日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『夏だね』 TUBE ~ 全季節を夏へと強制連行! TUBEは夏の季語に違いない

思考の跳躍っぷりが半端ない。

第一声「春一番」で始まった歌が、わずか8小節足らずのうちに「6月」になり、16小節に達する頃には遥か「夏休み」にまで到達する。
この間、文字にしてわずか36文字。

「♪春一番が 小さな過去へと遠くなる六月
      心はウワの空 指折り数える バラ色の夏休み」

なんというめまぐるしさだろう。
暦が一気に、2月上旬から7月下旬まで駆けぬけるのだ。
ちなみにこの思考を行っている現在はというと、6月らしい。
気が早いことこの上ない。

散文形式*1の詩でこれなのだから、もしもこれを世界一短い詩といわれる俳句にしたらこうなる。

春一番 指折り数える 夏休み

これはもう俳句舐めてんのかと絶対怒られるパターンだ。


シングルジャケット/駿河屋より
夏だね

夏だね

  • TUBE
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
 
  • 作詞 前田亘輝、作曲 春畑道哉、編曲 TUBE
  • 1992年(平成4年)5月1日、ソニーミュージックレコーズより発売
  • オリコン最高位2位(年間24位/1992年)
  • 歌詞は歌ネットへ:TUBE 夏だね 歌詞 - 歌ネット
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:夏だね - Wikipedia

  • 個人的にはどストライクのサウンドで、曲のテンポや各楽器の配置など申し分ない。
    ギターが特によくて、Aメロでアルペジオを奏でるクリーンギターも、短いけど存在感抜群のギターソロも、とっても心地よい。
    ゲストプレーヤー*2によるキーボードやサックスの音色も心地よく、過不足ないとはこのこと。

    しかしいかんせん、名曲として紹介するには気後れしてしまうほど曲の構成がシンプルにすぎる。
    イントロやエンディングは、まんまサビの派生形で、小気味よく響くギターソロも、Aメロの発展形にすぎない。

    つまりはこの曲、Aメロとサビしかない。
    Bメロもなければ、大サビとも呼ばれるブリッジもない。
    極端なことを言えば、Aメロとサビを3回繰り返して終わり、といってもいいほどの潔さだ。

    だけど、シンプルなことで、TUBEのいつもの暑苦しさが低減されているのもひとつの事実。
    TUBEとしては出色の爽やかさではないだろうか。

    いくらTUBEが夏の風物詩のひとつに数えられるほどのバンドだとはいえ、暑苦しいのは嫌だからね。
    ただでさえ夏は暑いというのに。

    バンド名が、中国名で「夏之管」と表記されてしまったのもダテじゃない。
    TUBEが冬にツアーをするときに「冬でごめんね」なんて銘打って活動していたのも、彼らが夏の風物詩以外の何者でもないことの裏返しだろう。
    先に挙げたアホ俳句はともかくとして、TUBEを夏の季語として詠んだ俳句だって、絶対いくつもあるはずだ。


    さて、前述のようにこの物語の舞台は6月。
    夏とはいうものの、まさに梅雨時だ。
    うんざりするような陽気に、主人公の気持ちは早くもはじけるような夏に焦がれ、ウワの空に、心はもう程よく夏にどっぷり突入してしまう。

    「♪空と海のハーモニー 灼けつく陽射し」も
    「♪涙交じりの渚で 月夜に寄り添うムード」も
    どれもこれも、夏休みというキーワードに導かれた妄想物語に違いない。
    だってまだ6月だし。

    いくら何でも早すぎるためだろう。可能性が広がって妄想はエスカレートする。
    今は影も形もないと思われる恋人とのアバンチュールだって可能性はなくはないし、歳を取ったって夏休みが魅力的に違いないと飛躍する。
    いわゆる「夏休み」があるのは、学生のうちばかりなりとはつゆ知らず。
    まだ6月だというのに。


    冬にだって、梅雨時期にだって、いつだって夏の体現者となりえるすさまじさ。
    誰も言わないのが不思議でしょうがないが、「常夏」とはTUBEの形容句に違いない。
    少なくともTUBEが夏の季語であることに誰も異存はないはずだ。


    こんな真冬(これ書いている時点で1月初旬)にTUBEの曲をとりあげるオイラもオイラだけど。



    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    春一番
    立春*3過ぎて初めて吹く南風。
    大陸に居続けた冬の高気圧が勢いを弱め、やがて高気圧と低気圧が交互に現れるようになり、移動性となった春の低気圧が日本海を進むようになる。
    そうやって低気圧に向かって吹き込む暖かい風*4。気象庁が公式認定する。

    キャンディーズの『春一番』(1976年/)のように、春一番をテーマにしたのなら冬から春へ移り変わる季節を歌うのが当然であって、春の到来を告げるこの言葉を、夏に結び付けたのは後にも先にもTUBEだけだろう


    心も程よく
    歌詞を見るまでは、なんて歌っているのかわからなかった。
    心も程よく夏、というフレーズがしっくりこなかったからかもしれない。

    「程よく」とは、ちょうどよく、都合よくという意味なので、心がちょうどよく夏になる、心が都合よく夏になる、というような意味になる。
    心が夏・・・?と疑問に思うが、心の中が夏の気分になると考えれば納得?だろうか。



    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
    納涼 - TUBE

    納涼 - TUBE

    • アーティスト:TUBE
    • Smej Associated
    Amazon

    【ベストアルバム】
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ TUBE
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:【散文形式】文字数や韻を踏む形式にとらわれない文章のこと。逆に俳句のように5・7・5の字数制限などがある定型になっているのもを韻文という

    *2:【ゲストプレーヤー】演奏に加わったバンド外のメンバーのこと。サポートプレーヤー、セッションプレーヤーともいう。
    今はプレーヤーというとゲーマーのことを指すことが多いため、ゲストミュージシャン、サポートミュージシャン、セッションミュージシャンと呼ぶ方が多いかもしれない。

    *3:【立春】年によって日は異なるが、例年2月4日ごろ。豆まきをする節分の次の日。

    *4:【低気圧に向かって吹き込む暖かい風】ちょっと考えれば当たり前のことだが、風は気圧の高いところ=高気圧から、気圧の低いところ=低気圧に向かって吹く。だから、自分のいる場所より北側を低気圧が通過すれば南風が吹くため暖かくなり、南側を低気圧が進めば北風が吹き寒くなる。