毎回毎回、もっともらしく歌詞の解説をしてはいるが、
実のところは、シチュエーションの設定次第で、
物語の解釈はどうとでもなることが多い。
こういうのを曲の懐の広さ、という。
曲に懐の広さがあるからこそ、
人はその中に自分の実体験や、見聞きした物語との共通点を見出すことが出来る。
たとえそれが、ごくごく僅かな取っかかりであったとしても、
想いを共感、投影することで、
曲と想い出とをセットにして、心にとどめ込むのだと思う。
それを逆手にとって、勝手極まりない解釈を垂れている。
それがこのサイトの真実なのだ!(どーーん)
極論を言ってしまえば、どんなぶっ飛んだ歌詞だって、
それ以上にぶっ飛んだ初期設定を設けてやれば、決して突飛でなくなる。
いかに想像できる範囲で、無理っぽさを取り繕うかがポイントだ。
例えばこの『さよなら夏の日』
ストレートに考えれば、サマーキャンプのような、ひと夏の滞在先で出会い、
一時期を共有し、イベントの終わりとともに、恋も終わりをつげた。
そんな若い二人の恋物語だけれども、
(これを、シチュエーションaとする)
ひねくれた視点でもって、ぶっ飛んだ設定を用意してみよう。
突如巻き起こった戦争に、未来を奪われた恋人たち。
そんな、SF映画や漫画にありがちな初期設定を与えてみる。
(シチュエーションbとする。もうこの時点でかなりの冒涜だ。)
さあ2か国語*1同時通訳行ってみよう。
「♪波立つ夕立のプール しぶきをあげて」
「♪時が止まればいい 僕の肩でつぶやく君 見てた」
僕の肩に寄りかかってつぶやく君を、僕は言葉もなく見つめていた。
b) 傷を負った君を抱きかかえる。
力なく僕に寄りかかり、君はうわごとのようにつぶやく。
ずっと平和な日々が続くと思っていたのに。
僕はただ黙って見つめることしかできなかった。
「♪君を瞳に焼き付けた 尽きせぬ想い
明日になればここには もう僕らはいない」
明日にはお互い、自分の今までの日常に戻っていくんだ。
b) 最期になるであろう君の姿をこの眼に焼き付ける。伝えたい思いがあふれてくる。
僕にだって、明日は来ないかもしれないんだ。
「♪ご覧最後の虹が出たよ 空を裸足のまま駆けてゆく」
生まれたままの姿のように、自由に空に弧を描いている虹を。
b) 最期の時が来た。光明が君を迎えている。
魂は安らかに天に上ってゆけるだろうか。
「♪どうぞ変わらないで どんな未来 訪れたとしても」
でも、夢ばかりの未来じゃないことは解っているんだ。
b) この先何があっても、あなたはあなたでいてほしい
君の最期の言葉は、そんな言葉だった。
「♪さよなら夏の日 いつまでも忘れないよ
雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ」
雨に濡れていよう。泣いていることがわからないように。
この日、僕の少年期は終わりを告げた。
やー、むちゃくちゃだね。台無しだよ。ホント。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
『さよなら夏の日』は、その発売の前年にデビー・ギブソンが
『ウィズアウト・ユー』(1990年/試聴はこの先から)のタイトルでリリースしている。
前々から、そっくりなイントロの曲だなぁとは思っていたが
メロディーは全く異なるため、気づかなかった。
というよりむしろ、洋楽好きの山下達郎が、オマージュとして
本歌取りしているものではないかとすら思っていた。
ある日突然、『ウィズアウト・ユー』って、
この伴奏でそのまま『さよなら夏の日』がフルコーラスで歌えるぞ??
と気づいたのだった。
偶然の一致にしては、これはいったい何なんだと。
デビー・ギブソンが山下達郎の曲を歌う可能性なんて全く考慮の外だったから。
後になって知った。さよなら夏の日って、セルフカバー曲だったのね。
提供した曲が原形をとどめないほど改変されてしまったために、
自分でちゃんとレコードにしたのではないかと、勝手に推測する。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
明日になればここには もう僕らはいない
本文で2通りの解釈をしているけど、おそらく本来意味するのは
今の僕らは今しかいない。明日の僕らは、今とは違った僕らなんだ。
という意味。別に消えて居なくなるわけじゃない。
雨に濡れながら 僕らは大人になっていくよ
さよなら夏の日 僕らは大人になっていくよ
つらいことや悲しいことにぶつかりながら、僕らは成長していく。
昨日はいつでも「素敵な季節」だけど、
もっと素敵な明日が待っているから、
昨日の僕にはさよならを言おう。
プール
この曲中に唯一出てくる外来語。意外?
だけど全部日本語にしようとして「泳水槽」とかにしたら
かえって何のことだかわからない。
現在入手可能な音源
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※該当曲を聴ける保証はありません。
脚注
*1:【2か国語】ここでは2つの国ではなく、2つの「国語」。つまりはどっちも日本語