勇ましいタイトルや曲調と裏腹に、なんとも女々しい歌であることよ。
力強いピアノによるイントロ*1に導かれ登場する、ジュリーこと沢田研二*2のカッコよく歌いあげるストーリィはというと・・・
出ていく女をタヌキ寝入でやり過ごす男
女が出て行ってからむっくり起き上がり
遠く去りゆく女に向かって、窓越しに「アバヨ」と声をかける
しまいには夜中だというのに派手に音楽をかけて
朝までひとり残念会で現実逃避
・・・なんてカッコ悪いんだろう。
これが「♪カッコつけ」ているつもりで、「♪照れてただけ」だなんて、いったいどの口が言っているのだろう。
それでいて「♪戻る気になりゃいつでもおいでよ」と、強気なんだか弱気なんだかよくわからない。
とにかく未練たらたらなことが見ていて痛々しい。
男衆の別れ歌は、終わった恋をいつまでも嘆き続ける女々しいものが妙に多いような気がする。
「♪あのとき同じ花を見て美しいといった二人の 心と心がもう通わない
あの素晴らしい愛をもう一度」
『あの素晴しい愛をもう一度』(加藤和彦と北山修/1971年/
)
「♪そして二年の月日が流れ去り
街でベージュのコートを見かけると 指にルビーの指輪を探すのさ」
『ルビーの指環』(寺尾聰/1981年/)
「♪最後のコインに祈りを込めて Midnight DJ
ダイヤル回す あの娘に伝えて まだ好きだよと」
『涙のリクエスト』(チェッカーズ/1984年/)
「♪君をつくるすべての要素を愛してたのに
心変わりを責めても君は戻らない」
『Over』(Mr.Children/1994年/)
いっぽう、同じ未練がましいものでも、女の未練は時によっては狂気じみたものにさえなる。
「♪着てはもらえぬセーターを 涙こらえて編んでます」
『北の宿から』(都はるみ/1975年/)
「♪たとえあなたが背中を向けても いつも私はあなたを遠くで見つめている」
『聖女たちのララバイ』(岩崎宏美/1982年/)
「♪誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」
『天城越え』(石川さゆり/1986年/)
怖い怖い。
「♪みちに倒れて誰かの名を 呼び続けたことはありますか」
『わかれうた』(中島みゆき/1977年/)
もうちびりそうなくらい怖い。
男の未練は、相手からするととっくに終わっているようなもの、取り返しのつかないものを思い返しては嘆き悲しむばかりで、もう女々しいったらありゃしない。
そもそも「女々しい」という言葉自体が男に使う言葉だからかな。しょうがないか。
それにしても、変に強がってカッコつけてる分、表題曲のカッコ悪さが悪目立ちしている。
だけどジュリーが歌うだけで、なんでこんなにカッコよくなるのだろう。
ずるいというやつだ。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
曲の最後、8小節にも及ぶメロディーに、あえて歌詞をつけないという技法が用いられている。
「♪アアア アアア アアアアーア アアア アアア アアア アアアアー」
文字で書くと非常に変。
「♪るーるーるるるー るーるーるるるー るーるーるるるー るるるーるーるー」の
『夜明けのスキャット』(由紀さおり/1969年/)や
「♪ウララ ウララ ウラウララ ウララ ウララ ウラウララ」の
『狙い撃ち』(山本リンダ/1973年/)や
「♪シャララーラ シャラララーラ、シャララーラ シャラララーラ」の
『日曜日よりの使者』(The High Lows/2004年/*3)
なんかも似たようなものだが、実は根本的なところで違っている。
これらでは曲の後半で、同じフレーズに普通に歌詞が付けられているのだ。
「♪愛し合う その時に この世は止まるの…」
「♪見ててご覧 この私、今に乗るわ 玉の輿…」
「♪テキトーな 嘘をついて その場を 切り抜けて…」
けれども、表題曲では、おなじフレーズに歌詞が付くことがない。
これは意外に勇気がいるものだと思う。せっかくあるフレーズに意味のある言葉をのせる誘惑に勝つ勇気だ。
同様に誘惑に打ち勝った曲は、大黒摩季の『ら・ら・ら』 (1995年/)くらいしか思い浮かばない。
(もちろんスキャットだけの曲は除いての話)
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「勝手にしやがれ」
この言葉は歌詞には登場しない。
元はフランス映画のタイトルというが、もちろんそれは邦題*4だろう。日本人の誰かがつけたものだろうが、勇ましい響きが良いからか、その後あちこちでパクられ続けている。
そしてしばしば、雰囲気だけで内容とは関係なかったりするタイトルとして用いられる。
「寝たふりしてる間に」
「ネタふりしてるマギー」と聞こえるがそれは間違い。(あたりまえ)
「この横縞のハンカチの模様が変わったらびっくりするじゃない?」と喋るマギー司郎*5の姿が目に浮かぶ。
現在入手可能な音源
やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
※該当曲を聴ける保証はありません。
脚注
*1:【力強いピアノによるイントロ】大変印象的なフレーズだと思っていたら、演奏しているのは羽田健太郎だという。名のある人は名前を出さなくても目立つものだ
*2:【ジュリーこと沢田研二】ジュリーはタイガース時代の沢田研二の愛称。この人だけはソロ転向後もずっとグループサウンズ時代の愛称を引きずっている。同じグループでも今じゃ誰も岸部一徳のことを「サリー」とは呼ばないし、別グループだが、谷村新司を「チンペイ」とは呼ばない、あるいは呼ばせていない
*3:【日曜日よりの使者】あ、20世紀の曲じゃないや
*4:【邦題】日本語のタイトルをつけたもの。直訳ではなく意訳が多い
*5:【「この横縞のハンカチの模様が変わったらびっくりするじゃない?」と喋るマギー司郎】マジシャンであるマギー司郎のつかみネタの一つ。横じまのハンカチをくしゃくしゃと丸めて、広げたときには縦じまのハンカチになる、というマジック。もちろんそのあとにはちゃんと違う模様のハンカチに変えてくれるが、ときにはそのまま次のネタに行くこともある。
![勝手にしやがれ[沢田研二][EP盤] 勝手にしやがれ[沢田研二][EP盤]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Z1+2FgR4L._SL500_.jpg)

