フランク永井による、ダンディーな低音の響きと
松尾和子の、色っぽく艶やかでかすれ気味の声による
掛け合いデュエット。
じれったいまでに、タメのきいた伴奏と
これまた演奏以上にじれったい、二人のオトナな会話。
それをひと言でいうなら、ムーディ。
ナイトクラブ、とはいうものの、おそらくダンスホールのような場所なのだろう。
そこを舞台とした、大人の恋の駆け引きを歌った曲だが、
それにしても、まあ、軽薄なことよ。
以下2番の歌詞
(女)もう私、欲しくはないのね
(男)とても可愛い、逢いたかった
(女)男は気まぐれ、その時きだけね
(男)うるさい男と、言われたくない
(女)どなたの好み、このタイは
(男)妬くのは、およしよ
(男女)東京・ナイト・クラブ
見事なまでに、話に内容が無い。
かつて、男女のデュエットソングといえば
『リンゴの唄』(並木路子、霧島昇/1945年/ by
)や、
『旅の夜風』(霧島昇・ミスコロムビア/1938年/ by
)
に代表されるように、
爽やかな男女の恋心を、1番が女性、2番が男性(あるいはその逆)、
最後に男女のユニゾンと、ワンコーラスずつ交代持ち回りで
ともに歌う曲が主流だったように思う。
ところがこの曲あたりを契機として、以降、
ワンフレーズ交代で男女が歌う”掛け合い”の方式が主流になり、
男女一緒に歌う場面では、ユニゾンではなくハモる*1ことも多くなった。
そしてのちの『男と女のラブゲーム』(葵司郎&日野美歌/1986年/ by
)
などの軽めのデュエットへの系譜に繋がる、
傍目でみるとかなりどーでもいい駆け引きが見もの。
大人の──決して本気ではない──男女の、
遊びを見事に(?)描いている。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
「♪東京・ナイト・クラブ」
たったこれだけの文字数を、このゆったりしたテンポの中、
まるまる4小節かけて歌いきる。
しかも、ほとんど音を伸ばさずに、一音、一音、丁寧に。
なんだこりゃ。
これが大人の恋というものなのか!
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
ナイトクラブ
法律の定義上でいえば、ナイトクラブは男女問わずダンスなどで遊べる場所で、そこに飲食を供するものとされる。
本文中では、「ダンスホール」の語を用いて説明したが、これは法律上は飲食を供しない場所なので、
厳密にいえばナイトクラブのほうが正しい。
なお、店側が用意したの女性と遊ぶのは法律上はナイトクラブではなく、キャバレーの類になる。
帰ろうとする男に「♪そんなの嫌よラストまで踊っていたいの」と引き留めているのをみると、
表題曲の相手女性が実は店の女の子である可能性は捨てきれない。
するってぇと、ここはナイトクラブではなくキャバレーということになる。
男女の掛け合い会話以上に意味のない、店の分類の定義議論がこうやって進んでいく。
実態の線引きは非常にあいまいで、イメージで言った方が明確な場合も多く、厳密に分けることは特に客側にしてみればあまり意味がない。
どなたの好み このタイは
「♪どなたの好み この会話」と聞き違えていた。なんと辛辣な!と思っていたのだが・・・
タイ(ネクタイ)、だったのね。
まあ、どっちにしてもドロドロだよな。