B'zの松本孝弘というギタリストは、
自分で作曲とアレンジを行っていて、かなりのテクニックを誇示しているクセに、
なぜか、一歩引いている印象を受ける。
ああ見えて意外に自己顕示が少ないんじゃないかと。
わかる人にだけわかってもらえれば、OK。
少なくともレコードでは、そういう印象を受ける。
『Love Phantom』でも、最初に爆音から駆け上がるような
ギターを響かせたと思うと、あっという間に
ほかの音に吸い込まれて背後にそっと引っ込んでしまう。
そして、稲葉浩志のボーカルが始まると、
後ろの方でギュインギュインと
ギターをうならせてはいるものの、主役になろうとはせず、
全体を見渡せる位置から俯瞰して引き立て役に徹している。
実は、このあたりのバランス加減が、
変にマニアックなロックにならずに
万人受けしている要因なのではないかと思う次第。
対極にあるのがアルフィーの高見沢俊彦で、
どんな曲調の曲でも、ピロピロギュインギュインいわす
ギターソロを唐突にブチ込んでくる。
それはそれで潔く、おもわず、
イヨォ、待ってました高見沢、と歌舞伎のように掛け声でも
かけなきゃいけないんじゃないかと、変な錯覚に陥ってしまう。
一方、ボーカルの稲葉のほうはというと
特にこの頃は、エアロスミス*1のスティーヴン・タイラーのようだ。
「♪君はいないから」のあとの「Aha」なんてあたりは
まるでモノマネのようだ。
だから何?と言われても困るけど、
良い悪いじゃなく、常々感じていたことを書いた次第。
本人も結構意識していたんじゃないかなぁ。
さておき、1分以上ある長い長いイントロや、
多くのゲストによる朗読(ラップ?)など、凝りに凝った展開が印象的。
曲の構成がシンプルな分、アレンジをいろいろと
やってみた結果なのだろう。
おそらく、オペラや映画音楽のような
イメージから出発しているのだろうが、
ディスコサウンドっぽい音の作りが、どちらかというと
ゲームミュージックのように聞こえてしまう。
これは時代の音のせいなんだろうか。
さて、あまりサウンドについてくだらないことを云々言っていると
顰蹙を買いそうな流れになってきてしまったので
歌詞の方に目を向けてみよう。
概要を大雑把にいえば、
恋人に捨てられて自暴自棄になった男、
相手に理想を求めすぎて、
逃げられてしまった男の哀歌だ。
彼女の幻影の声に対して、必死にすがろうと
弁明する男の叫びだ。
「You must know what I am.
I must tell you what I’ve been loving.
I’m nothing, lifeless, soulless.
Cause I’m “LOVE PHANTOM”.」
これはイントロ中のセリフ。男の声だから解りにくいけど、
主人公が作り上げた女性の理想(幻想)の怪物が、
喋っているものと思われる。
ワタシが何を愛していたか、オマエに伝えなければならない。
ワタシは存在も、命も、魂もない
なぜなら、ワタシはオマエが作り出した
愛の幻影、なのだから。
中盤では、女性の声で突然
「そして私は潰される」
ホラー映画みたいで、おっかない。
最後には、ほとんど聞き取れないが
こうつぶやいているらしい。
やはり相手の女性*2のセリフだ。
「幻をいつも愛してる 何もわからずに
Can you hear the sound it's my soul?
I will give you anything, anything you want」
ただワタシの幻を愛している。
ワタシの本当の声がきこえていますか。
ワタシは、アナタが求めることは
何も叶えてあげることはできないのです。
これらのポイントを抑えて、もう一度通して聴いてみよう。
うろたえる男の依存っぷりが、もうみっともないんだから。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
途中の人はいいね
終わっていない人をうらやむ言葉。
自分の恋が終わってしまったために、
何かに夢中になっている人を羨んでいるのだろう
少しのズレも許さないセコい人間になっちゃったよ
自分に合わせてもらわないと怒る人、いるよね。
相手に期待しすぎて、理想を求めすぎてうまくいかなくなった模様。
Yin & Yan
これはもともと中国語を英語表記にしたものなので、
日本人には漢字で書いたほうがなじみの言葉になる。
「陰&陽」
陰と陽、表と裏、光と影だ。
男女は表裏一体ということを言いたいのだろう。
背中合わせにするつもりが、相手にのしかかり潰してしまったらしい。
しかしどーも、反省している感じはしないね、
この主人公は。
現在入手可能な音源
やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
※該当曲を聴ける保証はありません。