日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『楓』 スピッツ ~ 意味深でありすぎることは、深い意味が無いに近しい

スピッツの歌詞の世界は、かくも意味深であって

深読みしようとすればするほど、各々聴き手の妄想の世界に突入していってしまう。

 

タイトルにしたって、物語のどこに楓が登場するかっていう問題に対し、

歌詞の中に木立の一本も見えないところを見ると*1

僕か君のどちらかの名前が「楓」なんだとか

本当は「風」がタイトルなんだけど、ちょっとダサいので木偏をつけてみたんだとか

いやいや、「♪呼び合う名前がこだま」する場所こそが、楓の林なんだとか

カナダ*2に移住してしまい、おそらく二度と逢うことのない友人を懐かしむ歌なんだとか

君とはメイプルシロップ*3のことで、

糖分摂取過多の主人公がメイプルシロップに決別を告げる哀しい歌なんだとか

まぁ、いくらでも妄想を広げてでっち上げることができる。

 

 

楓/スピカ シングルジャケット/amazonより
楓

 
  • 作詞・作曲 草野マサムネ、編曲 棚谷祐一
  • 1998年7月7日、ポリドールより発売
  • オリコン最高位10位
  • 歌詞はうたまっぷへ:楓 スピッツ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%93/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%AB
  •  

    シングルCDのジャケットデザイン(上にある落ち葉色の背景の写真)にしても、

    かなり意味不明で、最初は絵文字でカエデと書いてあるのかなと漠然と思っていたが、

    よく見ると上から、葉、目、手で、それでは「嵌め手」*4になってしまう。

    少しひねってあるのかと、楓の葉、左目、左手、、?などと色々考えてみても

    答えにたどり着けず、まったくもって意味不明だ。

     

    対をなすように、両A面であるカップリング曲*5である

    「スピカ」( by)用のジャケットデザインもあり、

    シングルジャケット/駿河屋より

    これも同じように、

    上からトンボ、星、机(ベッド?)と並んでいる。

     

    楓もスピカも、タイトルの音が3音で

    絵も3つずつ並んでいるので、何か関連が?

    と、あれこれ連想ゲームに陥り考えてしまうが

    おそらくこれは3択クイズ。

     

    「Q:楓はどれでしょう」「A:いちばん上」

    「正解!」

     

    「Q:スピカはどれでしょう」「A:下」

    「はずれ!正解は真ん中でした!」*6

     

     

     

     

    さてさて、間違えてはいけないのが、この歌は

    決して何かを失って嘆き哀しむ歌ではなく

    過去に決別して、自分の足で進むことを決意する歌であるということだ。

    「♪さよなら」 そして 「♪君の声を抱いて歩いていく」のだ。

     

     

    自分に欠けているに違いない、どこかにあるに違いない。

    そんな自分の半身=カケラを追い求め、

    意外なところに自分のカケラを見い出した。

    そんな自分探しのミッションをクリアしたらしき主人公。

    そんな前提条件をでっちあげて、全文日本語訳いってみよう。

     

    あの時わかったんだ。もう絶対見失うことはない。

    徒に過ごした日々のことや、無為にささくれだった気持ちも

    無くしていた僕のカケラを見つけたことで、

    ぜんぶ受け容れることが出来るようになった。

     

    季節が移ろい色づく楓の葉のように、次々と移ろう気持ちの中で、

    僕はかつて、世界をどんなふうに眺めていたんだろう。

    何かが欠けている僕のままじゃ何もできない!そう思い込んでいただろう。

     

    さようなら、今までの僕。僕は自分の足で歩いてみるよ。

    そう、今の僕のままで、行けるところまで行ってみようと思うんだ。

     

     

    いつも自分を探していたんだ。そう、あの日まで

    自分を探していたことさえ、もう遠い記憶のような気がするけど。

    窓ガラスの向こうには、水玉模様のような雲が広がっていたから

    たぶん秋の日のことだったと思う。

    ついに僕のカケラを見つけた、まさにその日まで。

     

