日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『わかれうた』 中島みゆき ~ 私小説的な物語。お笑いの自虐ネタではありません。

ねぇよ!

反射的に突っ込みたくなるくらい強烈な、
そんな問いかけから歌はスタートする。

「♪みちに倒れて 誰かの名を 呼び続けたことは ありますか?」

すごいね、これ。
名作と呼ばれる小説の多くは、
その書き出しが最も印象的だったりするが
それらに勝るとも劣らぬ書き出しだ。


 ←【検聴合格】↑針飛び無しの安心レコード】1977年・並盤・中島みゆき「わかれうた・ホームにて 」【EP】 
シングルジャケット/amazonより
わかれうた

わかれうた

 
  • 作詞・作曲 中島みゆき、編曲 福井崚・吉野金次
  • 1977年(昭和52年)9月10日、キャニオンレコードより発売
  • オリコン最高位1位(年間10位/1978年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:わかれうた 中島みゆき 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:わかれうた - Wikipedia


  • しかもこいつは鉄板の自虐ネタときたもんだ。
    問いかけの裏には、自分にはあるぞ!!
    という主張がしっかり入っている。
    もう、これはどうあっても実話であってほしい。

    子どものころ、ダダこねて道端で泣き叫び
    親を呼んでました、えへ。
    なんてしょうもないオチに逃げないでほしいと願う。

    すごく痛いけど、同情されることすら拒絶するくらいの
    強烈なエピソードは、それだけで真実味を帯びてくる。
    それがたとえ作り話であったとしても。


    ついでだから、自分のマジ鉄板自虐ネタを披露してみよう。

    自分のリアル誕生日に ひとの誕生日会に呼ばれて
    行ったことが ありますか?
    俺にはあるぞ!!(どーん!)*1


    余談はともかくとして、
    この私小説*2的な歌詞も
    詩というよりは、文体的にも表現的にも小説に近い。

    冒頭の歌詞の漢字の振り方にしたって、
    みち」に倒れて誰かの名を・・・、と来たもんだ。

    道端に倒れこんで、立ち去っていく相手の名を
    姿が見えなくなるまで泣き叫び続けている状況、
    ではなく、
    途方に暮れて、気が動転してひとつのことしかできない、
    ただただ相手の名前を呼ぶことしかできない状況。

    どちらも、恥も外聞もない状況に変わりはないのだけれど
    たった一文字の違いだけで、前者の大いに芝居じみた感じではなく、
    後者の、もっと心象的な、内面的な情景を
    思い浮かべるに至る。


     唄い出しの一行だけで、ここまで書けたよ!


    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    こんな内容なのに、リズムは跳ねるような「♪ズンチャカチャッチャ」。
    それでいて単調な繰り返しのリズムに終始している。
    単調、というよりも淡々とした、といった方がいいかもしれない。

    そして『時代』(1975年/試聴/停止 byiTunesからダウンロード)の、
    取って付けたようなオープニングのように
    変にドラマチックにしていないあたりが、
    達観した冷めた感じを出していて、
    暗鬱な雰囲気の中に、どこかシニカル*3な響きを持たせている。


    というより、なんとなくだけど、
    ラテン風というか、アラビアン風というか
    そんなエキゾチックな雰囲気を持っているように聞こえない?

    もはや、頭の中で結びついてしまった
    歌詞とメロディーを分離することはできないけれど
    知らずに伴奏だけを聴いていたとすれば、
    寂しげな中に、どこかコミカルな感じを見出せたと思う。

    サイレント映画の伴奏曲のような。
    サーカスのちょっと寂しげな音楽のような。




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「他人事に言うほど 黄昏は 優しい人好しじゃ ありません」
    他人事のように、冒頭の問いかけを発してみたものの、
    黄昏(むなしさでやりきれない気持ちのことか?)は
    募るばかりで和らいでくれない。


    「あなたは憂いを 身に着けて 浮かれ街あたりで 名を挙げる」
    恋に破れた寂しげな雰囲気を身にまとい、
    歓楽街で、物憂げな感じを逆に目立たせている。
    そんなことで果たしてモテるのか? 不明。


    「誰が名付けたか 私には わかれうた歌いの 影がある」
     名付けたか、と言っていることから、
    この影というのは、「わかれうた歌い」というアダ名のことを指している。

    不名誉なアダ名が影のように身にまとわりついているのか、
    陰で付けられたアダ名なのか。どちらかだろう


    「♪恋の終わりは いつもいつも 立ち去るものだけが 美しい」
    「♪残されて 戸惑う者たちは 追いかけて 焦がれて 泣き狂う」
    滅びの美と、無残。
    同じことなのに、立場の違いで逆の結果になる。

    決して一方的にフラれた歌ではないのだと思う。
    「私の癖なのか」
    と歌っていることからも、
    お互いの心情のもつれからの結末なのだろう。

    捨て去ることができた者と、捨て去ることのできなかった者の違いか。



    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:しかも、その日はその人の本当の誕生日ではなく、集まるのに都合の良い日が選ばれた。
    ええ。もちろん言い出せませんでした。誰も言い出してもくれませんでした。
    結果として大変いいネタを仕入れることができました。

    *2:実体験をもとに赤裸々につづった(ような感じの)小説。たぶんに実話に基づいてはいるのだろうけど、もちろん話を盛りまくっているし、フィクションであることには違いない

    *3:皮肉な感じね