日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『Love Phantom』 B'z ~ 自身の作り出した亡霊に振り回され自暴自棄になるお話

B'zの松本孝弘というギタリストは、
自分で作曲とアレンジを行っていて、かなりのテクニックを誇示しているクセに、
なぜか、一歩引いている印象を受ける。

ああ見えて意外に自己顕示が少ないんじゃないかと。
わかる人にだけわかってもらえれば、OK。
少なくともレコードでは、そういう印象を受ける。

Love Phantom』でも、最初に爆音から駆け上がるような
ギターを響かせたと思うと、あっという間に
ほかの音に吸い込まれて背後にそっと引っ込んでしまう。

そして、稲葉浩志のボーカルが始まると、
後ろの方でギュインギュインと
ギターをうならせてはいるものの、主役になろうとはせず、
全体を見渡せる位置から俯瞰して引き立て役に徹している。

実は、このあたりのバランス加減が、
変にマニアックなロックにならずに
万人受けしている要因なのではないかと思う次第。


対極にあるのがアルフィー高見沢俊彦で、
どんな曲調の曲でも、ピロピロギュインギュインいわす
ギターソロを唐突にブチ込んでくる。

それはそれで潔く、おもわず、
イヨォ、待ってました高見沢、と歌舞伎のように掛け声でも
かけなきゃいけないんじゃないかと、変な錯覚に陥ってしまう。


一方、ボーカルの稲葉のほうはというと
特にこの頃は、エアロスミス*1スティーヴン・タイラーのようだ。
「♪君はいないから」のあとの「Aha」なんてあたりは
まるでモノマネのようだ。

だから何?と言われても困るけど、
良い悪いじゃなく、常々感じていたことを書いた次第。
本人も結構意識していたんじゃないかなぁ。


さておき、1分以上ある長い長いイントロや、
多くのゲストによる朗読(ラップ?)など、凝りに凝った展開が印象的。
曲の構成がシンプルな分、アレンジをいろいろと
やってみた結果なのだろう。

おそらく、オペラや映画音楽のような
イメージから出発しているのだろうが、
ディスコサウンドっぽい音の作りが、どちらかというと
ゲームミュージックのように聞こえてしまう。
これは時代の音のせいなんだろうか。



LOVE PHANTOM
シングルジャケット/amazonより
LOVE PHANTOM

LOVE PHANTOM

  • B'z
  • ロック
  • ¥255
 
  • 作詞 稲葉浩志、作曲・編曲 松本孝弘
  • 1995年(平成7年)10月11日、ビーイングより発売
  • オリコン最高位1位(年間10位/1995年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:LOVE PHANTOM B'z 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:LOVE PHANTOM - Wikipedia


  • さて、あまりサウンドについてくだらないことを云々言っていると
    顰蹙を買いそうな流れになってきてしまったので
    歌詞の方に目を向けてみよう。

    概要を大雑把にいえば、
    恋人に捨てられて自暴自棄になった男、
    相手に理想を求めすぎて、
    逃げられてしまった男の哀歌だ。

    彼女の幻影の声に対して、必死にすがろうと
    弁明する男の叫びだ。


    「You must know what I am.
    I must tell you what I’ve been loving.
    I’m nothing, lifeless, soulless.
    Cause I’m “LOVE PHANTOM”.」

    これはイントロ中のセリフ。男の声だから解りにくいけど、
    主人公が作り上げた女性の理想(幻想)の怪物が、
    喋っているものと思われる。

    きっとオマエもわかっているハズ。
    ワタシが何を愛していたか、オマエに伝えなければならない。
    ワタシは存在も、命も、魂もない
    なぜなら、ワタシはオマエが作り出した
    愛の幻影、なのだから。



    中盤では、女性の声で突然
    「そして私は潰される」
    ホラー映画みたいで、おっかない。


    最後には、ほとんど聞き取れないが
    こうつぶやいているらしい。
    やはり相手の女性*2のセリフだ。

    「幻をいつも愛してる 何もわからずに
    Can you hear the sound it's my soul?
    I will give you anything, anything you want」

    アナタはワタシのことを何も知らずに、
    ただワタシの幻を愛している。
    ワタシの本当の声がきこえていますか。
    ワタシは、アナタが求めることは
    何も叶えてあげることはできないのです。



    これらのポイントを抑えて、もう一度通して聴いてみよう。
    うろたえる男の依存っぷりが、もうみっともないんだから。




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    途中の人はいいね
    終わっていない人をうらやむ言葉。
    自分の恋が終わってしまったために、
    何かに夢中になっている人を羨んでいるのだろう


    少しのズレも許さないセコい人間になっちゃったよ
    自分に合わせてもらわないと怒る人、いるよね。
    相手に期待しすぎて、理想を求めすぎてうまくいかなくなった模様。


    Yin & Yan
    これはもともと中国語を英語表記にしたものなので、
    日本人には漢字で書いたほうがなじみの言葉になる。
    「陰&陽」
    陰と陽、表と裏、光と影だ。
    男女は表裏一体ということを言いたいのだろう。

    中合わせにするつもりが、相手にのしかかり潰してしまったらしい。

    しかしどーも、反省している感じはしないね、
    この主人公は。


    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    LOOSE

    LOOSE

    • アーティスト:B’z
    • 発売日: 1995/11/22
    • メディア: CD

    【ベストアルバム】
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ B'z
    icon icon

    ※該当曲を聴ける保証はありません。



    脚注

    *1:エアロスミスアメリカのロックバンド。TV番組・踊る!さんま御殿でかかる『Walk This Way』(1975年/ by)や、映画・アルマゲドンの主題歌『I Don't Want To Miss A Thing』(1998年/ by)などが知られている。聴いたことない奴は、黙ってアルバム「Get A Grip」を聴きたまえ

    *2:【相手の女性】もしくは、その幻影