たぶん守秘義務があるので、詳しいことは言えないが
ときどき仕事で有名無名のミュージシャンの動向を知ることがある。
世間的には、『愛は勝つ』(1990年/ by)で
一発屋として知られるKAN(失礼)が
「弾き語りばったり」とかいう単独ライブを開いてることを知ったのはそのためで、
何年かにわたって、下請けの下請けみたいな感じで、ごくごく端の仕事を請け負っていた。
毎回
「弾き語りばったり #7 ウルトラタブン」
「弾き語りばったり #11 言った、言わない」
のように
番号と、駄洒落にもならないような副題がついているのだが、
どういうわけかその番号が、毎回飛び飛びだった。
たぶん、飛び飛びに仕事の声がかかっているのだろうと思っていたが、
この稿を書くにあたりWikiを覗いてみたら、この番号は
どおりで5の次が7で、その次が11だったわけだと納得したと同時に、
ここ数年は本当に声がかかっていなかったことも知った。無念。
さてそのKANであるが、個人的にイチ推しなのがこの『まゆみ』。
先ほどのライブ名にもあったように、ピアノによる弾き語りではじまる。
さり気ない小曲、という感じの出だしで大変良い。
「♪最近の君はどう?僕はね少しフテ腐れてるよ。」なんて感じに
「まゆみ」に対する、つぶやきにも似た投げかけを
行う構成になっている。
だけどどうも、名前の入った曲を歌うとなると、
なんでか身構えてしまったりするね。
特に知り合いに同じ名前の人がいたりすると。
もちろん別段にどうこう思っているわけではないんだけど、
どうしてもそういつへのメッセージみたくなってしまうんじゃないかと。
それがたとえ、知っている「まゆみ」が
それは、『SACHIKO』(ばんばひろふみ/1979年/ by)だったり、
『順子』(長渕剛/これも1979年/ by)だったり、
『安奈』(甲斐バンド/これも1979年。なぜ?/ by) だったり、
『サザエさん』(宇野ゆうこ/1969年/ by )だったりするわけだが、
たとえ浮かぶ相手が還暦過ぎの方だったとしても、
もし本人がいればその前でお気に入りの曲、と披露するのは実にこっ恥ずかしい。
・・・明らかに考えすぎなのは確か。自意識過剰とはまさにこのこと。
ヤケになって、サザンオールスターズの『チャコの海岸物語』(1988年/ by)を
「♪心から好きだよ○○」と彼女の名前で歌うことも起こるわけだ。
周りがはやし立てて半ば強要する場面も時折みられる。
アイタタタタタタタタタタタ
脇道ばかりでちっとも本題に入れない。さて『まゆみ』だが、
まゆみちゃん(もしくはまゆみくん*2)に対して
人生に迷った時のために、先輩としてのささやかなアドバイスを
歌に託して贈るというのがテーマになっている。
さだまさしの『案山子』(1977年/ by)や、
目上の男性*3、たぶん実の兄貴あたりからの目線で綴られるのだが、
こういう助言って、受ける方からすると本心からウザかったりする。
何解ったようなこと言ってんだ、という気持ちの方が先に立ってしまうんだよね。
主人公も、それをわかっているのか最後に
「♪こんなことしか言えない僕を許して」
と及び腰に逃げを放っている。
多分にテレもあるのだろうけど。
なにせ「♪一番透き通ってて美しい水って何か知ってるかい?」
の答えが
「♪恋をして 切なくて」「♪こぼれた涙がきっとそうだよ」
だもんな。
兄貴が言っている、という仮説を取り下げたくなる。
そうだ、まゆみちゃんお気に入りのクマのぬいぐるみが、
動けないながらも心だけ持って、心の中で歌っているという
メルヘン設定ということで切り抜けよう!!
ところで、大サビの最後に入る、いちばんの盛り上がる部分の間奏、
知っている人が聴けば、明らかに
ビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年/ by)の
出だしの音だとわかる。正直言ってこれが余計。
これさえなからましかばとおぼえしか。
ビートルズつながりで、Aメロからサビに移る
ピアノの「タターン、タターン」という単音のフレーズ
これも絶対ビートルズからの、そのまんまの引用だと思っているのだが、
どこからの引用かがハッキリしない。
本命:『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(1967年/ by)、対抗『レディ・マドンナ』(1968年/ by)、大穴『ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト』(1967年/ by)だろうか
何だかはっきりしないので、サージェントペパーズからアルバムを順繰り
ワンコーラスずつ端折りながら聴いて行って
戻って結局一周してみたがみつからない*4。なぜだ
誰か教えて。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「つまらない時のために」
暇でしょうがない時のために、という意味ではない。
全てがつまらなく感じてしまう、そんな人生に迷いが生じたときに、の意味。
現在入手可能な収録CD/視聴可能
脚注
*1:1と自分の数しか約数がない数。1から2, 3, 5, 7, 11…と続く。
*2:歌詞のどこにも「まゆみ」が女性であると示す言葉は存在しないのだ
*3:これも男性とも限らないんだけど
*4:一番近いのは、アンソロジー収録の『The Long And Winding Road』だったが、なんか違う。