日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『名もなき詩』 Mr.Children ~ プライドを捨てきれていないのは、誰でもなく自分自身。

なんでこの歌には名前が無いんだろう。
そんな本質とは離れた、比較的どうでもいいことを深く考え始めると
本来悩まなくてよいはずのところで、思考はドツボにはまっていく。


名前がない状態というのには、いくつかパターンがあると思う。

ひとつは、まだ名前が付けられていない状態。
出生届を出す前の赤ん坊のような状態。
 『吾輩は猫である』の猫のような状態。
いつかは名付けられるのであろうが、未だ決定せず、の状態。

ひとつは、まだ名前を知らない状態。
「♪どこの誰かは知らないけれど、誰もがみんな知っている」月光仮面
(近藤よし子『月光仮面は誰でしょう』/1957年/ by)状態。
名乗るほどのモンじゃありません、と去っていったあの人など。
本当の名前はあるハズなんだけど、あいにく存じ上げず、の状態。

ひとつは、存在が未知なるもの。まだ見ぬ何か。
いつか現れる白馬に乗った王子様とか、未確認飛行物体とか。
または、新発見の彗星を追い求める天文学者の目指すものや
世界の根源や果てを突き詰めるの物理学者の求める真理など。
フロンティア精神に則って、鼻息も荒く、発見と名付け競争でもある。



だけどこの曲に名前がない本当の理由は、そのどれでもなくて、
その意味するところを端的に表す、「名前」を、言葉にするのが照れくさい、
カッコ悪い、あるいは、ためらわれる、認めたくない。
自尊心が邪魔をして名付けられない。
実際のところ、そんなつまらない理由だろう。

「♪妙なプライドは捨ててしまえばいい そこから始まるさ」
なんて言っている本人がこれだから。


名もなき詩
シングルジャケット/amazonより
名もなき詩

名もなき詩

 
  • 作詞・作曲 桜井和寿、編曲 小林武史 & Mr.Children
  • 1996年(平成8年)2月5日、トイズファクトリーより発売
  • オリコン最高位1位(年間1位/1996年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:名もなき詩 Mr.Children 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:名もなき詩 - Wikipedia


  • 恋人との些細な感情の行き違い
    それを取り繕うのに、照れくささまぎれに、カッコつけた言い回しで
    名もなき詩」と銘打ったごたくを並べていく。


    「♪ちょっとぐらいの汚れものならば残さず全部食べてやる」
    短所だって、すべて受け止めるぞと、器の広いところを見せてみたり、

    「♪君が僕を疑ってるんなら この喉を切ってくれてやる」
    自分の正統性と誠意をアピールしてみたり(ガキか)。
    こんなことで死なれたら相手が困るだけだが。



     だけど、
    「♪いらだつような街並みに立ったって」
    「♪不調和な暮らしの中でたまに情緒不安定になるんだろう」
    ああぁ、そんなんじゃまだまだ、彼女、不機嫌だよ。
    まわりに八つ当たり始めそうだよ。

    「♪自分らしさの檻の中でもがいているなら 僕だってそうなんだ」
    理想と現実のはざまで揺れ動いているのは、
    君だけじゃない、僕だってそうなんだと、共感と理解を示してみたり。
    もっとわかりやすい言葉で表現しないといけないと思うけどね。


    いろいろ言ってみたけど、最後に、
    「♪愛情っていう形のないもの 伝えるのはいつも困難だね
    だからダーリン、この名もなき詩をいつまでも君に捧ぐ」

    だからちゃんと名付けようよ。
    実はこれは、ごめんなさい、の歌なんだって。
    そうだねわかるよ、の歌なんだって。
    愛してる、の歌なんだって。
    名もなき詩、なんて変にカッコつけてないでさ。



    深読みしようと思えば
    いくらでも深読みできそうな歌詞だけど、
    そんな、はたから見れば、ほほえましい愛情表現の歌と思って聴けば、
    まったく、何とも人臭く、かわいげのある曲じゃないか!






    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    このころのMr.Childrenの曲は、
    歌詞やアレンジなどにThe Beatlesへの露骨なオマージュが
    あちこちに垣間見られ、その道の人々をニンマリとさせやがる。

    わかりやすいところでは、
    Tomorrow Never Knows』(1994年/Mr.Children by
    なんて、タイトルがまんま
    Tomorrow Never Knows』(1966年/The Beatles by
    だし、

    ちょっとわかりにくいところでは、
    『花-Memento-Mori-』(1996年/Mr.Children by
    では、大サビのリフ*1
    『Hey Bulldog』(1969年/The Beatles by)のリフが使われているし。


    表題曲『名もなき詩』についても、ご多聞に漏れず、明らかに
    『涙の乗車券(Ticket To Ride)』(1965年/The Beatles by
    を下敷きにしたリズムをベースに進行している。
    歌詞中の「Oh! Darling」は『Oh! Darling』(1969年/The Beatles by
    だというのは、、、いくらなんでも穿ちすぎだ。*2

    盛りだくさんなのが『Cross Road』(1993年/Mr.Children by)で、
    前出の『Ticket To Ride』に加え、
    『Long And Winding Road』(1970年/The Beatles by)、
    『Living In The Material World』(1973年/Geaoge Harrison*3 by )が
    歌詞に散りばめられている。

    今回も、だからどうしたという話でした。



    あ、そうそう忘れるところだった。
    もう一つ、表題曲は、大サビからの強引な戻り方がすごい。
    「♪自分の胸に突き刺さる」から
    「♪だけど」と力技で持っていったかと思うと、
    何事もなかったかのように「♪あるがままの心で・・」
    おお、良く戻って来たな、と感嘆の声を上げずにいられない。

    まあ、元々『Ticket To Ride』のリフからの
    サビに持っていく部分に強引さがある曲なので
    この強引さも許容範囲内に収まっているんだろうな。

    これもだからどうしたという話。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    ノータリン
     漢字交じりで書くと、脳足りん。
    脳みそが足りていないということ。

    不調和な生活くらし
    言葉通りにとれば、バランスの取れていない不釣り合いな暮らし、
    あるいは身分不相応な生活という意味合いになるが、
    ニュアンス的に言いかえると
    自分のやりたいこととかけ離れた生活、ということだろう。

    不調和にしても生活にしても
    なんでこんな言葉を当てはめたんだろうね。




    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    深海

    深海

    • アーティスト:Mr.Children
    • 発売日: 1996/06/24
    • メディア: CD

    【ベストアルバム】
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ Mr.Children
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。





    脚注

    *1:【リフ】平たく言えば、伴奏の奏でる旋律のこと

    *2:【いくらなんでも穿ちすぎ】こういうのを認めてしまうと、世界中のいろんな歌がロックバンド「yes」のオマージュになってしまう、といったような無理が生じる

    *3:ジョージ・ハリスンビートルズのギタリスト。個人的に最も好きな歌手なので、ここの稿にしょっちゅう出てくるけどご勘弁を。