日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『Stay By My Side』 倉木麻衣 ~ 夢に魅入られ永遠を誓いかけるも様子見に走る

宇多田ヒカルの二番煎じ、のような扱いで
ほとんど何の前触れもなく突如ミュージックシーンに登場した倉木麻衣だが、
比較されるようになった一番のきっかけは、この二人の声質が似ていたからだろう。

本人やその周辺の意図したものではなかったのかも知れないが、
あわよくば便乗して売り出そうと考えた人間が、ひとりもいなかったとは考えにくい。
宇多田を多分に意識して、プロフィール的アピールを寄せて行ったように見えるし、
そもそも論として、利用できるものはなんだって利用すればいいというのは、
鵜の目鷹の目で鎬を削る世界では至極当然のことで、
それについて周りがどうこう言う筋合いはひとつもない。
心に留めてもらう取っ掛かりとしては、ひとつの成果を上げたものと思う。

それが幸いだったのか不幸だったのかは表裏一体な気がする。
結果的に、倉木麻衣の楽曲は、宇多田同様に無名の新人にしては破格なほどによく売れた。
デビュー曲『Love, Day After Tomorrow』(1999年/ by)は
いきなりのミリオンだし、
Secret Of My Heart』(2000年/ by)以降、
アニメ「名探偵コナン」とのタイアップで次々とヒットを重ねている。
単なる二番煎じであればこううまくはいかなかったのは明白だろう。


なにより、宇多田のような自己陶酔感や、押しつけがましさが希薄で、
スッと心に当たり前のように入ってくる楽曲の素直さには好感が持てる。
そして、全体に静かな印象のあるそれら楽曲の雰囲気からすると、
これは意外なことなのかもしれないが
かなりノリのよいリズミカルな歌い方をしているのも特徴で、
『Stand Up』(2001年/ by)あたりなんかは、
全然力強くないのにノリノリという、不思議な仕上がりとなっている。


シングルジャケット/amazonより Stay by my side
Stay By My Side

Stay By My Side

 
  • 作詞 倉木麻衣、作曲 大野愛果、編曲 Cybersound
  • 2000年(平成12年)3月15日、GIZA studioよりリリース
  • オリコン最高位2週連続1位(年間17位/2000年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:Stay by my side 倉木麻衣 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:Stay by my side - Wikipedia


  • 表題曲『Stay By My Side』も、曲の良し悪しを決定づけているのは、
    気づかないくらいにさり気なく出た、そのノリの良さだと思う。
    メロディー自体は、おそらく譜面に落としてしまうと平坦さが相当目立つのではないだろうか。
    そうかと思えば、決してメロディーの上下の動きが少ないわけではなく、
    1オクターブくらいは平気でポンとジャンプする場所も見られる。


    具体的に見てみよう。3連符気味にタメをつくりながら進むAメロ
    「♪それは偶然あなたと出逢った時」に続いて
    Bメロに入ると、1小節半にわたり13音連続で同じ「ミ」の音が現れるという荒業が見られる。
    しかも「♪新しい世界が廻りだし生まれ…」と
    「♪吹き荒れる波にのみ込まれないように…」の2回にわたってだ。

    そしてサビに至っても、特徴が良く出ていて、
    タイトルコールである「♪Stay By My Side」はすべて同じ「ラ」の音で、
    つづく「♪今始まる」では一瞬気づかないくらいにオクターブ下の音が入り、
    その後「シ」の音が連続しているという具合だ。

    このように、平坦なメロディーと、一瞬見せる大きな落差を、
    あっさりとさり気なく、リズミカルにノリよく歌うことで、
    メロディーの平坦さが単調には聴こえず、大きな上下動にも大した落差を感じさせないという
    実に器用なことを、実にさらっと歌っているようにやってのけているのだ。




    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    I Want to Know いつから心息づいているの?
    ここでいう「心」とは、「想い」のことだろう。
    息づく=生まれる と解せるので、
    「この想いがいつ生まれたのか知りたい」という意味だろう。
    それが恋心なのかどうかは、曲全体を見てもわからない。


    Dream On, Sky High
    夢を追い続けろ、空高くめざして。

    Stay by my side you can
    できれば私のそばにいてください。

    Take me to your dream
    あなたの夢を一緒に見させて。

    これら英語部分を拾ってみてもわかる通り、
    単なる恋心に目覚めた歌、というよりは
    「あなた」に出会って、その夢を一緒に実現したいと強く思った、
    というのが正しい解釈だろう。

    それが「あなた」に対する恋心や憧れから生じたものなのか、
    それともその「夢」に共感し目覚めたものなのかはわからない。
    だけど、昭和の時代にありがちだった「夢見るあなたを応援したい」ではなく
    「同志として共に夢を追いかけたい」という主体的な感じであることは確か。
    無粋な話、宗教的な思想や過激派思想に染まった歌、と考えることもできなくはないのだ。
    だけど、それはそれで結構嫌だなぁ。


    灼熱の今年の青い夏は一緒に体を焦がしたい
    つい今しがたまで遠く未来まで夢見ていたはずが、唐突かつ不可解にも
    ここへきて突然今年の夏限定になる。
    一瞬我に返りかけて冷静になって来たのだろうか。
    とりあえずこの夏は一緒に燃えてみるよ!的に。

    歌声はここで徐々にフェードアウトしてゆく・・・
    気が変わらないうちに早くこのコを引き留めておかないと!


    現在入手可能な音源

    【オリジナルアルバム】
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    ▼ 倉木麻衣
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    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注