日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『Bye For Now』 T-BOLAN ~ 照れ隠しのコツは、トコトンカッコつけるべし

くだらない駄洒落でしかないと、自分でもわかっているのだが、
いけないと思いつつ、どうしても頭をよぎってしまう、連想してしまう、
そんなフレーズが多々ある。


歌詞に「別れ」という言葉があれば、
それは半ば自動的に「ワカメ」という言葉に脳内変換され、
一瞬で曲を台無しにしてしまう。

この曲の導入部分に当てはめれば、
「♪素敵な別れさ 出会いの未来があるから」という前向きな別離で始まるはずが
脳内では「♪素敵なワカメさ~」と、生のワカメにほおずりせんばかりに、
最高の笑顔を見せる男の歌になってしまう。 


高橋真梨子が、『ごめんね・・・』(1996年/ by)において
「♪連れて行って 別れのない国へ・・」と、悲壮な後悔を見せれば、
やはり脳内では、「♪連れて行って ワカメのない国へ・・」と、
この上なくワカメを毛嫌いする女性の嘆きに変身してしまう。

どういうわけか、映像付きで脳内変換されてしまうのが
イメージを固定させる拍車をかけていて、本当にいけない。


同様に、沢田研二が『勝手にしやがれ』(1977年/ by)で、
「♪寝たふりしてる間に 出て行ってくれ」と歌えば、
脳内では「♪ネタふりしてるマギー」と変換され、
彼女と一緒にいる部屋に突然現れ「これが○○になったら、びっくりするでしょ?」
これからやるマジックのネタふりをする、すっとぼけたマギー司郎に変身し、
「♪出て行ってくれ~」と懇願する場面に変わり、

郷ひろみが『お嫁サンバ』(1981年)で「♪ああー それが大事だよ~」と歌えば、
「♪ああー 総理大臣だよ~」と脳内変換され
村山富市君を内閣総理大臣に任命します!」と土井たか子議長の声が議場にこだまする。


こうなるともう止めようがない。
脳内変換に留めるだけでなく、ついうっかり言葉にしてしまうと
もうそういう風にしか聞こえなくなるからヤメロ、と嫁に怒られる始末だ。

あぁあああああ、今回は(今回も?)内容が本当にひどいな。 
ほかにも同様な例がいくらでもあるんだけど、挙げだすときりがないので、
あとひとつだけでやめておこう。



人間性を相当疑われそうなので、これまで人前にさらけ出したことはないが
もうひとつ、この『By For Now』にそれは潜んでいる。

「♪夢かなう日まで 今はこの場所でBy For Now」
会議場に続々と人々が入場してくるシーンではじまる。

四角く囲むように配置された長机の正面、メインコメンテーターには、
タレント・タモリの姿がちらりと見え、いよいよ進行役が討論会の開始を宣言する。
ここで、印象的なオーケストラヒットの短い間奏に差し掛かる。
その一音一音にあわせて、各人のアップがパンで入り、最後はタモリのユルい笑顔。
すぐにカメラが一気に引いて、議場正面と、背後の横断幕が捉えられる。
ここで一番盛り上がりを見せるボーカルが、「♪おっぱいフォーラム!」
横断幕には「女性のバストを語る夕べ」と、恥ずかしげもなく書かれている・・・


あああ、書いちまったよ。骨の髄からヒドイなこれは。 
どう考えても脳内だけに留めておくべきだろ。
(言うまでもないが、正しくは「♪Oh, Bye for now」と歌っている)

ごめんね、本当にごめんね。
ひどいよね、ヒドすぎるよね。許してなんか言えないよね!


Bye For Now シングルジャケット/amazonより
Bye for Now

Bye for Now

 
  • 作詞・作曲 森友嵐士、編曲 明石昌夫
  • 1992年11月18日、ZAIN RECORDSより発売
  • オリコン最高位2位(年間17位/1993年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:Bye For Now T-BOLAN 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:Bye For Now - Wikipedia

  • 長々とひとりボキャ天*1ナウシカごっこやっていないで、
    ちょっとは真面目に曲について語らないと、さすがに申し訳ない。


    先にも書いたように、この曲は「別れ」を「素敵」と表現するほどの
    ザ・ポジティブ・シンキング・ソング。
    マイナスさえもプラスの出来事と考えてしまおうという、非常に前向きな曲だ。

    別れを前向きにとらえる歌、というのは、
    ある種の定番曲で、今も昔も枚挙に限りはない。
    「♪さよならは別れの言葉じゃなくて 再び会うまでの遠い約束」
    (『セーラー服と機関銃薬師丸ひろ子/1981年/ by

    「♪サヨナラから始めよう 燃えるよな恋してみよう」
    (『夏を待ちきれなくて』Tube/1993年/ by

    「♪涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く花のように」
    (『Tomorrow』岡本真夜/1995年/ by

    「♪Oh, My Baby, バイバイじゃない サヨナラは また新しいスタート」
    (『Bye-Bye』ブラックビスケッツ/1999年/試聴はこの先から


    など様々だ。
    そもそも「卒業」の歌というのが、別れを伴う未来への旅立ちの曲であるので、
    考えれば「前向きな別れ」という一見矛盾するような事柄が、
    定番であることに何ら不思議はない。


    面白いのが、「♪君の笑顔忘れはしない」というような今生の別れのような深刻さの中、
    「Bye For Now」(じゃあまたね)と、かなり軽いノリの声をかけていることだ。
    しかもそれがタイトルになっている。

    英語になっているので気づかないが、仮にこの曲のタイトルが、
    日本語で「ほんじゃまたノチホド」だったとしたら
    曲調の深刻さとのギャップに面食らうだろう。


    ただこれも、ひとつの定番だ。
    「あるある」といった方がいいだろうか。
    深刻な場面で深刻になることを嫌う、言い方は悪いがひとつの現実逃避。
    大したことじゃないんだよ、と自分達に言い聞かせるように。
    「今はここで。・・・そう!"Bye for now" だよな!」

    「素敵な別れ」とか、「出会いの未来がある」とか。
    弱気になりがちな旅立つ相手の背中を押し、
    半ば冗談にすることで、自らの心をも軽くなぐさめ、
    なによりピシッとカッコつけられる。これぞ一石三鳥なり。




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    マジじゃ言えないけれど
    面と向かってはいけないけども、シラフじゃ言えないけども
    というくらいの意味だろう。
    冗談めかさなきゃ言えないけど、お前の横顔、かっこいいぞ。

    うわ、本当に冗談めかさないと言えそうにないなこれは。
    照れくさすぎる。これをマジで口にできる奴は、最強に口が軽い奴だ。


    全ての明日
    「未来」って言えばいいのに。もう、この照れ屋さんたら。



    現在入手可能な収録CD
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    T-BOLAN
    icon icon

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:かつて一世を風靡したTV番組「タモリボキャブラ天国」。タモリ倶楽部の「空耳アワー」の日本語歌バージョンのような番組。視聴者投稿をもとにした駄洒落ミュージックビデオを放送していた。