日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『WOMAN』 アン・ルイス ~ 刺激的なコト言っちゃうし。難解なコトやっちゃうし。

てっきり昭和の歌だと思っていたが、案外平成の歌だった。

といっても昭和も明けたてホヤホヤの平成元年のこと。

 

イケイケに唸り上げるエレキギターのイントロに導かれ

飛び出した言葉は、「♪つわものどもが夢の跡だね」。

思いもかけず芭蕉の句が飛び出てきて、このギャップがなんともおもしろい。

 

言うまでもなく、松尾芭蕉奥の細道』より奥州平泉での句

「夏草や兵どもが夢の跡」からきている。

奥州藤原氏源義経らの栄枯盛衰の故事を知ってか知らずか、知らずか知らずか、

恋を戦場と捉えて、終わった恋模様をこの有名な句で例えている。

のっけから突拍子無さ全開だ。

 

話が少々脱線するが、アンダーグラウンドの曲はともかく、

メジャー曲で俳句を織り込んだ曲ってのは、思い当たる限りこの曲を除いてない。

 

「かわず飛び込む水の音」*1とか、

ひねもすのたりのたりかな」*2とか、

「負けるな一茶これにあり」*3とか、

 

無さそうでやっぱ無いよなあ。

近いところで、万葉集の1句を題材にした、

さだまさしの『防人の詩』(1980年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)が思い浮かぶくらい。

 

シングルジャケット/駿河屋より
WOMAN

WOMAN

 
  • 作詞 石川あゆ子、作曲 中崎英也、編曲 佐藤準
  • 1989年(平成元年)9月6日、ビクター音産から発売
  • オリコン最高位31位
  • 歌詞はうたまっぷへ:WOMAN アン・ルイス 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:「アン・ルイス WOMAN」の検索結果 - Wikipedia
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    現実世界において、ママさんロッカーであるアン・ルイス*4が歌うことによって、

    たとえ悲しみを身ごもっても、胎内でやさしさに転生させることが出来る、

    そして女性であるがゆえに、そんな痛みをも耐え抜くことができる

    という部分に、わずかではあるがリアルを感じることが出来るが

    それ以外の部分はというと、

    何だか突拍子もないというか、正直バカっぽくすらある。

     

     

    突拍子もないといえば、まず主人公の行動。

    「♪あの日あなたと踊ったドレス 冬の海へと流しに来た」

    何しとんね、と思わずツッコミたくなるな行動で、

    下手すると何かと勘違いされて、捜索隊が出張る羽目になるので

    やめておいた方がよいと思う。

    「♪濡れた足首投げ出して このままここで眠りたいわ」

    いや、だからやめとけって。

    つらいばかりの想い出から逃れるためとはいえ、面白すぎる。

     

     

    とにかくこの主人公ときたら、行動だけでなく言動も突飛で

    「♪通り魔みたいに あなたの愛が今 この腕を離れてゆく」

    通り魔みたい、なんて物騒なことばを持ち出してきているが

    要は、あなたの持っていた愛は、誰彼構わず発生する、無作為な愛だった

    -相手は自分じゃなくても誰でも良かった-ということを

    よりによって通り魔と例えてしまっている。

     

    難しいことばや、刺激的なことばを例えに使っているていうのは、

    実はボキャブラリーが豊富にあるように見せかけた、

    主人公のボキャブラリーの貧困さの裏返しに思えてならない。

    適切なことばが見つからないからこそ、

    知っている妙なことばで代用してしまっているのではないかと。

    だから、なんとなく全体的にバカっぽく聞こえてしまうのだ。

     

     

     

    そして半分ヤケのような歌詞の中、後半になって

    前述の女性論理を持ち出して

     

    女ならどんな痛みにも耐えられる。

    私は女だから耐えられる

     

    I am woman. 私は女性 ではなく

    My name is WOMAN. 私の名は女性

     

    と、妙に暗示的な言い回ししているのも気になる。

     

    失恋の痛みを乗り越えたい一心で、半ば強引に

    ポジティブ思考に変換しようとしているように思えてならない。

     

    そこまで思い詰めているのか、

    悲劇のヒロインを気取っているのか。

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    月の光をまぶたに受けて

    つまりは目を閉じて、上を仰ぎ見ているわけだ。

     

     

     

    それはそうと、「冬の海」って割にはちっとも寒そうに感じないのは自分だけ?

    心が冬なだけで、実際は出だしの句と同じく、「夏草」の季節なんだろうか。

     

    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ 美勇士アン・ルイスの息子さん。つまりはやさしさに育ったという御仁)
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    ※該当曲を聴ける保証がないという以前に、聴けたらすげぇ。

     

    脚注

    *1:古池や 蛙飛びこむ 水の音 ー これも芭蕉の句。

    *2:春の海 ひねもすのたり のたりかな ー 与謝蕪村の句。

    *3:やせ蛙 負けるな 一茶これにあり ー いうまでもなく小林一茶、本人ご登場の句。

    *4:これ歌っている時に既に息子さんは小学生。三十路のお母さんだった。