日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『初恋』 村下孝蔵 ~ 覚えているのは名前だけ、エピソードなんてそんなもん。

先に謝っておく。
たぶんいろいろ失礼なこと言ってしまうから。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。


村下孝蔵
かねてより、絶対名前で損してるよな、と思っていた。
なんだか民謡歌手のようなイメージを蜂起させるお名前で、
こんな青春ど真ん中、という楽曲からは遠くかけ離れたような気がしてしょうがない。
まぁ、あくまでイメージだけなんだけどね。

それが今回この稿を書くにあたり、初めてご本人の尊顔を拝見し、
ああ、名前だけでなく容姿でも損をしていたんだねと
大変失礼なことに思いを巡らすに至る。本当にごめんなさい。*1


70年代の小椋桂にしても、90年代の槇原敬之にしても、
似たような傾向はあるものの、
少なくとも彼らは名前で損しているようには見えない。
プロモーションの観点から、芸名にするという選択肢はあっただろうに、
本名で通した事には、ちょっとした意地とプライドが見え隠れする。
作品の完成度で勝負、というこだわりがあったのだろう。

しかし、タイトル、歌手名、ジャケット写真だけを見たときに
レコードをジャケ買い*2しようとは思わない。
これを損と言わずして何と言おう。



発売後少したってからにせよ、シングルのジャケットを、
本人の横顔のジャケットからきり絵の女の子に差し替えたのは
正解だと思う。


初恋(切り絵ジャケ) [EPレコード 7inch] シングルジャケット/amazonより
初恋

初恋

  • 村下 孝蔵
  • J-Pop
  • ¥255
 
  • 作詞・作曲 村下孝蔵、編曲 水谷公生
  • 1983年(昭和58年)2月25日、CBSソニーより発売
  • オリコン最高位3位(年間14位/1983年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:https://www.utamap.com/showkasi.php?surl=35634
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:初恋 (村下孝蔵の曲) - Wikipedia

  • ところが、そんなちょっと損している男たち(大失礼)が生み出す、
    恋心と、ささやかだからこそリアルが詰まった歌詞、
    美しいメロディ、それを奏でるなんとも爽やかな歌声は
    皮肉にも、自分たちのように色恋の青春から縁遠かったような人間にも
    大いなる共感を与えてくれる。



    いや、これはカッコつけて言い過ぎだ。

    ざっくばらんに言うと、

      優男が歌った恋の歌じゃ、共感できないんだよ!
    別世界過ぎてさ!



    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    こんなところで自分の初恋をさらけ出そうなんて思わないけど、
    正直言ってしまうと、さらけ出せるようなエピソードなんて何ひとつない。
    だって本当に何も起こらなかったんだから。
     
    この、初恋、という歌も、そんなところをうかがわせる。
    「♪放課後の校庭を走る君がいた 遠くで僕はいつでも君を探してた」
    二人の接点はこれで終了。

    後は悶々と、自分一人の胸の内だけが
    抽象的ともいえる語句で綴られていく。

    だって、エピソードなんて、、ないよねえ、初恋に関して。
    ある?




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    五月雨さみだれ
    5月の雨と書くが、季節は5月の出来事じゃない。 
    旧暦の5月を指す言葉なので、だいたいひと月遅れの6月の出来事。
    つまりは五月雨とは梅雨のことを指す。
    梅雨の終わりごろの激しい雨と違い、
    降ったりやんだりとはっきりしない天気。

    さみだれ式、とか、さみだれ撃ち、なんていう言葉も、
    本来は、途切れ途切れでダラダラと続くものの例えだったはずなんだけど、
    最近は間髪入れない連続したもの、
    という間違ったイメージが広がってしまっている気がする。


    「振子細工」
    おそらくこのような名前の工芸品は存在しない。
    いわゆるヤジロベエのようなものを想定しているのだろう。
    振子→左右にフラフラと揺れ動く細工→繊細で壊れやすいもの
    ということで、
    少年のガラスのハートを象徴した造語なんだろうと思われる。


    「浅い夢」
    淡い夢、儚い夢、などと同義だろうか。
    いろはうたの「あさきゆめみし」から来ている言葉と思われる。
    はっきりしない、ぼんやりとした記憶だからこそ、
    たとえば優しい、悲しい、暖かい、のような抽象的なイメージとして記憶されてしまい、
    具体的に思い出すことができない代わりに、
    感情の一部として自分の中に巣くってしまっているのだろう。


    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    初恋~浅き夢みし

    初恋~浅き夢みし

    • アーティスト:村下孝蔵
    • 発売日: 2013/04/10
    • メディア: CD

    これは出だしがちょっと長いアルバムバージョン




    脚注

    *1:あやまれば何を言っても許されるわけじゃない。

    *2:どんなものが入っているか知らずに、商品の見た目だけで手を出すこと