日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『ペッパー警部』 ピンク・レディー ~ 一大ブームがもたらした集団免疫

時々びっくりするのだけれど、自分の記憶にある年代と、この稿を書くために調べて分かった年代に結構なギャップがあることが結構ある*1

『ペッパー警部』
幼少のころにテレビでさんざん見た記憶から、歌詞など事細かに覚えているのだと思っていたが、調べてみると年代的につじつまが合わない。
ピンクレディーが一大ブームを巻き起こした期間は意外と短く、1976年末から78年にかけての2年ちょっとの出来事だったようで、その後アメリカに進出したり、解散・結成を繰り返したりと以前のようには出ていなかったようで、そうなるとピンクレディー自体をリアルタイムでは見ていない可能性大だ。
テレビで「懐かしの映像」などを見ているうちに、その強烈なインパクトとともに刷り込まれてしまったものなのだと思われる。


wikipediaの記述を見て、そうそう、曲の最後「ペッパー警部よッ! ♪ジャンジャンジャンジャン!」って終わってたよなー、でもレコードにはこの部分ないんだよなー、と幼少の頃の記憶が呼び起されたと思ったのも、まがい物の記憶だったらしい。
じゃあ、ドリフのコントで見た、浮浪者たちによる拾い物のオークション大会にて、出品される品をピンクレディーが「♪ビールの飲み残しよッ!」って感じに紹介し、続けて司会のいかりや長介が「ハイ! ♪ジャンジャンジャンジャン」とやってたのを見て爆笑したのも、リアルタイムではなかったってことか。


小さい頃は、リアルタイム映像とそうでないものどころか、事実も虚構も何もかも区別せずにすべてを今目の前にある現実として受け止めてしまう。
それでもなぜか、練習したわけでもないのに、「♪ペッパー」と、親指と人差し指を正面から頭上にかざして「♪ケーブッ」と、顔の横で指で作った拳銃を構えるしぐさは 下手くそながら見よう見まねでできるものと思う。

どこで覚えたのかは知らないが、幼少期の刷り込みとは、かくも恐ろしいものだ。

それにしても表題曲は、子どもから見れば、ただただ明るく楽しい。
深く意味を考えることもなく、真似したくなる魅力にあふれている。

ペッパー警部[ピンク・レディー][EP盤] シングルジャケット/amazonより
  • 作詞 阿久悠、作曲・編曲 都倉俊一
  • 1976年(昭和51年)8月25日、ビクターレコードより発売
  • オリコン最高位4位(年間14位/1977年)
  • 歌詞は歌ネットへ:ピンク・レディー ペッパー警部 歌詞 - 歌ネット
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:ペッパー警部 - Wikipedia


  • サウンド自体はアップテンポの、ダンスミュージックのはしりみたいな感じになっている。
    バスドラムを連打するイントロ、攻撃的なハーモニーと、アニメ「タイムボカン」のエンディングテーマ『それゆけガイコッツ』(ロイヤルナイツ/1975年/)を想起させるような癖のあるベースライン*2を擁するサビ、不穏な空気を醸し出す「♪その時なの・・・」で始まるBメロなどなど、アイドル的な可愛らしさやお色気路線ではなく、インパクトの強さを全面的に出したサウンドになっている。

    それはタイトルにもよく表れていて、「ペッパー警部」というワード自体が破裂音と長音のみで構成されているという、インパクトのある言葉がチョイスされている。
    創作上の固有名詞とはいえ、何の脈絡も意味もない言葉で、言葉の「響きの強さ」だけで採用されたんじゃないかとさえ思える。

    そういった意味では、タイトルは別に「ジャッカーチョップ」や「脱藩勝負」などでもよかったはずだ。
    どちらもまったくもって意味不明だが、それを言うのであればペッパー警部も大差ない。
    阿久悠であればそんな、プロレス技とおぼしき物語でも、お家騒動のようなテーマでもしっかり料理したに違いない。それが売れたかどうかは別として。



    コスチュームの見た目とコンビ名のせいか、当時の良識ある方々にはいやらしく破廉恥なものに見えてしまった*3らしいけど、どちらかといえば、それは受け止める側の問題だと思う。
    表題曲の歌詞を見ると思わせぶりなだけで、直接的な言葉が並んでいるわけじゃない。
    サイケデリック*4な薬物の影響をいくらか感じる歌詞ではあるが、「あえて」派手に見せるためにやっている感の方が強い。
    露出多めの衣装にしたところで、今見ればお色気よりも健康的な印象の方がずっと強い。だってテニスウェアとかのスポーツウェアだもの。これ。
    『UFO』(1977年/)の衣装に至っては、奇抜さのほうが前面に立って色気なんかどこかへ吹き飛んでいるじゃない。


    強烈なインパクトを武器に、社会現象的なブームを伴ってお茶の間を賑わせたピンクレディーの存在は、世間にある種の集団免疫をもたらしたんじゃないかと思う。
    芸能界に限らず、この後の時代に登場する数々の「奇抜さ」が社会に受け入れられる素地をつくった───といえば言い過ぎかもしれないけども。


    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「ペッパー警部」
    本文でもふれたように、これにおそらく深い意味はない。
    『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(ビートルズ/1967年/)の「ペパー軍曹」との関連性も指摘されるが、あまり関係ない気がする。
    ただ、後にピンクレディーがアメリカに進出した際には『Sergeant Pepper』という名前で英語バージョンが作られている。これはかなりビートルズを意識的なものだろう。
    英語バージョンでは「♪Sergeant Pepper」と歌っていてかなり違和感がある。語順がおかしくても「♪Pepper Sergeant」と歌ったほうがよかったものと思う。


    「その時なの もしもし君たち帰りなさいと」
    「その時」とは、歌詞を見れば「たそがれ時」。
    日が沈んで間もない時間帯に、「そろそろ帰りなさい」と言われているところを見ると、「わたしたち」は結構なガキんちょなのだと思われる。
    恍惚の世界でイチャイチャしている風な描写が見られるけど、刺激的な言葉の装飾に惑わされているだけで、実際のところ囁きあってるだけだし。
    2度目の「その時」は、星の出る頃。
    もう一度たしなめられてそこでおしまい。声を掛けられただけで現実に戻れるくらいなので、たいしたことはしていないものと思う。

    なお、警部の名前(あだ名?)を知っているところを見ると、顔見知りなのだろう。



    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ ピンク・レディー
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    ▼ 増田惠子
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    ▼ 未唯
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:【あることが結構ある】変な響きだな。あることがある。

    *2:【癖のあるベースライン】ペッパー警部からのパクリかと思っていたが、年代的にガイコッツのほうが前らしい。こういうのもちゃんち調べてからものを言わないといけないことがよくわかる

    *3:【破廉恥なものに見えてしまった】テレビ局側も、当初はお色気・チラリズムを狙っていたように見えるが、その後は祭りの神輿的な扱いになっていったように見える

    *4:【サイケデリック】ドラッグによる幻覚などから生みだされた、極彩色なアートの世界