これは果たして、歌なのだろうか。
草創期に散々物議をかもした「ラップ」のほうが、はるかに歌らしいではないか。
ラップミュージックには、メロディーラインはなくても、
リズムに乗った言葉がある時点で、はるかに歌であるといえる。
一方、表題曲ときたら、タイトルコールである
「♪港のヨーコヨコハマヨコスカ~」のコーラス部分以外には、
歌唱にメロディーラインも、リズムもない。
ただただセリフがあるだけだ。
ベースのリフ*1に乗って、
強面のニイちゃん、ネエちゃんの「証言」が延々と綴られていくだけだ。
主人公は、「ヨーコ」という水商売の女の足跡をたどって、
横浜、横須賀と港町を訪ね歩く。
1年前の、半年前の、3か月前、たった今まで、と順を追って着実に近づいていく。
そしてどこへ行っても、「ヨーコ」との関係を訊かれる。
「アンタ、あのコのなんなのさ」
うわーかっこええ。
なんだなんだ、何が起こってんだこれは。
同じようなセリフだけの曲『子供たちを責めないで』(伊武雅刀/1983年)の
かっこ悪さ*2とはえらい違いだ。
主人公(アンタ)と、ヨーコ(あの娘)のセリフや姿は
一切、曲に登場しないことに注目したい。
そもそも、あの娘が「ヨーコ」なのかどうかだって怪しいところだ。
消去法でイコール、ヨーコだと決めつけているだけなのだから。
考えようによっては、あの娘を追っている主人公こそが
「ヨーコ」だとしても決して辻褄があわないとは言いきれない。
同性の娘の消息を追う、主人公があんまり必死だから、
「あんた あのコに惚れてるね?」ってからかわれているだけってこともあり得る。
まあ、普通に考えれば、主人公は当然男で、
「港のヨーコ」なる水商売の女性を忘れられなくて、
消息を尋ねまわっている、というのが正しいのだろう。
たぶん、恋人でもなんでもない、店の従業員と客というだけの関係。
1年前に会ったっきりだというから、恋人の消息を尋ねているという線も薄い。
地域柄、主人公は船乗りか何かで、1年前に迎えに来る約束をしたとか、
そんなのかもしれない。
本名かどうかも知らない*3コを追いかけて、
しかも、遠くはないがそれほど近くもない横浜から横須賀まで
ほうぼうで脅しつけられながら、少なくとも店を4件も訪ね歩く主人公は
本当に、あのコの何なんだろう。
実は、本人も自分の気持ちがよくわかっていなかったりして。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
3番の後、間奏中にキーを上げて転調するが、なぜか歌いだすと元に戻している。
単調さを補うために転調したのだろうが、なんで戻すのか不明。
ただ単に歌いにくいのかもしれない。
曲は最後にどんどんキーを上げていって
波止場の効果音で終了する。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
ハマ
ほとんど説明不要ではあるが、横浜の略称。
下北沢を「シモキタ」と呼んだり、池袋を「ブクロ」と呼ぶのと同じノリだが、
全国的な浸透度がはるかに上だろう。
似た例として、大阪を「ナニワ」、長野を「シナノ」、和歌山を「キシュウ」と、
旧名称で呼ぶのも同じようなノリである。
仲間うちの言葉に言い換えることで、
業界用語のような特別感や、仲間意識をもたらすのに使われる。
外人相手
横須賀は、佐世保や岩国と並ぶ米海軍基地の街。
外人相手の水商売も多いのだろう。
現在入手可能な音源
やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
※該当曲を聴ける保証はありません。