なんの予備知識も持たずに、ひとつの楽曲として聞くと、
なんだかいろいろと意味不明な部分が見え隠れする。
「♪二人には目印が光る」
これはおそろいの結婚指輪だろうか。
そうであれば、南の島に新婚旅行に訪れたカップルの物語、
と捉えるのが一番自然なような気もするが、
いまひとつしっくりこない。
そして、「♪恋したときみんな出会う自分だけの神様」とは。
まさか恋人のことを神様とは言うまい。
こどものときにだけ訪れるという、
トトロとの出会いの大きい子版ようなものだろうか。
などなど、全体の文脈からくみ取ることが難しい部分が多々あるが、
これはある種しょうがないこと。
映画の主題歌として作られた歌だからだ。
どうしても物語のキーワード抜粋のようなものが目についてしまう。
こんなにいい曲なのに、カバーされる例がほとんどない原因は
ここにあるとみてほぼ間違いないだろう。
ジャンルは全然違うが、類似のいい例が、銭形平次の主題歌だろう。
(舟木一夫/1966年/ by)
「♪今日も決め手の、今日も決め手の 銭が飛ぶ」
内容を知らなければ、いつも最後は金で解決する主人公か、
はたまた、最後には散財してどんちゃん騒ぎをする主人公か、
そんな内容と受け止めてしまいかねない。
誰がどうやって、何の予備知識もなくして、
主人公の投擲する武器が、硬貨であると想像できようか。
「♪天国に あなた 一番近い島」
どういうわけか、歌詞においてはタイトルのど真ん中に「あなた」が挿入されている。
突然相手への同意が現れるので、何とも不思議な響きになっている。
譜割りの都合でこうなったのであれば、
普通であれば、タイトルが分断されるのはさけるため
ここは「あなた」ではなく
「ららら」とか「うふふ」とか「あはは」とか、
まあ何でもいいがそういう語句を持ってくるのだろう。
ひょっとすると、主題歌製作者側の何らかの葛藤や抵抗の現れなのだろうか。
そこまで深い意味はないのだろうか。
やっぱり、このある種難解な歌詞を読み解くには、
映画を見るしかないのかもしれない。
”天国に一番近い島”とは
オーストラリアの東方沖に浮かぶ島国、ニューカレドニアが舞台の映画。
幼き頃亡き父に聞かされた、神々の住まう島を探す少女の物語。
映画は見たことないので詳しくは知らないが、
少なくとも新婚旅行の話ではないようだ。
その主題歌を歌うのは、当然のごとく主演の原田知世。
このころまでは、現在の主流であるタイアップではなく、
ひとつひとつにプロジェクトが組まれ、専用の曲が作られていた。
このアレンジと伴奏は完璧で隙がない。
全ての楽器があるべきところに収まっていて、過不足ないとはまさにこのこと。
そして大きく隙を見せているのが、その歌唱。*1
しかし、当時から物議をかもしていた生歌はともかくとして、
少なくともレコードの上では意外にマッチしている。
これ、歌が上手い人が歌ったらちぐはぐさが目立ってしまったかもしれない。
狙いすぎた感のある、曲調が唐突に変化する展開をうまくぼかしている。
完璧すぎるよりも、どこか抜けたところがある方が
人に好まれる。そのいい例なのかもしれない。
それにしても、こんなに手をかけたいい曲を
もらえてしまうなんて、正直ズルいと思う。
歌が上手くても曲に恵まれない人が
巨万といるのに。巡り合わせとは不思議なもの。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「恋したときみんな出合う自分だけの神様」
神様に出会う、という言い回しが、
なんだか胡散臭く感じてしまっていけないが
要するに、自分だけが信じてあげられるものに出会う、
ということを、信仰になぞらえて神様と置き換えている。
自分だけ見ていてくれなくても、
夢に向かって生きていても、
あなたのことは信じられる、と言っているのだろう。
相手を神としてあがめるわけではない。
こういうあたりが、変にキーワードをあてこもうとした
弊害になっているよな。
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