のっけから余談から始まって*1申し訳ないが、
個人的に方言というものにあれこれ興味を持ちはじめたのは、
インターネット前夜の時代のこと。
当時、地域の言語差をうかがい知れたのは、主にテレビや物語世界だけであったが、
親の転勤によって、いやがおうに別体系の方言世界に投げ込まれ
これ以上ないほどの衝撃を受けた言葉がある。
「ケッタマシーン」
マシーンという外来語がついているが、れっきとした日本の方言である。
濃尾地方*2に伝わる由緒正しき方言名詞で、通称「ケッタ」 。
その正体はなんと、標準語でいうところの「自転車」である。
自転車のような近代構造物に方言があることにまず驚き、
方言に英語が組み込まれていることに、さらなる驚きをおぼえた。
使い方としては「チャリンコ」とその通称「チャリ」に近いが、
原付バイクを「原ケッタ」、買い物自転車を「ママケッタ」などとは決して言わないので、
服用する際には容量・用法には注意が必要だ*3。
同じ東海地方*4の三重県方言「しあさって」を知るまでは
自分の中での最強方言は「ケッタマシーン」だった。
なお、三重県では「しあさって」は3日後ではなく「4日後」を指すので要注意。
(明日、明後日、3日後、4日後・・・となるらしい。)*5
三重県民とは3日以上先の予定を組んではいけない。
話題が原形をとどめないほどに脱線していけないが
『青春サイクリング』が「自転車」をテーマにした歌であることに加え、
稿を進めるべく曲の仔細を調べた際に、
歌い手の小坂一也が名古屋出身である事実が判明した当然なる結果として(?)、
このようなケッタマシーン談義となってしまった。
大いに反省すべき点だと思う。反省!
マーチには、スネアドラムが不可欠、と信じ切っていたが
なにをかいわんや、この『青春サイクリング』で聴けるマーチングバンドは
スネアドラムや管楽器なんか無くても立派にマーチじゃないか。
(そもそもこの曲はマーチではないのでは、という意見は置いておいて)
なにより、出だしのアンサンブルがいい。
編曲家の萩田光雄が、印象的なイントロこそが曲の肝要だ
というようなことを常々述べているが
まさにその手本のようなイントロで、
「♪ヤッホー ヤッホー」のサビの部分だけがメインディッシュじゃないよ!
ということを思い知らされる。
たぶんこのイントロがないと、軽いだけの曲、という印象になってしまっただろうから。
イントロのメロディーが再び間奏に現れ、気分を高揚させたままワンコーラスを歌い、
跳ねるような木管アンサンブルで曲は終了する。
この爽快感ときたら!
そんな風に、自転車といえばこの曲、と素直に思える曲で、
「♪サイックリング サイックリング ヤッホー ヤッホー」
というサビのフレーズは自転車の爽快さをあらわした名フレーズだ。
初夏の爽やかな風を身に受けながら、ペダルをこぐ足取りもさぞ軽かろう。
しかし意外というかなんというか、自転車のイメージに使われるBGMは
Queenの 『バイシクル・レース』(1978年/ by
)
である頻度が圧倒的に高いように思う。
即座に意味がつかめないことをいいことに、安易に洋楽を選ぶことを
決して否定はするものではないが*6
せめてJudy&Maryの『自転車』(1995年/ by)を使って欲しいところだ。
悔しまぎれに、Queen楽曲の純日本歌詞によるカバー、
女王様『女王様物語』(1996年/ by
)収録の
「♪じーてんしゃ、じーてんしゃ」に脳内変換しておこう。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
銀輪
今では使用しないが、自転車はこういう俗称も持っていた。
かつての日本陸軍の、バイク部隊ならぬ人力の自転車部隊の通称は
「銀輪部隊」であったという。
地平の果てに明日も日和の虹が立つ
ふいに夕立でも降ったのだろうか。
雨が上がり、虹がかかった。
こりゃあ明日もサイクリング日和だとのたもう。
雨にたたられたにもかかわらず、
このポジティブさはどうしたことだろう。
ヤッホー、ヤッホーヤッホーヤッホー!
現在入手可能な収録CD/視聴可能
脚注
*1:いつものこと?落語のマクラのようなものと思っていただければこれ幸いにござる。
*2:旧国名の尾張と美濃を合わせた地域名で、今の愛知県北西半分と、岐阜県南半分を合わせた地域
*3:wikipediaにはマウンテンバイクのことをケッタマシーンと呼ぶように記載されているが、それはおそらく一部のコミュニティ内の用法であって、自分の知る限りは「ケッタマシーン」は自転車の総称であり、「ケッタ」のフォーマルな呼称である
*4:名古屋を中心とした地域の地元民は「中京圏」「中京地方」とはあまり言わず、「東海地方」「東海3県」と呼ぶ。愛知・岐阜・三重の3県を指し、静岡県は含まれない。「北陸3県」が石川・富山・福井の3県を指し、新潟県が入らないのと同じで、よそから見れば、その地域の代名詞的な県が入らない奇怪な呼称だが、内部の人間からすれば当然すぎて何言ってんだという感じになる
*5:知り合いの三重県出身者が使っていたことで知った。最初は奴が変な奴なのだと思っていたが、三重県一般的なことだと知り愕然とする。
*6:なんと言っても、これを書いている自分自身が洋楽好きなのだから