日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『だれかが風の中で』 上條恒彦 ~ サムライは荒野にはいないんじゃないかなぁ

これがまさかの時代劇*1の主題歌だと知ったのは、
曲を知ってからずっと後のことで、
最初は、同名異曲だろうとしか思わなかった。
時代劇のイメージとはかけ離れているうえに、
いかにもでありがちな、カッコつけのタイトルだからね。

「♪雲は焼け 道は乾き 陽はいつまでも沈まない」
曲調と歌詞、歌声からイメージするのは
どこまでも乾ききった荒野であり、荒野をさすらう男の物語である。
おおよそ、この湿潤の四季の国の風景ではないと思う。

自分も、決して全国を見て回ったわけではない。が、
宗谷本線の夜行列車から眺めた、真夏の夜明けのサロベツ原野
--寝ぼけまなこに、鉄道がまるで高山をさまよっているような錯覚に陥った--も、
火砕流の痕が生々しい、雲仙普賢岳のすそ野の風景
--仮復旧まもない国道の周囲は、木々も景色もすべて灰色だった*2--も、
荒涼とした風景ではあるが、
寒々しい、という形容が当てはまっても
そこにはどこか雨や靄の気配があり、
暑く乾いた大地、というイメージは似つかわしくない。

北海道の十勝岳から美瑛岳への縦走途上で見た、
岩石砂漠のような溶岩質の砂利の道が唯一それに近い雰囲気を持っていたが、
まるで月面のように荒涼として
「暑さ」よりも「寒さ」を感じさせる景色であり、
そこにもどこか、しめりけの気配が感じられたものだ。

だれかが風の中で [EPレコード 7inch] シングルジャケット/amazonより
だれかが風の中で(フジテレビ系「木枯し紋次郎」より)

だれかが風の中で(フジテレビ系「木枯し紋次郎」より)

  • クロード・チアリ
  • ポップ
  • ¥150
これはクロード・チアリによるアカースティックカバー
  • 作詞 和田夏十、作曲 小室等、編曲 寺島尚彦
  • 1972年1月5日、キングレコードより発売
  • オリコン最高位8位(年間46位/1972年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:だれかが風の中で 上條恒彦 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:だれかが風の中で - Wikipedia

  • そう、この歌からは日本の景色ではなく、
    西部劇の舞台である、アメリカのグランドサークル一帯の景色や、
    映画スターウォーズの舞台ような世界を想像してしまうのだ。*3


    そしてどことなく、丸大ハンバーグのCMソング
    『丸大ハンバーグの唄』(ジミー時田)を連想してしまう自分がいる。
    「♪ハイリハイリフレハイリホー ハイリハイリフレッホッホー!(大きくなれよォ)」
    あぁ、これも舞台は日本ではない。*4



    「♪どこかで だれかが きっと待っていてくれる」
    これは要するに、まったくアテのない旅だ。
    場所も未定であれば、相手も未定である。
    あまりに漠然とし過ぎていて、たどり着くのに求められるのは運だけである。
    できることといえば、じっと待たずに彷徨いさすらうことのみで
    「♪あぁ 日本のどこかに私を待ってる人がいる」
    (『いい日旅立ち』(山口百恵 by)) 
    「♪愛する人と巡り合いたい どこか遠くへ行きたい」
    (『遠くへ行きたい』(ジェリー藤尾 by)) 
    のように旅することしかできない。


    つまりは、キーワードだけが合ってるんだよな。
    股旅の主人公と、木枯らし紋次郎というタイトルと。

    それにしても、ギャップがあり過ぎないか?




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    きっとお前は風の中で待っている
    ここでいう風は、そよ風とか順風とか春風とか、
    そういう心地よい風ではなく、
    向かい風、逆風、北風、といったつらい風であろう。
    自分と同じような境遇を持つ、つらさや痛みの中にいる仲間をさがす旅なのだろうか。


    泣くやつは誰だ この上何が欲しい
    これは、ナマハゲのように意気地のない奴を探しているのではなく、
    あくまで自分自身に対して問いかけている言葉だろう。
    俺よ、泣くな。俺よ、欲しがるな。

    あぁ、つらい歌だねえ。


    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:木枯らし紋次郎

    *2:1992年に修学旅行で訪れた。後から振り返れば1991年と1993年に発生した火砕流被害の小康期に訪れており、よくもまぁ学校側も島原行きを決行したよなと思う。当時時の人だったヒゲの島原市長がわざわざ旅館まで出迎えに来て、よくぞ来てくださいました、と挨拶していたのを覚えている。

    *3:よくよく考えれば、西部劇もスターウォーズも、源流の一つは日本のチャンバラ映画にあるので、まぁ、近からず遠からずなのかもしれない。

    *4:そういえば、この巨人のイメージと、小説『ハリー・ポッター』のハグリッドのイメージが重なっていたのは自分だけだろうか。映画はまともに見ていないので余計そうなのかも。