おそらく、何かのオムニバスCDに収録されていたものを
何の気も無くソングリストに加えていたのであろう。
これまで幾度となく玉石取り混ぜ聴いていたために、聴き知る曲となったが、
この稿を書くにあたって、はたと困ってしまった。
だれの歌う、なんて曲かわからない!
以前にも、車の中でこの曲に差し掛かったとき、
同乗者に「この歌なんて曲?」と聞かれることがたびたびあって
そのたびに、知らない。たぶん80年代くらいのアイドルの曲。
というような答え方をしていたと思う。
何度聴いても、どこかで聴いたことのあるような懐かしさを覚え、
そして何度聴いても、不思議と誰のなんという曲か調べようとは思わなかった。
聴いてしばらくは意識の浅いところに沁みこみ、
調べようとする頃には、深層に沈み込んでいたのだろうと思う。
あらためて、曲名を知るために、聞き取れる歌詞をネットで検索してみたが
「地図を持たない旅人」と検索しても湯川秀樹語録が出るばかりで引っかからない。
そして、思い出す限りの心当たりを何語か検索した結果
ようやく、おニャン子クラブのメンバー、河合その子のソロ曲で、
『青いスタスィオン』という、歌詞中に全く現れないタイトルを持つ曲だと知るに至る。
タイトルが歌詞に出てこない曲って、曲名覚えられないよね!
「スタスィオン」とは、英語で表記するとStationで「駅」のことだとか。
どうやらフランス語らしい。
日本語発音にないカタカナ表記が、スカしていてなんとなく鼻につく。
当時は、アイドル曲としてこのタイトルでよかったんだろうけど、
パッと印象に残りにくく、その後ほかで目にする機会のない言葉は、
後世に残すという観点からするとマイナスだったのだと思う。
いくら、アイドルソングは使い捨てで残りにくい*1といっても
自分の周りに「どこかで聴いたことがある」以上の知識を持った人間がいなかったことや
ITunesにも見当たらないことなどと、無関係ではないと思う。
当時、自分は日本の曲をぜんぜん聴いておらず、
またテレビもほとんど見ていなかったため、当時の状況はほとんどわからないし、
おそらくリアルタイムで見ていた人間からすると、
知らない方がどうかしている、的なことなのかもしれないけど、
オリコン2種連続1位、年間10位のというビッグヒット曲で、
なおかつ、こんな印象のよいメロディーが、こうも残っていないことは、
この、あまりにもさりげない曲の持つ運命なのかもしれない。
まず、このエキゾチックな雰囲気に気を取られる。
アコーディオンの音色と、遠くに響くきらびやかなマンドリンの音色と。
郷愁をそそるアレンジが、つたなくも一生懸命な歌唱によく似合っている。
駆けるような、弾むリズムは、列車がレールのつなぎ目で鳴らす
「カタンコトン」という音を模しているんだろうけど、
最初のガシャン、という発車音のような号砲のために
ゲートが開いて、一斉に駆け出す競走馬の足音に聴こえてしまうのはご愛嬌。
少年の日の夢を求めて、
都会へ旅立つ若者と、駅で見送る恋人。
「夏の前」という、ある種中途半端な時期がポイント。
一度はあきらめかけたけれど、あきらめることが出来なかった
そんな葛藤が、学生の区切り目である3月と4月の間から、
数か月の時を必要とし、ようやく実行へと移されているのだろう。
背中を押したのは、おそらく主人公。
恋人の腕を押しのけ、駅のホームで見送るのだった。
「♪思い出だけをそっと着替えて」
というフレーズがとても意味深で、
ふたりの想い出を無かったことにするわけでもなく、忘れてしまうのでもなく、
そっとさりげなく、別の思い出として気持ちを切り替えてしまおうと歌う。
着替えるだけだから、もう一度着ることもできるんだよ、
と暗に自分に言い聞かせるように、ぎこちなくも決意しているように見える。
自分でもそれを「そんな強がり」と表しているんだけれども。
楽曲上もここのフレーズだけ、少し唐突で浮いているように聞こえるのは
そのためだろうか。
ここから、主旋律への戻り方がまたいいんだけどね。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
スタスィオン
前述のようにフランス語で、綴りは英語と同じstationだが、
意味合いは駅というよりも、立ち寄り所くらいの意味らしい。
でも、なぜか地下鉄の駅に関してはスタスィオンと称するという。
ネイティブじゃないと、こういう細かいニュアンスは難しいわな。
変に気取って「駅」をフランス語で称そうとした事に問題があると思われる。
地図を持たない旅人
これも前述のように、ノーベル賞学者・湯川秀樹の自伝にある言葉から来ている。
「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅人である」
もしかすると、これも元ネタがある言葉なのかもしれないけど。
目指す道も、経路もわからないで突き進むのは、
思い切りが必要だよね。
河合その子
可愛いそうの子、という芸名ではなく、どうも本名らしい。
そして、この曲の作曲家、後藤次利の現在の奥さんであるという。
後藤次利の奥さんもおニャン子であったのか!
作詞の秋本康の奥さんもそうだし、アイドルグループ・SMAPの木村拓也の奥さんも、
トリオ芸人・ネプチューンの名倉潤の奥さんも、おニャン子。
とんねるず石橋貴明の奥さんは、ちがうのかな?
この程度の知識で云々言っていてゴメンナサイ。
現在入手可能な収録CD/視聴可能
脚注
*1:当人が芸能界で活躍している限りは、どっかで残るが、引退したアイドルの曲は残りづらいよね。