    それまでの僕は、

    まさに吹けば飛ぶような、大した気構えも持ちあわせず、

    誰もが憧れるような人生を生きることが幸せだと信じていた。

     

    自分に正直に生きることは、いばらの道でもあり、

    僕だけでなく、他人も傷つけていくこともあると思う。

    それでもありのままの僕で、どこまで行けるか試してみたい。

     

     

    まさに瞬きするような、一瞬の出来事だった。

    気づいた時には、僕のカケラを探していた過去が、はるか遠い出来事のように感じた。

    僕のカケラを呼び求める僕の声が、僕自身にこだまして返って来た。

    そして僕は僕のカケラを、自分の中に見つけた。

    僕の声が聴こえるかい?僕はここにいるよ!

     

    さようなら、今までの僕。僕は自分の足で歩いてみるよ。

    そう、僕は僕のままでいいんだ。

    僕のままで行けるところまで行ってみようと思うんだ。

    ああ。僕は自分の気持ちに正直に生きてみるよ。

    ありのままの僕のまま、どこまでも進んでいけるだろう。

    僕の内なる声に導かれて。

     

     

    個人的には、スピッツの歌に登場する「君」などの二人称は

    恋人とか憧れの人とかそういうありふれた対象ではなく、

    ほとんど例外なく、無生物*7か、あるいはもっと突っ込んで、

    物ですらない概念的なもの*8ではないかと半ば確信的に思っているのだ。

     

    だからいつも、こんな解釈になる。

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    代わる代わる覗いた穴

    望遠鏡や、顕微鏡のようなものだろうか。

    ごく1点だけをのぞき込む穴。当然視野は狭い。

     

     

    さよなら 君の声を抱いて歩いてゆく

    この「さよなら」をどう解釈するかで、

    歌の意味がガラッと変わってくる。

    君の声=サヨナラ ととると、君の別れの言葉を背負って生きていく、

    という意味合いになってしまい、ともすれば

    亡き人の遺志を汲んで生きていく、という解釈になる。

     

     

    風が吹いて飛ばされそうな 軽いタマシイ

    これこそそのままの意味のはずだ。吹けば飛ぶような=取るに足らない、卑小なもののこと。

    たましい=気質、気概、ポリシー、主義主張、そんなような意味合い。

    武士の魂とか、三つ子の魂とか、それと同じ用法。

    つまりは、大した主義もない、というような意味。

     

    タマシイを、霊魂とか、御霊みたまとか

    そういう風にとらえるとおかしな方向に解釈してしまう。

    それはそれでアリ、なんだけど。

     

     

     

     

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    脚注

    *1:僅かに、季節の「季」の字にノギ偏が存在するだけだ

    *2:カナダの国旗は楓の葉をモチーフにしているくらい、楓はカナダの象徴である

    *3:メイプルシロップは、楓の樹液を煮詰めたシロップ。

    *4:将棋やオセロなどのゲームで、隙を相手身にせて罠にかける手法のこと。

    *5:シングルレコードは両面記録媒体のため、オモテ面とウラ面にはそれぞれ別の曲が1曲ずつ入っているのが慣例だった。メインとなるオモテ面の曲を「A面」といい、おまけ扱いのウラ面の曲を「B面」といった。まれに両面ともメイン扱いで「両A面」と呼ばれる組み合わせのシングルも作られた。ちなみに、レコードの後継メディアの名称が「CD」になったのは、A面B面に続くメディアだからと洒落っ気の意味も含めて名付けられたとかなかったとか(たぶんない)。

    *6:スピカはおとめ座にある1等星。尖った槍など穂先の意味で、サッカーシューズなどについている「スパイク」と語源が同じだとか。

    *7:無生物のものとは、例えば「学校に古くからある樹木」とか、「机の上のハサミ」とか、「溶けかけたアイスキャンディー」だとか、そういった物。

    *8:概念的なものとは、例えば「信じる気持ち」「手に入れた自由」「終わりかけの秋」など、そういった概念や事象。