながら通りゃんせ通りゃんせ。

青春の通りゃんせなんだな。これは。

 

 

amazonで現在入手可能な収録CD(のMP3ダウンロード) 5曲目/視聴可能
しあわせ

しあわせ

 

 

iTunes / 視聴も可能 
大きな玉ねぎの下で

大きな玉ねぎの下で

 

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大きな玉ねぎの下でアルバムジャケット/amazonより

作詞 サンプラザ中野、作曲 嶋田陽一、編曲 久米大作

1985年(昭和60年)11月1日、アルバム「しあわせ」に収録

 

歌詞はうたまっぷへ 

爆風スランプ/歌詞:大きな玉ねぎの下で/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

しあわせ (アルバム) - Wikipedia

 

脚注

*1:似たような例に、エレファントカシマシ宮本浩次などがいる

*2:これって実はすごいテクニックだ!

*3:年齢を表す記述は見当たらないが、定期持ってるから多分中学生ではなく、スレていない感じから大学生でもない。

*4:相手の期待を裏切ってしまう、もしくは純粋に恥ずかしい、また、逆に相手の本当の素性が判らずに怖い、という思いが先に立つのだと思う。

*5:「♪君の返事読み返して」とあるのでOKをもらったことは確か。

*6:これは、本人はより良いものを、のつもりだろうが、聴く方にとっては裏切られた感を受けたりするのでやめてほしい

*7:レコードはEPとLPで回転数(再生速度)が違うため、間違えると音が妙に高くなるか、逆に妙に低くなってしまう

*8:『初恋~はるかなる想い』(YURIMARI/1999年)