日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』 / ダウン・タウン・ブギウギ・バンド ~ 果たして、歌である

これは果たして、歌なのだろうか。

草創期に散々物議をかもした「ラップ」のほうが、はるかに歌らしいではないか。
ラップミュージックには、メロディーラインはなくても、
リズムに乗った言葉がある時点で、はるかに歌であるといえる。


一方、表題曲ときたら、タイトルコールである
「♪港のヨーコヨコハマヨコスカ~」のコーラス部分以外には、
歌唱にメロディーラインも、リズムもない。
ただただセリフがあるだけだ。

ベースのリフ*1に乗って、
強面のニイちゃん、ネエちゃんの「証言」が延々と綴られていくだけだ。


主人公は、「ヨーコ」という水商売の女の足跡をたどって、
横浜、横須賀と港町を訪ね歩く。
1年前の、半年前の、3か月前、たった今まで、と順を追って着実に近づいていく。
そしてどこへ行っても、「ヨーコ」との関係を訊かれる。

「アンタ、あのコのなんなのさ」


うわーかっこええ。
なんだなんだ、何が起こってんだこれは。

同じようなセリフだけの曲『子供たちを責めないで』(伊武雅刀/1983年)の
かっこ悪さ*2はえらい違いだ。


主人公(アンタ)と、ヨーコ(あの娘)のセリフや姿は
一切、曲に登場しないことに注目したい。


そもそも、あの娘が「ヨーコ」なのかどうかだって怪しいところだ。
消去法でイコール、ヨーコだと決めつけているだけなのだから。

考えようによっては、あの娘を追っている主人公こそが
「ヨーコ」だとしても決して辻褄があわないとは言いきれない。
同性の娘の消息を追う、主人公があんまり必死だから、
「あんた あのコに惚れてるね?」ってからかわれているだけってこともあり得る。


まあ、普通に考えれば、主人公は当然男で、
「港のヨーコ」なる水商売の女性を忘れられなくて、
消息を尋ねまわっている、というのが正しいのだろう。

たぶん、恋人でもなんでもない、店の従業員と客というだけの関係。
1年前に会ったっきりだというから、恋人の消息を尋ねているという線も薄い。
地域柄、主人公は船乗りか何かで、1年前に迎えに来る約束をしたとか、
そんなのかもしれない。


本名かどうかも知らない*3コを追いかけて、
しかも、遠くはないがそれほど近くもない横浜から横須賀まで
ほうぼうで脅しつけられながら、少なくとも店を4件も訪ね歩く主人公は
本当に、あのコの何なんだろう。

実は、本人も自分の気持ちがよくわかっていなかったりして。



名曲・聴きドコロ★マニアックス

3番の後、間奏中にキーを上げて転調するが、なぜか歌いだすと元に戻している。
単調さを補うために転調したのだろうが、なんで戻すのか不明。

ただ単に歌いにくいのかもしれない。

曲は最後にどんどんキーを上げていって
波止場の効果音で終了する。


意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

ハマ
ほとんど説明不要ではあるが、横浜の略称。
下北沢を「シモキタ」と呼んだり、池袋を「ブクロ」と呼ぶのと同じノリだが、
全国的な浸透度がはるかに上だろう。
似た例として、大阪を「ナニワ」、長野を「シナノ」、和歌山を「キシュウ」と、
旧名称で呼ぶのも同じようなノリである。
仲間うちの言葉に言い換えることで、
業界用語のような特別感や、仲間意識をもたらすのに使われる。

外人相手
横須賀は、佐世保や岩国と並ぶ米海軍基地の街。
外人相手の水商売も多いのだろう。



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脚注

*1:【リフ】法則性のある音列を繰り返す伴奏

*2:【かっこ悪さ】わざとかっこ悪くしてるんだけどね

*3:【本名かどうかも知らない】普通、風俗店で店に出るときはいわゆる源氏名で出て、本名は出さないからね