日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『真夏の果実』 サザンオールスターズ ~ 夢の中だけに残る、ゆきずりの恋物語

まず第一に、小林武史によるアレンジが秀逸。

トーンチャイム*1とハープの中間のような音の
静かなイントロから導かれる
桑田佳祐のつぶやくような歌い出しに、

切なさがあふれている。


ゴテゴテした装飾の一切ない、
シンプルアレンジの一本鎗で、
桑田のボーカルと、原由子のコーラスを引き立てている。


サザンの魅力は、この不世出な二人の異質なボーカルの
組み合わせにあると常々感じている。
だって、普通に考えるとおかしいもの。この組み合わせは。

しゃがれたダミ声の桑田と、コケティッシュなアニメ声の原。
決して混ざり合うことのない、ベクトルの異なる2つの声が
お互いを邪魔することなく聴き手にダイレクトに届き、
思いもよらない立体的な広がりを見せる。
(少しだけ理系的な表現を試みてみた。)


「♪四六時中も好きと言って 夢の中へ連れて行って
               忘れられないHeart&Soul 声にならない」

桑田の歌詞は、相変わらず文脈はむちゃくちゃだし、
具体的に何が言いたいのかもさっぱりわからないが
雰囲気だけはバンバン伝わってくる。

まさに音の感性の世界。
宮沢賢治などの詩の世界にも
一種通じるものがあるのかもしれない。


真夏の果実
シングルジャケット/amazonより
 
  • 作詞・作曲 桑田佳祐、編曲 小林武史
  • 1990年(平成2年)7月25日、ビクターエンタテイメントより発売
  • オリコン最高位4位(年間9位/1990年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:真夏の果実 サザンオールスターズ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:真夏の果実 - Wikipedia


  • いつ、どこで、だれが、なにを、どうした。

    この物語では、このうち
    なにを、どうした
    以外の部分がすっぽりと欠落している。

    悲しい季節だの、誰かだの、
    具体性が全くと言っていいほどない。
    あっても「今夜」程度だ。

     そのために、
    「四六時中も好きと言って」
    「夢の中に連れて行って」
    という言葉も、いろんな風にとらえることができる。

    (私があなたに)
    一日中好きって言ってあげる。
    夢の中にも連れて行ってあげる のか、

    (私はあなたに)
    一日中好きって言って欲しい。
    夢の中にも連れて行って欲しい のか。

    男目線なのか女目線なのか、
    思い出話なのか、まったくの妄想なのか。


    そもそもこの「四六時中も」の「も」って何よという話。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    ちまちま意味を追って行ってもらちが明かないので
    全文日本語訳*2行ってみよう。


    もしかしたら本名も知らず、あだ名程度しか知らない、
    そんな行きずりに近い男とひと夏限りの恋をした。
    主人公はそんな女性目線という前提でGo.


    この季節になると、決まって
    あのとき抱きしめられた、誰かさんの夢をみる。
    思い出すだけで、言葉もつまってしまう。
    今夜もまた、あの悲しい夢を見て
    涙してしまうのだろう。

    こらえきれずに、ため息ばかり。
    また心は、あの夏の想い出の中を
    さまよいだす。

    一日中「好き」って言って欲しい。
    夢見るような気分にさせて欲しい。
    身も心も忘れられない。
    もう声にもならない。

    波打ち際に書いた二人の名前が、
    波にさらわれていくように
    あなたもどこかへ行ってしまった。
    転がるように通り過ぎていった
    ひと夏だけの恋。
    ずっとそのままで居たかった。

    まるで太陽が凍り付くように
    自分の世界がひっくり返ったような感覚に
    めまいがするほどの恋。
    そんな、真夏に実った恋の果実が
    今でもずっと心の中を占め続けている。

    今は遠く離れていても
    あの黄昏時のあなたの熱いまなざしが
    いまも私の胸を熱くする。

    一日中「好き」って言って欲しい。
    夢見るような気分にさせて欲しい。
    身も心も忘れられない。
    夜が待ちきれなかった。

    波打ち際に書いた二人の名前が、
    波にさらわれていくように
    あなたもどこかへ行ってしまった。
    転がるように通り過ぎていった
    ひと夏だけの恋。
    ずっとそのままで居たかった。


    今夜も涙物語になってしまった。
    せめて夢の中でくらい、
    「また逢えるよ」と言ってほしかった。
    身も心も忘れられない。
    あのとき実った恋の果実は
    涙にぬれている。 




    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    稲村ジェーン

    稲村ジェーン

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    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:透き通った音色の出るハンドベルのような楽器

    *2:英語混じりの日本語を、日本語に訳す不可解な日日翻訳