日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『青いスタスィオン』河合その子 ~ 青色は、空の青さと青春。スタスィオンは若気の到りか。

おそらく、何かのオムニバスCDに収録されていたものを
何の気も無くソングリストに加えていたのであろう。
これまで幾度となく玉石取り混ぜ聴いていたために、聴き知る曲となったが、
この稿を書くにあたって、はたと困ってしまった。

だれの歌う、なんて曲かわからない!

以前にも、車の中でこの曲に差し掛かったとき、
同乗者に「この歌なんて曲?」と聞かれることがたびたびあって
そのたびに、知らない。たぶん80年代くらいのアイドルの曲。
というような答え方をしていたと思う。

何度聴いても、どこかで聴いたことのあるような懐かしさを覚え、
そして何度聴いても、不思議と誰のなんという曲か調べようとは思わなかった。
聴いてしばらくは意識の浅いところに沁みこみ、
調べようとする頃には、深層に沈み込んでいたのだろうと思う。



あらためて、曲名を知るために、聞き取れる歌詞をネットで検索してみたが
「地図を持たない旅人」と検索しても湯川秀樹語録が出るばかりで引っかからない。
そして、思い出す限りの心当たりを何語か検索した結果
ようやく、おニャン子クラブのメンバー、河合その子のソロ曲で、
『青いスタスィオン』という、歌詞中に全く現れないタイトルを持つ曲だと知るに至る。
タイトルが歌詞に出てこない曲って、曲名覚えられないよね!

「スタスィオン」とは、英語で表記するとStationで「駅」のことだとか。
どうやらフランス語らしい。
日本語発音にないカタカナ表記が、スカしていてなんとなく鼻につく。
当時は、アイドル曲としてこのタイトルでよかったんだろうけど、
パッと印象に残りにくく、その後ほかで目にする機会のない言葉は、
後世に残すという観点からするとマイナスだったのだと思う。

いくら、アイドルソングは使い捨てで残りにくい*1といっても
自分の周りに「どこかで聴いたことがある」以上の知識を持った人間がいなかったことや
ITunesにも見当たらないことなどと、無関係ではないと思う。


当時、自分は日本の曲をぜんぜん聴いておらず、
またテレビもほとんど見ていなかったため、当時の状況はほとんどわからないし、
おそらくリアルタイムで見ていた人間からすると、
知らない方がどうかしている、的なことなのかもしれないけど、
オリコン2種連続1位、年間10位のというビッグヒット曲で、
なおかつ、こんな印象のよいメロディーが、こうも残っていないことは、
この、あまりにもさりげない曲の持つ運命なのかもしれない。


f:id:outofjis:20181204221717j:plain ネットの拾い物(いけませぬ)
青いスタスィオン

青いスタスィオン

これはAKBによるカバーバージョン。アレンジがなんだかなぁ。
  • 作詞 秋元康、作曲・編曲 後藤次利
  • 1986年3月21日 CBSソニーより発売
  • オリコン2週連続1位(年間10位/1986年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:青いスタスィオン 河合その子 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:青いスタスィオン - Wikipedia

  • まず、このエキゾチックな雰囲気に気を取られる。
    アコーディオンの音色と、遠くに響くきらびやかなマンドリンの音色と。
    郷愁をそそるアレンジが、つたなくも一生懸命な歌唱によく似合っている。

    駆けるような、弾むリズムは、列車がレールのつなぎ目で鳴らす
    カタンコトン」という音を模しているんだろうけど、
    最初のガシャン、という発車音のような号砲のために
    ゲートが開いて、一斉に駆け出す競走馬の足音に聴こえてしまうのはご愛嬌。


    少年の日の夢を求めて、
    都会へ旅立つ若者と、駅で見送る恋人。

    「夏の前」という、ある種中途半端な時期がポイント。
    一度はあきらめかけたけれど、あきらめることが出来なかった 
    そんな葛藤が、学生の区切り目である3月と4月の間から、
    数か月の時を必要とし、ようやく実行へと移されているのだろう。

    背中を押したのは、おそらく主人公。
    恋人の腕を押しのけ、駅のホームで見送るのだった。


    「♪思い出だけをそっと着替えて」
    というフレーズがとても意味深で、
    ふたりの想い出を無かったことにするわけでもなく、忘れてしまうのでもなく、
    そっとさりげなく、別の思い出として気持ちを切り替えてしまおうと歌う。

    着替えるだけだから、もう一度着ることもできるんだよ、
    と暗に自分に言い聞かせるように、ぎこちなくも決意しているように見える。
    自分でもそれを「そんな強がり」と表しているんだけれども。


    楽曲上もここのフレーズだけ、少し唐突で浮いているように聞こえるのは
    そのためだろうか。
    ここから、主旋律への戻り方がまたいいんだけどね。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    スタスィオン
    前述のようにフランス語で、綴りは英語と同じstationだが、
    意味合いは駅というよりも、立ち寄り所くらいの意味らしい。
    でも、なぜか地下鉄の駅に関してはスタスィオンと称するという。
    ネイティブじゃないと、こういう細かいニュアンスは難しいわな。
    変に気取って「駅」をフランス語で称そうとした事に問題があると思われる。


    地図を持たない旅人
    これも前述のように、ノーベル賞学者・湯川秀樹の自伝にある言葉から来ている。
    「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅人である」
    もしかすると、これも元ネタがある言葉なのかもしれないけど。
    目指す道も、経路もわからないで突き進むのは、
    思い切りが必要だよね。


    河合その子
    可愛いそうの子、という芸名ではなく、どうも本名らしい。
    そして、この曲の作曲家、後藤次利の現在の奥さんであるという。
    後藤次利の奥さんもおニャン子であったのか!
    作詞の秋本康の奥さんもそうだし、アイドルグループ・SMAP木村拓也の奥さんも、
    トリオ芸人・ネプチューン名倉潤の奥さんも、おニャン子
    とんねるず石橋貴明の奥さんは、ちがうのかな?
    この程度の知識で云々言っていてゴメンナサイ。



    現在入手可能な収録CD/視聴可能




    脚注

    *1:当人が芸能界で活躍している限りは、どっかで残るが、引退したアイドルの曲は残りづらいよね。