日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『夏を待ちきれなくて』 TUBE ~ 覆水盆に還らず、という言葉を知らんのか。

いいよ、君が望むなら別れよう。

だけどまたすぐに恋人同士に戻れるさ!

もうすぐ夏がやってくるからね!

 

「♪サヨナラから始めよう 燃えるような恋してみよう」

「♪もう一度やり直せそう 夏を待ちきれなくて」 

  

ポジティブ・シンキングにもほどがある。

何の悪気もなく、あっけらかんとピュアな笑顔を浮かべて。

ストーカーじゃないけど、ストーカーよりタチが悪い。

 

こんな考え方をする相手に捕まったら、もう逃げられない。

どうやら、覆水盆に還らずという言葉を知らんらしい。

 

そんな相手を恐ろしく思ってどこまでも逃げぬくか、

諦めて自分もポジティバー*1になって一緒に生きるか。

ふたつにひとつ。

 

 

 

深読みしようとすればするほど、

こういうどうしようもないシチュエーションに行きつく。

そういう意味ではないんだよとは解っていながらも、

前田亘輝の、別れの歌を思わせないような

底抜けのあっけらかんとしたボーカルが

こういうこわいシチュエーションを掻き立てる。

 

 

もうひとパターン。

 

あんなヤツとは別れよ。もうどうせ腐れ縁なんだろ?

俺と燃えるような恋を楽しまないか?

実はお前のことずっと見ていたんだ。気持ちを抑えていたけどね。

あとはお前次第だよ?

 

「♪I Love Youさえ言えなくて 想い出にはできなくて」

「♪きっと素直になれる 許せる気がする」

 

いまの恋人との冷めた関係に踏ん切りをつけられない女。

そこに昔なじみの男が現れ、実はずっと君のことを見ていたと。

自分はどんな過去でも許せる

君も自分の気持ちに素直になれと諭してくる。

 

ありゃりゃ、浮気の歌かよこれ。

 

 

 

 

そんなイメージを払拭するために

全文日本語訳を試してみよう。

変な前提を設けずに、純粋な恋の歌として・・

 

 

もう、愛しているという気持ちも起こらなくて。

過去のものにする踏ん切りもつかなくて。

無理をして恋の輝きを保とうとしていた昨日までの日々。

 

 

波音がさわぎだしたね。

今年ももうすぐ夏がやってくる

ほら、涙は似合わない恋の季節がやってくる。

 

今なら自分の気持ちに素直になれる気がする。

いつも長続きしない自分にうんざりしていたけど

やっぱり数か月しか持たないような恋にはサヨナラしよう。

 

別れを切り出すこともできなくて、

かといって会えば喧嘩ばかりで

もう元には戻れないのに

無理をして取り繕って、もがいていた二人。

 

お互い、サヨナラから始めよう

それぞれでもう一度、燃えるような新しい恋をしてみよう

今度こそ、長続きしない性格も変えられるはずさ

そんな恋に出会えるはずさ。

そう、夏を待ちきれなくて

 

 

焼けるような夜風の中でも、くすぐられる純粋な恋心。

飾らない素のままの自分でもいられる関係を見つけよう。

そうさ、何もかもみんな眩しく輝いて見えるはずさ。

後は君次第。ためらうことなんてないさ。

 

もはや、愛しているという気持ちも起こらなくて。

過去のものにする踏ん切りもつかなくて。

無理をして恋の輝きを保とうとしていた昨日までの日々。

 

お互い、新しい恋を始めよう。

自分たちのことは想い出にしてしまおう。

きっとできるさ。新しい恋に出会えるはずさ。

夏を待ちきれなくて

 

 

別れを切り出すこともできなくて、

かといって会えば喧嘩ばかりで

もう元には戻れないのに

無理をして取り繕って、もがいていた二人。

 

お互い、サヨナラから始めよう

それぞれでもう一度、燃えるような新しい恋をしてみよう

今度こそ、長続きしない性格も変えられるはずさ

そんな恋に出会えるはずさ。

そう、夏を待ちきれなくて

 

 

なんのバイアス*2もかけない解釈は

なんとも面白くないなあ。

 

無責任に、ポジティブ男の宣言曲にしたままの方が、

よさそうだ。

 

 

 

 

 

名曲・聴きドコロ★マニアックス

常々TUBEのギターって何気にいい音出しているよなと思っていたけど、

この曲って、実は主役はギターだよね。

 

サビが一番の盛り上がりであることは確かで、

ギターパートはほんの繋ぎほどの時間しかないんだけど、

この曲は、たぶんこのギターパートがあるから成立している。

 

何気なさ過ぎてスルーしがちだけど、なんかすごい。

 

 

The Yellow Monkeyの「パール」(2000年)なんかもそう。

ほんとうまく言葉で表現できないんだけど、きっとそう。

 

 

 

 

 

意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

「焼ける夜風にもう くすぐられる純情」

この主人公は、恋は夏に生まれると信じているようで、

熱帯夜を感じると、どうにも恋心が沸き立つらしい。

そんなことを主張されても、

はあ?てな感じで何言ってるんだかわからない。

 

この曲の中で、この部分だけ妙に浮いているのも

この性格(性癖?)を理解してやらないといけないせいだろう。

 

 

「冬を越せぬ恋」

そんなだから、主人公の恋は必然的に夏に発生する。

だから、数か月しか持たない恋をこう表現することができる。

 

それとも、主人公は虫?

セミみたいに、ひと夏の恋をして、夏の終わりとともに死んでいくのか。

ここで新たな新解釈が発生してしまった!*3

だとしたら、短い恋の季節に新たな恋を見つけようとするのは

決死の覚悟だな。

 

 

 

 

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浪漫の夏

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夏を待ちきれなくて

夏を待ちきれなくて

  • TUBE
  • J-Pop
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夏を待ちきれなくてシングルジャケット/amazonより

作詞 前田亘輝、作曲 春畑道哉、編曲 TUBE

1993年(平成5年)5月12日、ソニーレコードより発売

 

歌詞はうたまっぷ

http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=37864

 

曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい

夏を待ちきれなくて - Wikipedia

 

オリコン最高位1位(年間33位/1993年)

脚注

*1:positive + er ポジティブな考えを持つ人。和製英語だと思っていたが、どうもスラングとして米英圏でも存在する言葉のようだ

*2:英語で 偏り や 斜め の意。転じて偏見のこと。服飾のフチの処理なんかに使うバイアステープは、布地を斜めに使った帯のことということか。納得←そもそもバイアステープの方がマイナーなので説明になってない

*3:これはこれで面白いなぁ