日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『アジアの純真』 Puffy ~ ネット住人のイッツ・ア・スモール・ワールド

さて、どこからツッコんでやろうか。
脈絡なんか考えずに、片っ端から行ってみようか。
曲自体、見どころツッコミどころ満載の支離滅裂さだから
それくらいがちょうどいいかもしれない。


アジアの純真、のタイトルよろしく、歌詞は北京からスタートする。
しかし続くのは、ベルリン(ヨーロッパ・ドイツ)、
ダブリン(ヨーロッパ・アイルランド)、リベリア(アフリカ・リベリア)。
早くも2歩目にしてアジアを飛び出して、舞台は世界へ旅立ってしまう。

その歌詞が載る和音は、まさかのワンコード(1和音)。
ベース音は20秒以上延々とBの音(ドレミ・・の「シ」の音ね)を刻む。
コーラスが途切れてEの音(「ミ」の音を基準にした和音)になったかと思ったら、
ものの数秒でふたたびBの音を繰り返す荒業。

「♪丸くなって わあになって」
「♪マウスだって きいになって」
「♪夜になって ねつうが出て」
この妙な言い回しは、井上陽水自身の歌唱指導によるものという。
やっぱ歌詞の意味よりも音の響き優先なんだな。この人は。

ゴージャスなサウンドは、BBクイーンズあたりを意識したものなのかもしれないが、
そのきらびやかな響きは、もはや時代錯誤ともいうべきシンセサイザーサウンド
それは古きよき時代のテクノサウンドを彷彿とさせる。
ピンクレディー『UFO』(1977年/ by)のイントロのような
下降音に代表されるピコピコ音に、
コンピューターおばあちゃん』(酒井司優子/1981年/ by
サウンド世界*1を連想せざるを得ない。

どうやって見つけてきたんだか、ほとんどおなじ声色を持つふたりのユニゾンは、
リアルタイムでの疑似ダブルトラックになっている。
いちど録音したボーカルにあわせて、本人が重ねて歌うという
本来のダブルトラックの手続きが不要で、リアルタイムならでは*2の間がある。
タイミングを取らなくても、本人たちのアイコンタクトなどで
変なタイミングでの出合わせや掛け合いが可能。

Aメロとサビのメロディーが異様に似ている。
『♪北京ベルリンダブリンリベリア 束になって輪になって』
『♪白のパンダをどれでも全部並べて』
音符を並べると違うんだけど、受ける印象はほとんど同じ。
それにしても、いったいどっちがサビなんだろう!どっちでもいいんだろうが。

ロボットのようなコーラスは
ボコーダーによるエフェクトだろうが、
鼻の穴にイヤホンをツッコんで、器楽音に合わせて口パクすると
似たような効果を得ることが出来る遊びを連想してしまうのは自分だけだろうか。



とまあ、いろいろとぶっ飛んでいる割には、
まるでお経みたいなメロディーと、意味をなさない言葉の羅列で、
ひとつひとつの部品を見ると単調で、実験音楽みたいなんだけど
何故かその仕上がりは、異様にキャッチ―。これこそが一番の謎だったりする。
足し算が掛け算になるどころか、べき乗まで行ってしまっているのだろうか。


アジアの純真 シングルジャケット/amazonより
アジアの純真

アジアの純真

 
  • 作詞 井上陽水、作曲・編曲 奥田民生
  • 1996年5月13日、エピックレコードより発売
  • オリコン最高位3位(年間15位/1996年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:アジアの純真 PUFFY 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:アジアの純真 - Wikipedia

  • 間違いなく意味を持たない歌詞に対して
    意味を成すことにチャレンジしてみよう。
    できるかな?

    北京の人たち、ベルリンの人たち、ダブリンの、リベリアの・・・
    そんな世界中の人たちみんなで集まって、ひとつの輪になって
    イランで、アフガニスタンで、、そんなどこか世界の片隅に流れる音、、
    そう、たとえばロシアの民族楽器、バラライカの音色に
    耳を傾けてみるのもいいかもしれない

    絶世の美女を探し求めてみるのもいい。
    朝鮮の古きよき歌、アリランを歌ってもいい。
    ガムランのように、みんなでいろんな太鼓を打ち鳴らしてもいい。
    ラザニアが食べたければ、みんなで食べてみればいい。

    マウスをクリックして、キーをたたいて
    気分はイレブン。(これは単なるダジャレだ!)
    まあ、とりあえずネット世界にアクセスしてみよう!

    さあ世界への扉を開こう。
    ほら、今はもう別の世界。
    流れ着いてみたらアジアだったってこと。


    白いパンダの愛らしさを、選りすぐって好きなように並べてみたい。
    たとえばそんな純粋な思いつきの気持ちが弾けだして
    夜空いっぱいに、火花が散るように輝いている。

    いままさに火を噴く火山を巡り、
    氷山の浮かぶマゼラン海峡を走破し、
    不夜城・上海によっぴいて遊んで
    マラリヤ熱にうなされてみる。

    毎晩毎晩、熱にうなされるように世界を巡る。
    今いるのはたぶん香港だろうか。瞬くような夜景。
    熱帯夜のように熱い夜。

    さあ世界への扉を開こう。
    感涙にふせっても、
    感情があふれ出でてみれば、気づけばまたアジアだった。


    地図でしか見たことのない黄河に、星空をすべて映し込んでみたい。
    そんな純粋な気持ちが、やがてだれかの気持ちと一緒になって
    出会った仲間たちと新しい未来を切り開いていく。

    白いパンダのいろんな姿を、好きなだけ並べてみよう。
    ピュアなハートが、世界をそんな風に飾りたてたがっている。
    世界を愛する限り、そんな光景が頭の中を巡っている。

    愛する世界に、アクセスしよう!



    夜な夜な、世界中にバーチャル訪問する
    ネット住人の歌になってしもうた!

    だけどこれって、今ではそんなに不思議なものでもないけど、
    1996年当時、ネット世界はそこまで世界を
    身近に感じられるものではなかったと思う。

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    バラライカ
    ロシアの3弦の弦楽器。
    これが使われている代表曲でもあればいいが
    日本で知られている物は思いつかないなぁ。


    ガムラン
    インドネシアの、打鍵楽器をメインにした民族音楽
    ・・・らしいが、正直よく知らない。
    井上陽水はどうやってこんな言葉を仕入れてきたんだろう。



    現在入手可能な収録CD/視聴可能
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    PUFFY
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:「夢の宇宙旅行、きっとかなう日が来る」の歌詞があったが、この当時のおばあちゃんがそれを達成できる機会はついに訪れなかった。21世紀になってごく一部の金持ちが宇宙力を達成しているが、1980年に還暦だったとすると、100歳になった時点で実現できる状態に至っていない。100歳超えての宇宙旅行は厳しいよな。

    *2:文字にすると変だな。「ならでは」。綴りが間違っているかと思って辞書ひいちまったよ