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日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介

『Yes-No』 オフコース ~ 心の中での問いかけだとしたら、答えは返らない。

1976~1980

遠くかすかにこだまする、草笛のような音色*1

風に乗ってほのかに聞こえてくるかのようだ。

 

あまりに静かな、そんな印象の立ち上がりに、

「無音」と判断した車載のFMトランスミッター*2

情け容赦なく省エネモードを発動、

音の出力をOFFにしてしまう。

 

ケッ。所詮機械には、この繊細さがわかるまい。

と心の中で毒づき、時には、アホか!と声に出して

身振りを添えて一人ツッコんでみるものの、相手は機械。

結果は変わらず、一定の基準によってのみ動作する。

 

無念。

 

 

 

 

主人公は、恋人未満の相手に対し、

ずっと問いかけを発し続ける。

 

「♪好きな人はいるの?」

「♪君を抱いていいの?」

「♪好きになっていいの?」

「♪心はいまどこにあるの?」

 

しかし、相手の答えが得られている様子はない。

 

主人公は、思ったことをそのままに、

思ってもいないことも口から先に出てくるような

お調子者の軟派ヤローで

ふざけているようにしか捉えてもらえないのだろうか。

 

 

いや、もしかしたら、主人公の問いかけも、

答えが得られないことがわかっていながらの、

声にならない心の問いかけなのかもしれない。

 

 

「♪ほかのこと考えて 君のことぼんやり見てた」

相手のことが気になってしょうがないのだから、

今晩の献立とか、そういうまったく関係ないことを

考えていたとは考えにくい。

 

「君を抱いていいの?好きになってもいいの?」

そんな答えのない問いかけを

頭の中でずっとしていたのではないだろうか 。.

 

君を好きになっていいの?

そんな言葉を言いたくて、言い出せない。

君を悲しませたくないから。

傷ついた、もしくは傷つきやすい相手なのだろうか。

 

「♪時は音もたてずに 二人包んで流れていく」

 

 

お調子者の歌ではない。

そうじゃなきゃ、この寂しげな雰囲気に

折り合いがつかないじゃないか。

 

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

静かな導入部から一転して、

都会的でクリアなドラムをバックに

印象的なシンセサイザーのイントロがスタートする。

 

 

なんでこう、単音引きのシンセサイザーの音って

こんなに切ない響きなんだろう。

なんの変哲もない機械的な音なのに、

胸がきゅんと締め付けられるような音だ*3

 

それとも、なんの変哲がない音だからこそ、だろうか。

オカリナやパンフルートの音のような

矩形派とか正弦波に近い音は、

心細い単音で奏でられることで、哀愁を掻き立てる。

喜太郎にしても、宗次郎にしても、冨田勲にしても。

みんなそう。

 

そんな音が大好きな人間がここにいる。

思えば、生まれて初めて買ったCDは、

宗次の『大黄河』だった*4

 

 

もうひとつ蛇足。

「♪あぁ 時は音もたてずに 二人包んで流れていく」

この部分、それまで8ビートを刻んでいたドラムが、

ここだけ16ビートを刻む。

イントロを除けば一番静かな部分だけど、

こういうアレンジのセンスがすごいと思う今日この頃。

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

 全文日本語訳、というより物語風に妄想タイムに行ってみよう。

主人公はお調子者、ではなく、

互いに傷つくことを恐れ、気持ちを伝えられない、

そんな前提の主人公で。

 

 

「ごめん、いまなんて言ったの?」

おもわず、話を聞き流してしまっていたようだ。

また自分だけの世界にいたよ、とからかうように笑って彼女は答えてくれた。

「ちょっと寒くなってきたね、って言ったのよ。」

 

いわれてみれば、空気がひんやりとしてきたことに気付く。暑かった夏も、もう終わりのようだ。

 

何を考えていたかって、それは君のこと。頭の中はただただ彼女への問いかけばかりがあふれていた。それは答えのない問い。

・・・だれか好きな人はいるの?

・・・君を好きになってもいいの?

・・・君を抱きしめてもいいの?

・・・君の心には誰がいるの?

 

彼女のにおいが感じられるほど、近くにいるのに、頭の中ばかりがおしゃべりで、本当の言葉にすることができなくて。それでもやっぱり君のことばかり考えてしまうんだ。

この気持ち、彼女は気づいているんだろうか。それとも気づいているけど、気づかないふりをしているだけなんだろうか。

 

もしそうならば、そのまま気づかないふりしてくれたって構わない。

僕は答える。

 「ああ、そうだね。少し寒くなってきたね。

今日は付き合ってくれてどうもありがとう。じゃ、また明日。」

 

想いを伝えることは、彼女を困らせるだけかもしれない。

傷ついた彼女に、同情しているだけと思われるかもしれない。

もう彼女の悲しい顔を見たくないんだ。悲しませたくないんだ。

 そうぞう

僕じゃ駄目かな?

僕が、君を抱きしめてもいいかな?

僕が、君を好きになってもいいかな?

 

答えのない問いかけが、いつまでもあふれる。

 

 

こういうの妄想をあふれさせる症状を、

人は中二病と呼ぶ。

どうもこじらせ始めているようだ。

 

 

 

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YES‐NO?シングルA面セレクション

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シングルジャケット/CDandLP.comより

作詞・作曲 小田和正、編曲 オフコース

1980年(昭和55年)6月21日、東芝EMIより発売

 

歌詞はうたまっぷ

オフコース/歌詞:YES・NO/うたまっぷ歌詞無料検索

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

 Yes-No - Wikipedia

 

オリコン最高位8位(年間35位/1980年)

脚注

*1:実際はフリューゲルホルンの音色らしい

*2:イヤホンジャックからの音を、FM電波にして飛ばす機械。車載オーディオに対応していないメディアでも、FMラジオさえついていれば聴くことができる機械。

手持ちのものは十数年前に買ったものだが、最近車を乗り換えてから引っ張り出して使用している。だって、普通のCDしか聴けなくて、入力端子もないんだもの。埋め込み式のオーディオは融通が利かなくていけない。

*3:オヤジだって胸ぐらいきゅんとするのだ

*4:親に歌謡曲以外なら買ってやると言われて、チョイスしたのがこれ。我ながら渋すぎる