日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『M』 プリンセス・プリンセス ~ 想いがブラックホール化している。立ち位置の問題か?

あらためて歌詞をみて初めて気づいたのだが、

別れた相手を想い出にできなくて苦しい、

という単純な歌とは、どうやら違うらしい。

 

彼に言われた別れの言葉が、

いつまでも頭の中でリフレインしていて、逃れられない。

だけどなぜか、愛しさを忘れることができない、

という内容の曲なのだと思い至った。

 

 

LET’S GET CRAZY
アルバムジャケット/amazonより
https://itunes.apple.com/jp/album/m/id575487935?i=575487966&uo=4&at=1001l4PV  
  • 作詞 富田京子、作曲 奥居香、編曲 Princess Princess
  • 1988年(昭和63年)11月21日、アルバム「Let's Get Crazy」に収録
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  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:LET'S GET CRAZY - Wikipedia
  •  

     

    問題となるのは、思わず聴き流してしまう英語のコーラス部分。

     

     

    「♪You are only in my fantasy」

     

    君は僕の幻の中だけにいるんだ。

     

    おそらくこれは彼に言われた言葉。

    ボーカルではなくコーラスが歌っていることからもそれが暗示される。

     

    たびたび現れるこのコーラスの後には、

    「今でも覚えている あなたの言葉」

    「あなたの声聞きたくて」

    と続くので、

    “あなたの言葉”としてもっとも頭の中に残ってしまったのが

    この突き放すような言葉なのだろう。

     

     

    「♪ Leaving for the place without your love」

    も彼の言葉だろう。

     

    僕は君の愛のない場所に帰るよ。

     

     

    「♪まばたきもしないで あなたを胸に焼き付けてた 恋しくて」

    こんな、憧れにも似た接し方が、

    彼には重荷だったのかもしれない。

    君は僕の幻しか見ていない、と。

     

    こんな言葉がずっと頭の中で、

    繰り返し「♪so, once again(ああ、また)」

    フラッシュバックしているにもかかわらず、

     

    言われた瞬間の景色でさえも、

    言葉とともにまざまざと思い返されるにもかかわらず、

     

    「♪あなたの声聞きたくて」

     

    突き放した後ですら、こんなに思われるようだと、重いかも。

    耐えられないかもしれないなぁ。

     

     

    だけど、女性視点から見たら

    こんなに切ない、けれどやさしさのつまった歌になってしまった。 

     

    想い出として美化されて、

    さらに重たくなってしまったのだろうか。

     

    想いが重い。

    ダジャレか?

    すいません。駄洒落です。

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    それはそうと、

    「♪あなたの居ない右側に 少しは慣れたつもりでいたのに」

     

    漫才師じゃあるまし、

    立ち位置が決まっていたのかよ*1という

    ツッコミはこらえつつ、

    この部分に焦点を当てて進行してみよう。

     

    ふとした拍子に、ああこの場面では

    いつもあなたがここにいたっけ、と思うと泣けてくるという。

     

    これはどういうシチュエーションだろう。

     

    短絡的に考えると、

    いつも右手で彼の腕を組んでいた、

    あるいは、

    いつも助手席に乗っていて、右側の運転席に彼がいた、

    というのが思い浮かぶ。

    槇原敬之の『もう恋なんてしない』(1992年/ by

    にでてくる「♪眺めのいい左」は

    男女の立場の違いがあるものの、おそらく後者のパタンだろう。

     

    しかしよく考えると、

    ふとした拍子に居もしない人の腕を組もうとはしないし、

    運転する人のいない助手席に乗り込むなんて

    天然ボケも甚だしい。

     

    やはり漫才コンビを組んでいたと考えるのが妥当か。

    (違う)

     

     

    日常のなかで、なんとなく決まっている居場所、

    というものがある。

     

    自宅の食卓の家族の座る場所とか、

    駅のホームで列車を待つ場所とか、

    行きつけの店のカウンターの席とか、

    *2

    ポジション、定位置と呼ばれる類のものだ。

     

    一緒にいた時間が長ければ長いほど、

    こういった暗黙の了解による定位置が崩れたことに

    あれっ、と違和感を覚えてしまうのだろう。

     

     

    学校や職場での席順、チームのフォーメーション、

    団体スポーツのポジションのような

    あらかじめ誰かに決められた場所、での「右側」という可能性もある。

     

    ただ、ポジションとしての考え方にとらわれてしまうと

    「右側に慣れた」という妙な文脈の区切りで認識してしまい、

     

    今までレフトを守っていたけど、あなたがいなくなったせいで

    ライトにコンバートでされた。だけどそれも少しは慣れて来たみたい。

     

    なんていう妙な解釈が成立してしまう。

    んー。

     

     

    (なお、今回このコーナーの文章が妙に長いのは、

    元々これを本文として書いていたため。

    おふざけが過ぎるので、マニアックスのコーナーに左遷された次第。)

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    「星が森へ帰るように 自然に消えて」

    美しい表現だが、あまりにも詩的すぎて

    何を言っているのか掴みづらい。

     

    キャンプなどで、彼と星をみた想い出でもあるのだろうか。

    動いているように見えない星座たちが、

    地球の自転による星空のゆっくりとした動きで、

    気が付くといつの間にか木々の中に隠れてしまっている。

     

    そんな風に、いつの間にか消え去っていくものの

    例えとして星を用いているのだろう。*3

     

    (彼の)「ちいさな仕草」も、

    「はしゃいだあの時の私」も、

    「いつまでもあなたしか見えない私」も、

    いつかそんな風に、

    気が付くといつの間にか消えてしまうことを願っている。

     

     

     

    「消せないアドレス Mのページを 指でなぞってる」

    恋人は「M」のページに記されているようだ。

    この人のアドレス帳は、どうもアルファベット順らしい。

    二人の設定は外人か?

     

    それはそうと、携帯電話なんてなかった当時、

    アドレス帳に載っているということは

    同棲はしていなかったことが察せられる。

     

     

     「夢見て目が覚めた 黒いジャケット(の)後ろ姿が 誰かと見えなくなっていく」

    彼が、知らない女性と一緒に去っていく夢を見た。

     

    ふられた陰には、女がいたんじゃないか、

    決して自分のせいじゃない。

     

    なんだか重症ですね。

     

     

    amazonで現在入手可能な収録CD 10曲目/視聴可能

     

    脚注

    *1:どつき漫才コンビは、素早くたたけるように利き手に近い方にボケを置くとか、どうとか。

    *2:学校や職場などのトイレでどの便器を使用するのかとか。←下品なので本文ではなく注釈内に入れておく

    *3:決して、結婚して苗字が「星」になったのが、離婚して旧姓の「森」に戻ったわけではない。