日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『硝子の少年』 Kinki Kids ~ 現役の少年に少年時代を振り返らせるナンセンス

歌い出しに現れる無音の瞬間にゾクっとくる。

曲の随所にみられる、

こういう“古臭い”テイストがこの曲のキモ。

 

古臭いといっても、世代を超えた大昔ではなく、

ひとりの人間が、ふと余裕をもって

振り返ることができる程度の過去。

 

雰囲気からして、おおよそ10年くらいさかのぼった、

つまりはこの曲の1997年からみた10年前、

87年前後のテイストではないかと思う。

 


シングルジャケット/駿河屋より
※カラオケバージョン。ジャニーズが絡むと試聴ひとつにもシビア。
  • 作詞 松本隆、作曲・編曲 山下達郎
  • 1997年(平成9年)7月21日、ジャニーズエンターテインメントより発売
  • オリコン最高位3週連続1位(年間2位/1997年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:硝子の少年 KinKi Kids 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:硝子の少年 - Wikipedia
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    曲に細かな装飾を施す、クラシックギターの音色、

    頑なにハモらない、Kinki Kidsの二人のユニゾン

    締めに余韻を残すストリングスの音など

    作る方も聴く方もお互いに、そうそう、こういう感じだったよね、と

    思わずニンマリとしてしまう細かい仕掛けが満載。

     

     

    その中において、シャカシャカとなっているドラムが、

    少し現代的なアレンジを加えていると思いきや、

    よく聞くとその音が何ともいえずチープで、

    ファイコンのノイズ音かよ!*1とも突っ込みたくなるほど。

    80年代の打ち込み音の草創期の雰囲気が、こんなところにもよく出ている。

    このあたり、さすが妥協を許さない音職人、

    山下達郎の作・アレンジといったところか。

     

       

    歌詞の内容も、過去を振り返る内容で、

    ちょっとした懐かしさを演出している。

     

    「♪嘘をつくとき瞬きをする癖が 遠く離れてく愛を教えてた」

    このあたりの歌詞なんかも、

    『抱きしめてTonight』(田原俊彦/1988年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)の

    「♪悩み事を隠すの案外下手だね 肘をついた姿勢で爪を噛んでる」

    なんかとかなりリンクするように感じるのは

    おそらく曲調のせいだけではないと思う。

     

     

    街で見かけたかつての恋人、

    その左手には婚約指輪*2が光っていた。

    主人公の胸には、かつてのほろ苦い思い出がよぎり

    その場から逃げるように立ち去る、

    しかし心はまだ未練たっぷり。という内容。

     

    しかし、現役の少年たち*3に、

    少年時代の苦い思い出話を歌わせるなんて。

    等身大の自分を歌うことがもてはやされはじめた時代に、

    何とも大胆な試みだったと思う。

     

    未成年に背伸びした歌を歌わせるのは

    昔からの常套手段だが、

    背伸びを通り越して、数年後の視点から過去を振り返らせて、

    現在の自分たちを投影させてしまうあたり、

    相当ひねくれた歌なのかもしれない。

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    それにしても、堂本光一と、堂本剛

    この二人の歌い方が驚くほどに似ている。

    声の表情のつけかたから、発声の仕方、

    はては声質に至るまで。

     

    歌い方が作者である山下達郎っぽくないので、

    だれかほかに歌唱指導の人がいたのかもしれない。

    器用にも二人はそれを忠実に再現してしまったのだろうか。

     

    そのために、複数人が歌うことによる音の揺らぎ*4がほとんど感じられないくらい、

    二人の歌唱が溶け込んでいる。

     

    どういうトリックを使ったんだろう。

    ただ単に偶然が生み出したものかもしれないけど。

    ただそのせいで、デュエットで歌っているという必然性が

    音の上ではなくなってしまったのがちと残念。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「雨が躍るバスストップ」

    確信的にブッコんだ文学的表現。

    雨が躍る、なんて表現も、バスストップ、なんて言い方も

    けっして日常会話で出て来るものではない。

    雨のバス停、じゃ絵にならないが、

    雨が躍るバスストップ、とくれば途端に絵になるから不思議だ。

     

     

    「僕の心はひび割れたビー玉さ のぞきこめば君が逆さまに映る」

    やってみるとわかるけど、

    ビー玉から覗いた景色は、逆さまに映る。

    それはそうと、よく考えてほしい。

    ひび割れてしまうとそこに不連続面ができるので

    そこで光は拡散、もしくは反射してしまって

    おそらく向こう側は見えないと思われる。

     

    理科の現実的な問題なのではなくて、

    これも文学的表現のひとつなんだなぁ。

     

    ビー玉(ガラス玉)→もろひび割れやすい

    ビー玉→景色が逆さまに映る

     

    僕の心には、君の心は正反対に映り、

    そして僕の心はもろく崩れやすい。

     

     

    「硝子の少年時代の破片が胸へと突き刺さる」

    少年時代の破片。

    すでに崩れ去ってカケラになっているけれど

    まだチクチク胸を刺す。

     

     

    「よそゆきの街」

    またしても出ました文学的表現。

    普段の街、の反対としてのよそゆき。

    見栄を張ったような、ちょっと背伸びした街に

    デートに行ったんだろうね。

     

     

     

    amazonで現在入手可能な収録CD(2曲目。視聴は出来ないの。)

    KinKi Single Selection

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    脚注

    *1:任天堂の名機・ファミリーコンピュータの音源は、矩形波が2音、正弦波が1音、ノイズ音が1音の合計4音。正確にはもう1音PCM系統の音源があるらしいが、周波数が安定せず音楽向きではない。こんなチープな音源で当時よくあれだけの音楽を奏でていたと思うと頭が下がる。

    *2:もしくは結婚指輪

    *3:二人とも1979年生まれというから、当時18歳かな?

    *4:コーラス効果。複数の人が同時に歌ったり、同じ人が2重、3重に重ね録りするなどする。わずかに音程やタイミングが異なることによって、音に厚みを持たせることができる。