日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『帰って来たヨッパライ』 / ザ・フォーク・クルセイダーズ ~ 元ネタいくつ、みつけられるかな?

巡り合わせの妙というものだろう。栄えあるオリコンチャート史上初のミリオンセラーが、よりによってこんな…と言ったら失礼にあたるけど、表題曲だったりする。

初のミリオンセラー、といってもそれまで100万枚以上売れた曲が存在しなかったわけではない。オリコンが集計を開始した1968年以降で最初、というだけのことなのだけれども。

オリコンチャートの記念すべき第1回目の1位である『ラブユー東京』(1966年/黒沢明とロスプリモス/)は、集計開始以前にすでにミリオンセラーに優に達していたにもかかわらず、集計開始後だけみると100万枚に達しないため、オリコン史上初のミリオンという称号は逃してしまった。
そんな強運もあって、1967年のクリスマスという、オリコン集計開始直前の絶妙なタイミングで発売された表題曲が、オリコンチャートにおける栄えあるミリオンセラー第1号の名誉を獲得することになった。


それにしても、なんて幸先のいいスタートなんだだろう!
別に皮肉でもなんでもなく、表題曲が初のミリオンセラーという名誉を得たことが、エンターテイメントとしての音楽、もっとくだけた言い方をすれば、細かいことなんか抜きにして歌を楽しもう、という、まさに音楽の原点を象徴する出来事だったと思うからだ。

小難しい音楽もあれば、心にしみる音楽もある。
まるで騒音にしか聞こえない音楽から、あることにすら気づかないほどさりげない音楽もある。
そんな中、あぁ、音楽ってこういうのもアリなんだ、と日本中に気づかせた。
本人たちはいたって不真面目*1だったんだろうが、クリエーターたちの曲作りに対するアプローチに、無限ともいえる可能性を示した功績は測り知れない。


帰って来たヨッパライ/ソーラン節
シングルジャケット/amazonより
帰って来たヨッパライ

帰って来たヨッパライ

  • ザ・フォーク・クルセダーズ
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
 
  • 作詞 松山猛・北山修(ザ・フォーク・パロディ・ギャング)、作曲 加藤和彦、編曲 ザ・フォーク・クルセダーズ
  • 1967年(昭和42年)12月25日、東芝音楽工業より発売
  • オリコン最高位1位(年間2位/1968年)
  • 歌詞は歌ネットへ:ザ・フォーク・クルセダーズ 帰って来たヨッパライ 歌詞 - 歌ネット
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:帰って来たヨッパライ - Wikipedia


  • この曲の一番の特徴は、鬼太郎のおやじ(初代)の声を彷彿とさせる甲高いボーカルにある。
    曲を半分の速度に落として録音したボーカルを、元の速度(つまりは倍速)で再生したことによる、トリッキーな歌声だ

    だけどそれを聴いた、特に子どもにとっては倍速再生なんて編集テクニックを知るはずはない。
    『ドリフの早口ことば』(ザ・ドリフターズ/1980年/)の志村けんのパートもそうであったように、バカ真面目に声色を使って真似したものだ*2

    一方、通常スピードで録音された神様のパート、歌詞では、「怒鳴っている」ということになっているが、実際はすっとぼけたスローな説教。
    酔っぱらった頭の中で、ゆっくりと反響しているようにも聞こえてくる。



    それにしてもこの主人公、なんで天国に行けたんだろうね。
    よほど寛容な神様とみた。



    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    発売されたばかりのザ・ビートルズ『愛こそはすべて(All You Need Is Love)』()にでもインスパイアされたのだろう。(時系列としては、『All Need Is LOVE』の全世界生中継*3が1967年6月、日本でのレコード発売が8月、表題曲の録音が9月から10月にかけてとなる。)表題曲は様々な歌がコラージュのように散りばめられている。

    わかりやすいのが、「♪天国良いとこ一度はおいで」は、草津温泉の湯もみ歌『草津節』()の「♪草津よいとっこ 一度はァおいで」から来ている。
    そして曲の最後にベートーベンの『エリーゼのために』( )が流れてフェードアウトするあたりは、わかりやすく見つけやすいコラージュだと思う。

    細かいところでいうと、ラストの読経は途中から『ア・ハード・デイズ・ナイト』(ザ・ビートルズ/1964年/)の「♪It's been a hard day's night」の繰り返しになる所や、すっとぼけた神様のセリフのバックに流れる調子っぱずれの旋律が、運動会の徒競走でおなじみの『天国と地獄』( )になっているあたりは、なかなか気づけない*4ところだ。

    ほかに、間奏の電子ピアノは、これもビートルズの『Good Day Sunshine』(1966年/)が元ネタだとWikipediaには書いてあるけど、それに関してはどうだろうね。
    あれ自体はもともとジャズ系のオーソドックスなフレーズがモチーフだと思うから、違うような気がする。

    ところで、 It's Been a Hard Day's Night経に変化する前のお経、これの元ネタ(引用元)はいったい何なのだろう。
    メンバーで作曲を担当した加藤和彦は当時仏教系の大学に在籍していたらしいので、まったくのでたらめではないと思うのだけれど。



    蛇足だが、最初に挙げた『All You Need Is Love』の方にコラージュされている最大難度の曲は『Yesterday』(ザ・ビートルズ/1965年/)だと思われる。興味があったら探してみそ?

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「フォーク・クルセダーズ」
    Fork Crusaders。直訳すると民謡十字軍。
    民謡布教の尖兵といったところか。
    なんだかインテリなグループ名が、妙に曲にミスマッチ。
    クルセダーズなんだか、クルセイダーズなんだか、どちらが正しいのかもよくわからないし。


    現在入手可能な音源



    脚注

    *1:【いたって不真面目】真面目じゃなくて不真面目ね

    *2:【声色を使って真似したものだ】というより、いい年していまだに鬼太郎のおやじのような声でカラオケで歌ってしまう

    *3:【全世界生中継】初の地球規模の衛星中継生放送番組「アワ・ワールド」。14か国の放送局同士を結んで放送された中で、ビートルズの新曲録音風景が中継された。

    *4:【なかなか気づけない】スローすぎて言われるまで気づかなかった。これ、最初に気づいた人すごい。