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日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介

『東京ラプソディ』 藤山一郎 ~ 華やかさの裏に忍び寄る影

1901~1950

そもそもラプソディとは何ぞや、

という疑問が先に立つ。

 

この、1936年の『東京ラプソディ』をはじめ、

ボヘミアン・ラプソディ』(クィーン/1975年)

『新しいラプソディ』(井上陽水/1986年)

ラプソディ・イン・ブルー』(DA PUMP/1998年)*1

など、古今東西に冠する曲は数あまたあれど、

その意味するところはあいまいではなんだかよく判らない。

なんとなく、ちょっぴり哀愁漂う雰囲気の言葉である。

 

 

早速手元の広辞苑*2を繰ってみよう。

 

ラプソディー【rhapsody】狂詩曲。狂想曲。

 

ラブ・ストーリー」と「ラブ・ソング」の項に

挟まれているのがなんだかお茶目。

狂っている曲らしいがなんだかよく判らないので、

キーワードをたどってみよう。

 

きょうし・きょく キャウ…【狂詩曲】器楽曲の一形式。きわめて自由な形式を持ち、楽想の自由な展開を表現するもの。ラプソディー。

 

ぴんと来ないままにラプソディーに戻ってしまったので、

もう一つのキーワードをたどってみる。

 

きょうそう・きょく キャウサウ…【狂想曲】⇒カプリッチオ

 

昔懐かしゲームブック*3みたいになってきた。

 

カプリッチオ【capriccio イタリア】一定の形式なく気分の変換を主としたリズムの曲。狂想曲。幻想曲。

 

タライ回しにあっている気分。

リアル辞書を引くのって楽しいなぁ。

 

げんそう・きょく【幻想曲】(fantasia イタリア)楽想の自由な展開によって作曲した形式不定のロマン的楽曲。また、歌劇からとった抜粋曲。ファンタジー。

 

なぜかファンタジーにたどり着いてしまった。

現代の感覚でいうと、ファンタジーはロマンとメルヘンの集合体なので、

場違いなところに来てしまった感覚だ。

 

総合すると、ラプソディとは、自由奔放な作曲の形式らしいが、

ボヘミアン・ラプソディ』は別として、それ以外のラプソディは

本来の意味からすると、どうもピントがずれている気がする。

 

 

それとも、ラプソディなのは楽曲の方ではなく、

歌われている内容・歌詞が、狂想や幻想、なのだろうか。

 

「♪楽し都 恋の都 夢のパラダイスよ 花の東京」

と歌われているように、

パラダイスである東京は、夢でしかない、絵空事なのか。

 

「♪うつつに夢見る君よ 神田は想い出の街」

現実として見えているつもりの風景は、

実は嘘っぱちで、想い出の中にのみ残るというのか。

 

「♪今もこの胸に この胸に ニコライの鐘も鳴る」

今もお茶の水にあるニコライ堂は、1923年、関東大震災により被災。

その後1929年までに再興していたはずだが、

鐘の音は想い出の中にしかないとうたわれている。何故か。

 

 

 

ヒントを求めて当時の世相を見てみよう。

1936年(昭和11年)といえば、二・二六事件のあった年。

軍部が台頭し、この曲のリリースは戒厳令の真っ最中の6月。

8月にはナチス・ドイツ主導によるベルリン五輪が開催され、

翌年には日中戦争がはじまり、第2次世界大戦へと続いていく。

 

 

ハイテンポで明るい曲調と、華やかな歌詞に隠れて

忍び寄る暗く永い影。

 

これが、ラプソディ、の正体なのだろうか。

こんなに無性に明るい曲なのに。

 

  

名曲・聴きドコロ★マニアックス

この曲に幻の5番*4があると聞いて、

とりあえずどれどれと歌詞を眺めながら聴いたところ、

手元の音源にでは、5番どころか3コーラスで終わっていて、4番すらない。

というよりも3番は間奏になっていて抜けており、

4番で終わっているというほうが正しいようだ。

 

参考までに5番の歌詞はうたまっぷには掲載されていないので

以下に挙げておく。

 

「♪花咲く都に住んで 変わらぬ誓を交わす

 変わる東京の屋根の下 咲く花も赤い薔薇

 楽し都 恋の都 夢のパラダイスよ 花の東京」

 

古い曲ほど、何回も再録されていることが多いので

バージョン違いが多いのは致し方ないところ。

手元の音源はどうやら藤山一郎本人によるアレンジのものらしい。

ほかのものよりスローテンポ。 

 

これに聴き慣らされると、通常のものが

いやに駆け足に聞こえてしまっていけない

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「逢えば行くティールーム」

喫茶店に対応する英語といえば、

今では「カフェ」*5が普通だが、

当時は「ティールーム」というのが一般的だったのだろうか。

字面からするとティールームの方がしっくりくるのは確か。

彼女と銀座で待ち合わせて、まず行くのは喫茶店。

くらいの意味だろう。

 

 

「うつつに夢見る君の 神田は想い出の街」

「うつつ」現実のこと。

きらびやかな銀座や新宿に遊ぶ君にとって

神田の街はすでに想い出でしかない。

 

 

「夜ふけにひと時寄せて なまめく新宿駅

深夜にちょっと立ち寄った 夜の顔を見せる新宿駅

今も昔も新宿の夜はなまめかしい。

 

 

 

 

amazonで現在入手可能な収録CD 1曲目/試聴可能・これは藤山本人の編曲によるバージョン
藤山一郎 ゴールデン☆ベスト

藤山一郎 ゴールデン☆ベスト

 

 

iTunes / 試聴も可能
東京ラプソディ

東京ラプソディ

 

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作詞 門田ゆたか、作曲 古賀政男、編曲 高橋孝太郎

1936年(昭和11年)6月、テイチクより発売

 

歌詞はうたまっぷ

藤山一郎/歌詞:東京ラプソディー/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

東京ラプソディ - Wikipedia

 

 

脚注

*1:そもそもこれはジョージ・ガーシュイン1924年の器楽曲がタイトルの元ネタだが

*2:昭和45年11月18日 第2版第4刷。家にある数少ない自分より年嵩のもののひとつ。古っ。

*3:選択肢やサイコロの目によって指定された順にチャプターを読み進める書籍。現代でいうサウンドノベルに近い。

*4:初回リリース時には没になったが、その後再録などで日の目を見たらしい

*5:もしかしたら英語じゃない?