日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『ハイそれまでョ』 植木等 ~ 卓越した表現力はタチが悪い

柳の下にドジョウはウジャウジャといたようで、
前年の『スーダラ節』が、ヒットの勢いを得て映画化*1し、
さらにつづけての映画『ニッポン無責任時代』の主題歌(のひとつ)となったのがこれ。

つづけて、といっても実際は間にもう2作映画があるらしいが、
実際のところどれも歌以外はよく知らない。
歌ありきの作品、というのがよくわかる。

一応そのタイトルを発表順に挙げておくと、
『スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねぇ』
  (1962年3月公開。主題歌『スーダラ節』 by
『クレージーの花嫁と七人の仲間』
  (1962年4月公開)
『サラリーマンどんと節 気楽な稼業と来たもんだ』
  (1962年5月公開。主題歌『ドント節』 by
『ニッポン無責任時代
  (1962年7月公開。主題歌『無責任一代男』 by
なお、いわゆる「クレージー映画」と呼ばれるものは、
どういうわけか東宝配給の『ニッポン無責任時代』が1作目とされるため、
表題曲とカップリングの『無責任一代男』が、
初のクレージー映画のメインテーマ曲ということになっている。変なの。

ともかく、毎月のように新作映画が公開*2される勢いそのままに、
この曲で紅白歌合戦に出場となった。



シングルジャケット/駿河屋より
  • 作詞 青島幸男、作曲・編曲 萩原哲晶
  • 1962年(昭和37年)7月20日東芝音楽工業より発売
  • 歌詞はうたまっぷへ:ハイそれまでヨ ハナ肇とクレイジー・キャッツ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:無責任一代男 - Wikipedia


  • なんといっても注目すべきは、植木等の表現力。
    歌唱力、というよりは表現力というほうがしっくりくる。

    「♪あなただけが 生きがいなの・・・」
    サックスに導入される、フランク永井ばりの低音のムード歌謡からスタート。
    このあとに続く展開を考えると、かなりタチが悪い。


    「♪・・・てなこと言われてその気になってぇ↑」
    まくしたてるように早口におちゃらけ

    「♪退職金まで前借し 貢いだ挙句が!」
     畳みかけるように最高潮に達し、

    気合の抜けた脱力のキメ台詞。
     「♪ハイ、それまでョ~」

     「♪ふざけやがって この野郎!」
     怒りの歌唱と怒涛のブラスサウンドが畳みかける


    2番以降の歌詞がもう少し練られていれば、
    『スーダラ節』 のようにもっと後世まで知られただろうに*3惜しい。
    それを認識してかどうか、後に出たヒットメドレー
    『スーダラ伝説』(植木等/1990年/ by)では、1番と3番の歌詞を
    組み合わせて歌っている。


    グランドフィナーレは
    「♪泣けて くゥる~」
    泣きの歌唱で締めくくられる。


    ところで、この曲はクレージー・キャッツの曲なのか
    植木等の曲なのかがはっきりしない。
    アルバムではクレージー・キャッツ名義になっているものばかりだが、
    当時のシングルジャケットを見ると植木等名義になっている。

    どうしてかしら。
    どうでもいいのかしら。

    たぶん後者。


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    やはり植木等の歌唱に尽きる。
    ついつい、ニール・セダカ*4よろしく、語尾の声をひっくり返りつつ、
    七変化を繰り返す植木の歌唱が
    これでもかこれでもかと襲い掛かってくる。

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    金のなる木
    放っておいても次々と利益を生み出すものの例え。
    割合古い表現のようで、少なくとも江戸時代から使われている慣用表現のようだ。

    枝の節々にに5円玉を差して育て、あたかも金がなっているように見せる
    通称「金のなる木」、フチベニベンケイという多肉植物があるが、
    それのことではない。
    その金の生る木は、金が増えることはなく、
    5円玉を付けたら、やがて取れなくなって使えなくなるだけだ。


    三人前
    今更解説するまでもないが、ちょいと不思議な表現なので一応書いておく。
    ここでいう「前」とは「分」と同義で、三人分の量、という意味だ。

    独り立ちしたことを「一人前」「いっちょまえ(一丁前)」というが、
    人並みであることが一人前なので、人の3倍という意味でもある。

    書いていて、何を当たり前のことを、と思ってしまったが、
    「前」というのは不思議な表現だよなぁ。
    当たり「前」もそうだよな。


    現在入手可能な音源



    ライブはもう見ることができないので、映像をどうぞ


    www.youtube.com

    脚注

    *1:【映画化】この時代は、受けたものは何でも映画化された。現代──というかもうすでに過去の事象になっている──でいうと、何でもかんでもゲーム化されることに似ている。どうやら、その時代で一番ポピュラーなエンターテイメントに昇華されるのが流行というもののパターンらしい。なんでも映画化される風潮は、21世紀に入ってリバイバル傾向にあるが。

    *2:【毎月のように新作主演映画が公開】1962年にはそのあとも、『私と私』(8月)、『夢で逢いましょ』(9月)、『ニッポン無責任野郎』(12月)と、主演・助演作が公開されている。

    *3:【後世まで知られただろう】なんといっても、少なくともこの記事を書いた時点でwikipediaにもページがない

    *4:ニール・セダカ】『恋の片道切符(One Way Ticket)』(1960年。なぜか日本でのみヒット/ by)が有名。日本で「チューチュートレイン」という言葉が知られるきっかけになったと思われる。