なんでこの歌には名前が無いんだろう。
そんな本質とは離れた、比較的どうでもいいことを深く考え始めると
本来悩まなくてよいはずのところで、思考はドツボにはまっていく。
名前がない状態というのには、いくつかパターンがあると思う。
ひとつは、まだ名前が付けられていない状態。
出生届を出す前の赤ん坊のような状態。
『吾輩は猫である』の猫のような状態。
いつかは名付けられるのであろうが、未だ決定せず、の状態。
ひとつは、まだ名前を知らない状態。
「♪どこの誰かは知らないけれど、誰もがみんな知っている」月光仮面
(近藤よし子『月光仮面は誰でしょう』/1957年/ by)状態。
名乗るほどのモンじゃありません、と去っていったあの人など。
本当の名前はあるハズなんだけど、あいにく存じ上げず、の状態。
ひとつは、存在が未知なるもの。まだ見ぬ何か。
いつか現れる白馬に乗った王子様とか、未確認飛行物体とか。
または、新発見の彗星を追い求める天文学者の目指すものや
世界の根源や果てを突き詰めるの物理学者の求める真理など。
フロンティア精神に則って、鼻息も荒く、発見と名付け競争でもある。
だけどこの曲に名前がない本当の理由は、そのどれでもなくて、
その意味するところを端的に表す、「名前」を、言葉にするのが照れくさい、
カッコ悪い、あるいは、ためらわれる、認めたくない。
自尊心が邪魔をして名付けられない。
実際のところ、そんなつまらない理由だろう。
「♪妙なプライドは捨ててしまえばいい そこから始まるさ」
なんて言っている本人がこれだから。
恋人との些細な感情の行き違い
それを取り繕うのに、照れくささまぎれに、カッコつけた言い回しで
「名もなき詩」と銘打ったごたくを並べていく。
「♪ちょっとぐらいの汚れものならば残さず全部食べてやる」
短所だって、すべて受け止めるぞと、器の広いところを見せてみたり、
「♪君が僕を疑ってるんなら この喉を切ってくれてやる」
自分の正統性と誠意をアピールしてみたり(ガキか)。
こんなことで死なれたら相手が困るだけだが。
だけど、
「♪いらだつような街並みに立ったって」
「♪不調和な暮らしの中でたまに情緒不安定になるんだろう」
ああぁ、そんなんじゃまだまだ、彼女、不機嫌だよ。
まわりに八つ当たり始めそうだよ。
「♪自分らしさの檻の中でもがいているなら 僕だってそうなんだ」
理想と現実のはざまで揺れ動いているのは、
君だけじゃない、僕だってそうなんだと、共感と理解を示してみたり。
もっとわかりやすい言葉で表現しないといけないと思うけどね。
いろいろ言ってみたけど、最後に、
「♪愛情っていう形のないもの 伝えるのはいつも困難だね
だからダーリン、この名もなき詩をいつまでも君に捧ぐ」
だからちゃんと名付けようよ。
実はこれは、ごめんなさい、の歌なんだって。
そうだねわかるよ、の歌なんだって。
愛してる、の歌なんだって。
名もなき詩、なんて変にカッコつけてないでさ。
深読みしようと思えば
いくらでも深読みできそうな歌詞だけど、
そんな、はたから見れば、ほほえましい愛情表現の歌と思って聴けば、
まったく、何とも人臭く、かわいげのある曲じゃないか!
名曲・聴きドコロ★マニアックス
このころのMr.Childrenの曲は、
歌詞やアレンジなどにThe Beatlesへの露骨なオマージュが
あちこちに垣間見られ、その道の人々をニンマリとさせやがる。
わかりやすいところでは、
『Tomorrow Never Knows』(1994年/Mr.Children/ by)
なんて、タイトルがまんま
『Tomorrow Never Knows』(1966年/The Beatles/ by)
だし、
ちょっとわかりにくいところでは、
『花-Memento-Mori-』(1996年/Mr.Children/ by)
では、大サビのリフ*1に
『Hey Bulldog』(1969年/The Beatles/ by)のリフが使われているし。
表題曲『名もなき詩』についても、ご多聞に漏れず、明らかに
『涙の乗車券(Ticket To Ride)』(1965年/The Beatles/ by)
を下敷きにしたリズムをベースに進行している。
歌詞中の「Oh! Darling」は『Oh! Darling』(1969年/The Beatles/ by)
だというのは、、、いくらなんでも穿ちすぎだ。*2
盛りだくさんなのが『Cross Road』(1993年/Mr.Children/ by)で、
前出の『Ticket To Ride』に加え、
『Long And Winding Road』(1970年/The Beatles/ by)、
『Living In The Material World』(1973年/Geaoge Harrison*3/ by
)が
歌詞に散りばめられている。
今回も、だからどうしたという話でした。
あ、そうそう忘れるところだった。
もう一つ、表題曲は、大サビからの強引な戻り方がすごい。
「♪自分の胸に突き刺さる」から
「♪だけど」と力技で持っていったかと思うと、
何事もなかったかのように「♪あるがままの心で・・」
おお、良く戻って来たな、と感嘆の声を上げずにいられない。
まあ、元々『Ticket To Ride』のリフからの
サビに持っていく部分に強引さがある曲なので
この強引さも許容範囲内に収まっているんだろうな。
これもだからどうしたという話。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
ノータリン
漢字交じりで書くと、脳足りん。
脳みそが足りていないということ。
不調和な生活
言葉通りにとれば、バランスの取れていない不釣り合いな暮らし、
あるいは身分不相応な生活という意味合いになるが、
ニュアンス的に言いかえると
自分のやりたいこととかけ離れた生活、ということだろう。
不調和にしても生活にしても
なんでこんな言葉を当てはめたんだろうね。
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