日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『異邦人』 久保田早紀 ~ タマゴが先か、ニワトリが先か。(いや、クボタサキだ)

ほんのつま先ほどの、

何とも表現できない違和感があった。

 

サブタイトルに「シルクロードのテーマ」と

ついていたことを知ってからだと思う。

 

そのとおりイントロからの演奏は実に中東的だ。

 

終始演奏を引っ張っているストリングスもそれっぽいし、

ズンチャカチャッチャ、ズンチャカチャッチャ、というリズムや、

メロディーを追いかけて補完するようなクラリネットの旋律、

寂しげに掻き鳴るペルシャの琴*1などが

エキゾチックにいろどりを添えている。

 

 

だのに、自分がこの曲に対して

元々おぼろげに持っていた印象は

そんなエキゾチックなものではなかった。

 

似たようなテイストを持つ、

中森明菜の『Sand Beige』( by)や

『ミ・アモーレ』( by/どちらも1985年)なんかだと、

メロディーからしてエキゾチックな感じがする。

 

一方、『異邦人』は、鼻歌なんかではエキゾチックな雰囲気が出にくい。

メロディー自体が全然それっぽくないからだろう。

CDで聴いてみて、ああ確かに

エキゾチックな曲なんだだな、と初めて感じたくらいだ。

 

リアルタイムで知ったような人には、わかりにくい感覚かもしれない。

CMソングとして使用されていたときには、

中東の映像とともに使われていたそうだから。

映像の力は大きい。

 

異邦人 [EPレコード 7inch] シングルジャケット/amazonより
異邦人

異邦人

  • 久保田 早紀
  • J-Pop
  • ¥250
 
  • 作詞・作曲 久保田早紀、編曲 萩田光雄
  • 1979年(昭和54年)10月1日、CBSソニーより発売
  • オリコン最高位1位(年間2位/1980年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:異邦人 久保田早紀 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:異邦人 -シルクロードのテーマ- - Wikipedia
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    しかし、あいにく

    自分はリアルタイムの映像は知らない。

     

     

    このエキゾチックテイストが、

    山口百恵らのプロデューサーとして名高い酒井政利によって、

    あとづけで付けられたものだと知り*2

    ああ、それでか、と違和感の正体に感づいたつもりでいた。

     

    1番の歌詞にはそれほどシルクロードの雰囲気はない。

    失恋して、初めて自分が子供だったことを知った、という内容で、

    ある種よくあるパターンだ。

     

    2番はまるっきりシルクロード中央アジアの雑踏を描写している。

    内容の落差が激しいと感じるのは気のせいだろうか。

     

    2番の歌詞はアレンジが決まった後で、まったく変更されたものではないか、

    1番の歌詞もわずかしか原形をとどめていないのではないか、

    印象的な「異邦人」という言葉すらも後づけではないか、

    といろいろ勘ぐってしまう。

     

     

    では酒井は、失恋ソングに何の脈絡もなく

    後付けでシルクロードのイメージを埋め込み、

    原形がなくなるほど変更してしまったのだろうか。

     

     

    ここからは全くの推測に過ぎないが、

    「異邦人」という歌詞は元々のオリジナルの

    久保田の歌詞に既にあったのではないかと思う。

     

    住んでいる世界が違った人、のことを

    異邦人(元々はカミュの小説の邦題)という言葉で

    表現したのではないだろうか。

     

     

    その「異邦人」という言葉から酒井が喚起したイメージが

    シルクロードだった、のではないかと思うが、

    いかに。

     

     

    はたして出来上がった曲は、素晴らしいものになった。

    経過はどうあれ結果として

    文句のつけようがないのは事実。

     

    横からピーチクパーチクどうでもいいことをつついている

    自分のような輩が一番つまらないということは解っているのだ。

     

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    「ハンマード・ダルシマー」という楽器らしいが、

    大正琴にエコーを効かせたような響きの楽器が、

    実にエキゾチックな効果を与えている。

     

    ・・・というか、このエキゾチックな音を

    大正琴になぞらえている時点で台無しだ。いけねぇ。

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「空と大地が触れ合う彼方」

    地平線のことだね。こういう詩的な表現ができる人になりたい。

     

    「異邦人」

    「邦」の字は人名でしばしば「くに」と読まれるように「国」とほぼ同じ。

    要するに異邦人は異国人のこと。

    逆に、日本から見た邦人=日本人のことなのは感覚的にわかると思う。

     

    ただの通りすがりである私が=異邦人、

    ということは、この物語の主人公は今現在

    異国を旅している(あるいは何らかの目的で滞在する)ことがわかる。

    彼はそんな異邦人である「私」に対して、

    ちょっと興味を持っただけだったのだろう。

     

    「時間旅行」

    もちろん、タイムスリップしているわけではない。

    古き時代を思わせる街で、歴史に思いを馳せることで

    不思議と傷心が癒されていく、というようなことだろう。

    旅行者や研究者だったのなら、こちらが本来の目的だったのだろうから。

     

     

    現在入手可能な収録CD/視聴可能
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。

     

     

     

    脚注

    *1:ダルシマー」というらしい

    *2:名アレンジャーの萩田光雄の発案かもしれないけど