「♪死んだハズだよ お富さん」
元ネタは歌舞伎*1らしい、と知ったのは最近のこと。
人の女に手を出したチンピラが、女ともども半殺しの目にあって、
自分だけ生き延びていたと思っていた。
しばらくのち、
当の女は誰かに囲われていていい暮らしをしていたことを知り、
てめえだけがいい目見やがって、と男は女をユスりにかかる。
そんな話らしい。
歌の歌詞も確かにそうなっている。
・・・マジ?
ところが、
どういうわけか、
そんなヤクザなドロドロした歌詞に、
何を思ったか、こんな
「 ♪パ パン が パン」ってな調子の手拍子をあしらった
軽快な曲を乗せてしまったものだからさあ大変。
元が歌舞伎なせいで、小難しい意味不明な言葉が多く、
それを聞き流して、わかる部分だけをつなげていくと
こんな物語が出来上がってしまう
お富サン Re:Birth(黄泉返り) が 突如出現、
これにはお釈迦様もびっくりだ。
過ぎた昔(死んだこと?)を、恨んだり、愚痴ったり。
まあまあ とりあえず飲みなよ。お富サン。
何だか話が弾んじゃって
夜が明けたら ついてくるんだけど・・・
どうしたものかね お富サン。
・・・主人公、取り憑かれたのか?
軽快な音楽と、勘違いから生まれた「不条理さ」のギャップから
大ヒットした『お富さん』
今後も聴いた人たちを、次々と煙に巻いていくのだろう。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
リズムに乗って「♪おットミ さん~」とは歌わずに
「♪おトォーミ さん~」、
のように2音目を前のめりに歌っているところが非常に高ポイント。
この効果で、単純になりがちなメロディーが転化して
聴きごたえのある曲になっている。気づいてた?
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「粋な黒塀 見越しの松に」
漢字で書けば解説はほとんどいらない。しゃれた黒い塀越しに見える、松の木のそばに の意。
「源氏店」
地名。固有名詞なので特にこれ自体に意味を求める必要はない*2。「店」を「たな」と読むのは、今でも大店などの言葉に残っている。
「切られの与三」
主人公のあだ名。本名与三郎。半殺しの目にあい、傷だらけの迫力のある姿になったため、ハッタリのきいた(切られ、というのは不名誉な名のような気もするが)なあだ名を得た。
「これで一分じゃ」
ここでいう一分はお金のこと。当時の貨幣単位で、一文、一分、一両などがある。一文無しとか、千両役者とか、ほかの単位は今でも言葉として残っているが、「分」は、今では五分五分のように、割合のほうの単位しか残っていないのでピンと来ない。
現代の感覚の設定に置き換えると、お富さんは1万円札を差し出して、昔の男に帰ってもらうように仕向けたが、主人公は「これっぽっちじゃ帰れねえな」と言っているわけ。
現在入手可能な収録CD/視聴可能