日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『真冬の帰り道』 ザ・ランチャーズ ~ 大人になれない大人が、地団駄を踏むか、否か。

「♪あなたの肩先に ひらひらこぼれてる プラタナスの枯葉 寒そな枯葉」
この曲ではそんな風に歌われるプラタナス

「♪プラタナスの枯葉舞う 冬の道で プラタナスの散る音に 振り返る」
(『風』はしだのりひことシューベルツ/1969年/ by

「♪そよぐプラタナス ふたつの靴音 ああ恋の夜」
敏いとうとハッピー&ブルー『星降る街角』/1977年/ by

「♪プラタナスの葉陰に ネオンがこぼれ 想い出が還る 並木通り」
(『たそがれの銀座』ロス・プリモス/1968年/ by※これは純烈によるカバー

「♪レースの飾りの向こうには 窓に映ったプラタナス・・Umm・Umm」
(『ハロー・グッバイ』柏原芳恵/1981年/ by

いったいぜんたい、どんなステキな植物プランツかと思ってたゼ。
プラタナス


文脈から植物であろうことは容易に想像できた。
まさか茄子ナスではないだろうけど、
おそらくは紅葉のきれいなオシャレ木ではないかと。

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のちに、思いがけないところで、
街路樹についたネームプレートではじめて実物を知り、
案外見知った樹木であったことを知るとともに
あの、むやみにカサカサカサカサいう、
デカい落ち葉のあまり風情を感じさせない木であったことに、
ちょっとしたガッカリ気分を味わうことになる。

そういや、「落ち葉」とは言わずに「枯れ葉」って言ってるよな。
ちょっとだけ合点。



真冬の帰り道[EPレコード 7inch] シングルジャケット/amazonより
真冬の帰り道

真冬の帰り道

  • ザ・ランチャーズ
  • ポップ
  • ¥250
 
  • 作詞 水島哲、作曲・編曲 喜多嶋修
  • 1967年11月25日、東芝音楽工業よりリリース
  • オリコン最高位23位
  • 歌詞はうたまっぷへ:真冬の帰り道 ザ・ランチャーズ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:真冬の帰り道 (ザ・ランチャーズの曲) - Wikipedia

  • サウンドはどこを切り取っても、どの角度から見ても、加山雄三の楽曲そのもので、
    知らずに聴くと、加山雄三の若いころの作だと言われれば
    間違いなく騙されるであろうほど、加山雄三色が濃い。
    その実は、加山雄三*1のバックバンドのデビュー曲というから、さもありなん。

    イントロから終始流れる12弦ギターの響きが実に印象的で、
    ちょっと面白いことに、たぶん3弦だか4弦だかの低音のほうの弦がちゃんと鳴っていない。
    (こういうのを面白がるのは、たぶん自分のような人間だけだろうが)


    ふむ、どうやら12弦ギターについて多少の解説が必要であるようだ。
    細かいコトに目をつぶって、ものすごく大雑把に説明すると
    通常のギターでは1ラインに弦1本を6ライン、計6本弦を張るところを、
    同じライン上に1オクターブ音程が違う弦を2本並べたものを6ライン、
    計12本弦を張ったギターだ。だから12弦ギターと呼ばれる。
    基本的な弾き方自体は通常のギターと同じだけど、
    自然とオクターブ弾きと同じことになるため、音に厚みがでるシロモノだ。


    閑話休題、この曲のイントロでは、偶然か故意かは不明だが、
    同じライン上の低音のほうの弦がミュート*2しているか、
    高音弦しかピッキング*3していないのか、どちらかだろう。
    高音の弦だけが鳴っているために、いわゆるハーモニクスのような音*4になり、
    そこだけ甲高く詰まったような音になっている。

    現象の原理はともかくとして、ちょっと注意してイントロを聴いてみてほしい。
    メロディーが「シソソファファミ」と下がっているはずなのに、
    最後の「ミ」の低音のほうの弦が鳴っていないせいで、
    あたかも最後の「ミ」が1オクターブ上がったような音に聞こえる。

    まるで、チープなサンプリング音源*5が、適当なサンプリングをしているせいで
    鍵盤の途中から音色が変わってしまっているのに似ている。

    イントロのあいだ中、低い「ド・レ・ミ」の音がこんな調子で鳴っているために
    なんだかとても不思議な響きのイントロが出来上がっているというわけ。
    (ここまで表記した音階は、正確には、ド・レ・ファ・ソの音は半音高いシャープの音になる)

    うん、こういう話は興味が無ければトコトンつまらないだろう!




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    プラタナス
    カナダの国旗にデザインされた葉に似た、でかい葉っぱの落葉樹。
    でかい杉の実(もしくは小さなドリアン)のような実がなる。
    木自体もかなりでかいが、何故か街路樹によく使われる。
    和名は「鈴懸けの木」。こっちの名前の方が詩的だよな。


    心でもえて 唇かむだけ
    思わず聞き流してしまいそうになるけど、結構意味不明な表現だ。
    心のうちだけにしまい込んで、言葉に出さない、
    というようなニュアンスを表現したいんだろうけど、
    文面だけとらえると、
    心の中で気持ちが燃え上がって、唇をかんで悔しがるだけ、
    という意味になってしまう。


    あなたがいつの日か 大人になれば
    お互いまだ年端もいかないような恋心を歌っているのだろうけど、
    これも、前の熱い地団駄を踏むようなヘンテコ訳を踏襲すると、
    子供じみた言動をする「あなた」に対し、悔しい気持ちを抑えられず
    いつの日か、あなたが大人な対応を取ってくれることを期待している、
    という意味になってしまってまあ大変。




    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    フリー・アソシエイション(紙ジャケット仕様)

    フリー・アソシエイション(紙ジャケット仕様)

    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
    ▼ 加山雄三とハイパーランチャーズ
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    ※正確には同じ流れをくむ別バンドなので、該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:ああ、加山雄三加山雄三うるさいなぁもう

    *2:左手の指で弦をしっかり押さえずに、指で触れるだけにして振動させないことにより、音を鳴らさないこと。

    *3:右手の指、または右手で持ったピックと呼ばれる小さなバチで弦を弾くこと

    *4:自分にはこの技術がないので詳しく解説できないが、弦をはじいた瞬間に押さえた指を離すと、何故かオクターブ高い音が鳴るんだな。偶然でしか出来ん。

    *5:録音した生音を、必要な音階に合わせて電気的に音程を変えて再生する音源。PCM音源。