日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『ロビンソン』 スピッツ ~ 他力本願そのもの。メルヘン主導の雰囲気先行曲

日本の流行歌史上、大きな位置を占めるこの名曲は
「君」を何と解釈するかによって、歌詞の意味が大きく変わってくる。

そもそもが全体に抽象的で、暗喩のようなキーワードばかりで
具体的に何を言っているのかさっぱりわからないのだから、
それは当然のなりゆきともいえる。


普通にラブソングとして考えれば、
「君」は手の届かない女性と捉えることができる。

しかしいや待て。草野マサムネによるスピッツの歌詞の世界は
かなりメルヘンの世界に通じているフシがあるので
「君」といっても、必ずしも人とは限らない。
擬人化された物や現象であることも大いにあり得る。


ここはひとつ、自分自身の夢や希望、理想を
「君」と擬人化したと解釈してみよう。

「ふたり」という表現に違和感を覚えるかもしれないが、
『Face』(globe/1997年/ by)の
「♪鏡に映った あなたと二人 情けないようで 逞しくもある」の類似形と考えればよい。
現実の自分と、虚構(理想)の自分のふたりの物語と。


ロビンソン シングルジャケット/amazonより
ロビンソン

ロビンソン

 
  • 作詞・作曲 草野マサムネ、編曲 笹路正徳
  • 1995年(平成7年)4月5日、ポリドールレコードより発売
  • オリコン最高位4位(年間9位/1995年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:ロビンソン スピッツ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:ロビンソン (曲) - Wikipedia

  • それでは全文日本語訳行ってみよう。


    夢と希望を抱いて始まった新生活。
    だけど、なぜか早くも物憂げな気分に陥ってしまっていた。
    思い描いていた自分自身を必死で追いかけるんだけど、
    どうもうまくいかない。

    みんなといるときは、思い出話や過去の経験を
    少し誇張を混ぜながら、得意げに話してみせているけれど、
    正直、無理していると自分でも感じる。
    自分以外のみんなは、輝いて見えて憂鬱だ。

    決まり文句のように、誰もが思い描くような理想の姿を
    いつしか自分自身の目標として作り上げてしまっていたんだろう。

    自分のことは自分でしか決められないのに、
    そんな理想の自分を、つかんで離さないように必死で追いかけていた。
    そして何か幸運が舞い込めば、なんて夢物語を思い描いていた。


    片隅に捨てられて、それでも生きている捨て猫を拾った。
    現実の自分を見ているようで、思わず抱きしめてしまった。

    いつも通りかかる交差点で、思わずふと夜空を見上げて考えてみた。
    理想とする人生の先は、あまり輝いていないような気がしてきた。
    それは満月なんかではなく、三日月とも言えないような
    心細い、細長い月なんじゃないか。

    理想の自分に向かってストップをかけてみた。
    自分自身戸惑っている。
    だけど他人の考えるような理想の姿を追うのはやめて
    変わってみようと思うんだ。


    自分のことは自分でしか決められない。
    きまったゴールなんてないから、迷いながら進んでいく。
    だけど相変わらず、いつ幸運をつかむことができたら、
    なんて夢物語を思い描いている。

    幸運をつかむことができたら、なんて夢物語を思い描いている。



    なんだか、時の流れが背中を押してくれることを願っている
    他力本願の歌になってしまった。


    だけど、結構みんなそうなんだよね。



    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    スピッツの曲は、田村アキヒロによる手数*1が多めのベースが
    自分的にどストライク。
    『渚』(1996年/ by)、
    涙がキラリ☆』(1995年/ by)などで
    歌いまくるベースを堪能することができる。

    『ロビンソン』ではベースが抑え気味のミックス*2になっているためあまり目立たないが、
    もっとベースを前面に出してくれれば、もっと締まったんじゃないかなと思う。
    余計なお世話か。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    ロビンソン
    特にこのタイトルに意味はないらしい。タイの百貨店名から付けたとか。
    コードネームのようなものか。歌詞中に類する語すら登場せず。

    おかげでこの曲、タイトルを聞いてもすぐに曲に結びつかない。
    『チェリー』(1996年/ by)も同じ。
    ノリと雰囲気だけでタイトルをつけないでほしいと願う。
    これも余計なお世話。


    誰も触れない二人だけの国
    「君の手を離さぬように」「大きな力で空に浮かべたら」のキーワードから
    映画「天空の城ラピュタ」のようなイメージを思い浮かべてしまうが、
    この直前の歌詞に、ありふれた言葉の魔法で作り上げた、とあることから
    これは虚構の世界だということがわかる。
    二人だけの世界に閉じこもっている、というわけでもなさそうだ。



    ここまで書いてふと思い出したが、
    「もっとしっかり歌え、ってツッコみたくなって好きになれない」
    友人の『ロビンソン』を評する一言に、
    なるほどそういう考えもあるのだなと、当時感じたことを思い出した。

    この曲が嫌いな人間なんか、居ないんじゃないか、
    いたとしても「メタル以外音楽として認めない」というような
    偏屈さんくらいだろうと思っていたので、大変印象に残っている。


    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    ハチミツ

    ハチミツ

    • アーティスト:スピッツ
    • 発売日: 2002/10/16
    • メディア: CD
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ スピッツ
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。



    脚注

    *1:【手数】てすう、ではなく、てかず、と読む。ボクシングのパンチ数からきた言葉だと思うが、音を出す回数が多い演奏をこう表現する

    *2:【ミックス】録音の際に、各々のマイクで拾った音に対して、音量バランスをとること