日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『さよなら夏の日』 山下達郎 ~ 勝手な解釈は聴き手の自由だ(くれぐれも自己責任で)

毎回、もっともらしく歌詞の解説をしているが、

実はシチュエーションの設定次第で

解釈はどうとでもなることも多い。

 

こういうのを曲の懐の広さ、という。

 

曲に懐の広さがあるからこそ、人はその中に

自分の実体験や、見聞きした物語との共通点を見出し

たとえそれがわずかなとっかかりであったとしても、

想いを共感、投影することで、

曲と思い出とをセットにして心にとどめ込むのだと思う。

 

 


シングルジャケット/駿河屋より
さよなら夏の日

さよなら夏の日

これはシスターカヤによるレゲエバージョン
  • 作詞・作曲・編曲 山下達郎
  • 1991年(平成3年)5月10日、ワーナーミュージックより発売
  • オリコン最高位12位
  • 歌詞はうたまっぷへ:さよなら夏の日 山下達郎 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:さよなら夏の日 - Wikipedia
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    だから、極論を言えば

    どんなぶっ飛んだ歌詞だって、

    それ以上にぶっ飛んだ初期設定を設けてやれば突飛でなくなる。

    いかに想像できる範囲で無理っぽさを取り繕うかがポイント。

     

     

    例えばこの『さよなら夏の日』

     

    ストレートに考えれば、サマーキャンプのような、

    ひと夏の滞在先で出会い、一時期を共有し、

    イベントの終わりとともに、恋も終わりをつげた、

    そんな若い二人の恋物語だけれども、

     (これを、シチュエーションaとする)

     

    ひねくれた視点でもって、ぶっ飛んだ設定を用意してみよう。

    突如巻き起こった戦争に、未来を奪われた恋人たち。

    そんな、SF映画や漫画にありがちな初期設定を与えてみる。

    シチュエーションbとする。もうこの時点でかなりの冒涜だ。)

     

     

    さあ2か国語*1同時通訳行ってみよう。

     

    「♪波立つ夕立のプール しぶきをあげて」

    a) スコールのようなにわか雨に、プールの水面が飛沫を上げる。

     

    b) 航空機関銃にさらされる校内。

    まるで夕立のような弾幕が、水面に飛沫をまき上げる。

     

     

    「♪時が止まればいい 僕の肩でつぶやく君 見てた」

    a) このまま明日が来なければ、別れなくて済むのに。

    僕の肩に寄りかかってつぶやく君を、僕は言葉もなく見つめていた。

     

    b) 傷を負った君を抱きかかえる。

    僕に寄りかかり、君はうわごとのようにつぶやく。

    ずっと平和な日々が続くと思っていたのに。

    僕はただ黙って見つめるしかできなかった。

     

     

    「♪君を瞳に焼き付けた 尽きせぬ想い

          明日になればここには もう僕らはいない」

    a) 君の面影を記憶に留めておきたくて。

    明日には、お互い自分の日常に戻っていくんだ。

     

    b) 君の最期かもしれない姿を見届ける。伝えたい思いがあふれてくる。

    僕にも明日はないかもしれないんだ。

     

     

    「♪ご覧最後の虹が出たよ 空を裸足のまま駆けてゆく」

    a) ここで見る虹もこれで見納めかもしれない。

    生まれたまま自由に空に弧を描いている虹を。

     

    b) 最期の時が来た。光明が君を迎えている。

    魂は無事に天に上ってゆけるだろうか。

     

     

    「♪どうぞ変わらないで どんな未来 訪れたとしても」

    a) こんな気持ちを持ったまま、ずっと生きていけたらいいのに。

    でも、夢ばかりの未来じゃないことは解っているんだ。

     

    b) この先何があっても、あなたはあなたでいてほしい

    君の最期の言葉は、そんな言葉だった。

     

     

    「♪さよなら夏の日 いつまでも忘れないよ

           雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ」

     

    a) b) 僕はこの夏の日を決して忘れることはないだろう。

    雨に濡れていよう。泣いていることがわからないように。

    あの日、僕の少年時代は終わりをつげたのだ。

     

     

     

    やー、むちゃくちゃだね。

    台無しだよ。ホント。

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

     曲の後半で、連続してキーが上がっている。

     

    「♪裸足のまま駆けてゆく」のあと、

    短い間奏部分*2で1回、

     

    すぐ後の「♪どんな未来訪れたとしても」の終わりでもう1回。

    この短い間での都合2回の半音上げで、

    スタート時よりも1音上がっている。

     

    だけど、キーが上がっても山下の発声が全く変わらない。

    あれ?さっき転調したような気がしたけど

    気のせいだった?

    という錯覚にとらわれてしまう。

    安心してください。確かに上がってます。

     

     

    そんなことはさておき、『さよなら夏の日』は、

    その発売の前年にデビー・ギブソン

    『ウィズアウト・ユー』(1990年)のタイトルでリリースしている。

     

    前から、そっくりなイントロの曲だとは思ってはいたが

    メロディーが全く異なるため、気づかなかった*3

    ある日突然、『ウィズアウト・ユー』って、

    この伴奏でそのまま『さよなら夏の日』がフルコーラスで歌えるぞ??

    と気づいたのだった。

     

    偶然の一致にしては、これはいったい何なんだと。

    デビー・ギブソン山下達郎の曲を歌う可能性なんて

    全く考慮の外だったから。

     

    後になって知った。

    さよなら夏の日って、セルフカバー曲だったのね。

     

    おそらく、提供した曲が原形をとどめないほど

    改変されてしまったために、

    自分でちゃんとレコードにしたのではないかと推測する。

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「明日になればここには もう僕らはいない」

    本文で2通りの解釈をしているけど、おそらく本来意味するのは

    今の僕らは今しかいない。明日の僕らは、今とは違った僕らなんだ。

    という意味。別に消えて居なくなるわけじゃない。

     

     

    「雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ

       さよなら夏の日 僕らは大人になっていくよ」

    つらいことや悲しいことにぶつかりながら、僕らは成長していく。

    昨日はいつでも「素敵な季節」だけど、

    もっと素敵な明日が待っているから、

    昨日の僕にはさよならを言おう。

     

     

    「プール」

    この曲中に唯一出てくる外来語。意外?

    全部日本語にしようと、「泳水槽」とかにしたら

    かえって何のことだかわからない。

     

     

    amazonで現在入手可能な収録CD 14曲目/視聴可能

    TREASURES

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    デビー・ギブソンのバージョンはこちらから 13曲目 / 視聴も可能

    グレイテスト・ヒッツ

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    脚注

    *1:2つの国ではなく、2つの「国語」。つまりはどっちも日本語

    *2:もはや「♪リズムははじけて恋するモード」(『渚にまつわるエトセトラ』(パフィー/1997年))としか聞こえないくらい、モロにお株を奪われてしまった部分

    *3:むしろ、洋楽好きの山下達郎が、オマージュとして本歌取りしているものと思っていた