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日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介

『さよなら夏の日』 山下達郎 ~ 勝手な解釈は聴き手の自由(くれぐれも自己責任で)

1991~1995

毎回、もっともらしく歌詞の解説をしているが、

実はシチュエーションの設定次第で

解釈はどうとでもなることも多い。

 

こういうのを曲の懐の広さともいう。

 

懐の広さがあるからこそ、人は曲の中に

自分の実体験や、見聞きした物語との共通点を見出し

(たとえそれがわずかなとっかかりであったとしても)、

共感、投影することで、

曲と思い出とを1セットにして心にしまい込むのだと思う。

 

 

だから、極論を言えば

どんなぶっ飛んだ歌詞だって、

それ以上にぶっ飛んだ初期設定を設けてやれば突飛でなくなる。

いかに想像できる範囲で無理っぽさを取り繕うかがポイント。

 

 

例えばこの『さよなら夏の日』

 

ストレートに考えれば、サマーキャンプのような、

ひと夏の滞在先で出会い、一時期を共有し、

イベントの終わりとともに、恋も終わりをつげた、

そんな若い二人の恋物語だけれども、

 (これを、シチュエーションaとする)

 

突如巻き起こった戦争に、未来を奪われた恋人たち。

そんな、SF映画や漫画にありがちな初期設定を与えてみる。

(シチュエーションbとする。もうこの時点でかなりの冒涜だ。)

 

 

さあ2か国語同時通訳行ってみよう。

 

「♪波立つ夕立のプール しぶきをあげて」

a) スコールのようなにわか雨に、プールの水面が飛沫を上げる。

 

b) 航空機関銃にさらされる校内。

まるで夕立のような弾幕が、水面に飛沫をまき上げる。

 

 

「♪時が止まればいい 僕の肩でつぶやく君 見てた」

a) このまま明日が来なければ、別れなくて済むのに。

僕の肩に寄りかかってつぶやく君を、言葉もなく見つめていた。

 

b) 傷を負った君を抱きかかえる。

僕に寄りかかり、君はうわごとのようにつぶやく。

ずっと平和な日々が続くと思っていたのに。

僕はただ黙って見つめるしか術がなかった。

 

 

「♪君を瞳に焼き付けた 尽きせぬ想い

      明日になればここには もう僕らはいない」

a) 君の面影を記憶に留めておきたくて。

明日には、お互い自分の日常に戻っていくんだ。

 

b) 君の最期かもしれない姿を見届ける。伝えたい思いがあふれてくる。

君に限らず、僕にも明日はないかもしれないんだ。

 

 

「♪ご覧最後の虹が出たよ 空を裸足のまま駆けてゆく」

a) ここで見る虹もこれで見納めかもしれない。

生まれたまま自由に空に弧を描いている虹を。

 

b) 最期の時が来た。光明が君を迎えている。

魂は無事に天に上ってゆけるだろうか。

 

 

「♪どうぞ変わらないで どんな未来 訪れたとしても」

a) こんな気持ちを持ったまま、ずっと生きていけたらいいのに。

でも、夢ばかりの未来じゃないことは解っているんだ。

 

b) この先何があっても、あなたはあなたでいてほしい

君の最期の言葉は、そんな言葉だった。

 

 

「♪さよなら夏の日 いつまでも忘れないよ

       雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ」

 

a) b) 僕はこの夏の日を決して忘れることはないだろう。

雨に濡れていよう。泣いていることがわからないように。

あの日、僕の少年時代は終わりをつげたのだ。

 

 

 

やー、むちゃくちゃだね。

台無しだよ。ホント。

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

 曲の後半で、連続してキーが上がっている。

 

「♪裸足のまま駆けてゆく」のあと、

短い間奏部分*1で1回、

 

すぐ後の「♪どんな未来訪れたとしても」の終わりでもう1回。

この短い間での都合2回の半音上げで、

スタート時よりも1音上がっている。

 

だけど、キーが上がっても山下の発声が全く変わらない。

あれ?さっき転調したような気がしたけど

気のせいだった?

という錯覚にとらわれてしまう。

安心してください。確かに上がってます。

 

 

そんなことはさておき、『さよなら夏の日』は、

その発売の前年にデビー・ギブソン

『ウィズアウト・ユー』(1990年)のタイトルでリリースしている。

 

前から、そっくりなイントロの曲だとは思ってはいたが

メロディーが全く異なるため、気づかなかった*2

ある日突然、『ウィズアウト・ユー』って、

この伴奏でそのまま『さよなら夏の日』がフルコーラスで歌えるぞ??

と気づいたのだった。

 

偶然の一致にしては、これはいったい何なんだと。

デビー・ギブソン山下達郎の曲を歌う可能性なんて

全く考慮の外だったから。

 

後になって知った。

さよなら夏の日って、セルフカバー曲だったのね。

 

おそらく、提供した曲が原形をとどめないほど

改変されてしまったために、

自分でちゃんとレコードにしたのではないかと推測する。

 

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「明日になればここには もう僕らはいない」

本文で2通りの解釈をしているけど、おそらく本来意味するのは

今の僕らは今しかいない。明日の僕らは、今とは違った僕らなんだ。

という意味。別に消えて居なくなるわけじゃない。

 

 

「雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ

   さよなら夏の日 僕らは大人になっていくよ」

つらいことや悲しいことにぶつかりながら、僕らは成長していく。

昨日はいつでも「素敵な季節」だけど、

もっと素敵な明日が待っているから、

昨日の僕にはさよならを言おう。

 

 

「プール」

この曲中に唯一出てくる外来語。意外?

全部日本語にしようと、「泳水槽」とかにしたら

かえって何のことだかわからない。

 

 

amazonで現在入手可能な収録CD 14曲目/視聴可能
TREASURES

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デビー・ギブソンのバージョンはこちらから 13曲目 / 視聴も可能
グレイテスト・ヒッツ

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シングルジャケット/駿河屋より

作詞・作曲・編曲 山下達郎

1991年(平成3年)5月10日、ワーナーミュージックより発売

 

歌詞はうたまっぷへ 

山下達郎/歌詞:さよなら夏の日/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

さよなら夏の日 - Wikipedia

 

オリコン最高位12位

脚注

*1:もはや「♪リズムははじけて恋するモード」(『渚にまつわるエトセトラ』(パフィー/1997年))としか聞こえないくらい、モロにお株を奪われてしまった部分

*2:むしろ、洋楽好きの山下達郎が、オマージュとして本歌取りしているものと思っていた