日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『ミュージックアワー』 ポルノグラフィティ ~ ありそうでなかったリアルシミュレート

ああ、なんだかこの曲、唯一無二感がすごくない?

妙にリアルな架空のラジオ番組をでっちあげて*1
ト書き(ナレーション)やモノローグ(心の内の声)の一つも用いることなく、
番組のはじめから終わりまでを、シミュレート再現するというもの。

実に本物っぽいDJのタイトルコールから始まり、
「This Program brought to you by Porno Graffitti. See you next time!」
(この番組はポルノグラフィティがお送りいたしました。また次回!)
で終わるという、心憎いばかりのラジオあるあるが繰り広げられる。

番組としては短くて変じゃねーか?と思う人もいるかもしれないが、
ラジオでは、ものの数分で終わる1コーナー的な番組は、実際に結構あるので、
番組の短さはこれはこれで、逆にリアルだったりするのだ。


ともすると、単なるラップ風の寸劇になりそうな題材だが、
ちゃんとメロディのついたとびっきりの楽曲になっているのが見事。
だから、あるあるネタがわからなくても充分楽しめるが、
テレビすら見ねーのに、ラジオなんか全然よ。なんて人のために、
少々解説を加えていきたい。



ラジオ番組というと、ニュースやスポーツ中継をはじめ、
音楽番組や情報番組を想像する人が多いかもしれない。
だけど、それだけだったら、とっくの昔にテレビやネットに駆逐されていたはずだ。

限りなく個人的な感想かもしれないけど、ラジオ番組の一番の特徴は、
ユーザー参加型である、ぬるい番組が多いことだと思う。

ユーザー参加の仕方は番組によって傾向は分かれるが、勝手に2つに分類すると、
ひとつは、リスナー*2からの悩み事や相談ごと、お便りや質問に対して、
ラジオパーソナリティ*3が、快刀乱麻のごとく独断と偏見を用いて
ばっさばっさと(結構適当な)回答をしていくというもの。
リスナーが寄せるメッセージには、なぜか楽曲のリクエストを添えるのが常となっている。

もうひとつは、番組が出したお題に対し、リスナーがネタを持ち寄る、大喜利タイプのもの。*4
リスナーからのネタは、お約束あり、ぶっ飛んだものあり、妙に知的なものありで、
常連採用者の中には、これに命を懸けているものも少なくないと思われる。


「♪この番組ではみんなのリクエストをお待ちしています。
        素敵な恋のエピソードと一緒にダイアルをして」
という歌いだしのこの曲は、この前者のタイプの番組であることがわかる。
番組名が「ポルノグラフィティ ラブ・アップ・ステーション」であることからも
色恋の相談や、悩み事、場合によっては別れ話なんかがリスナーから寄せられ、
それに対する応援、後押し、アドバイスを行う番組だということが容易に想像できる。

ラジオ一般では、今はメッセージをE-mailやSNSで寄せることが多いようだが、
かつては、ハガキや電話でメッセージを送るのが基本だった。
あ。「ダイアルをする」というのは、もはや死語に近づきつつあるけど、電話をかけることね。

だから、「♪ここでおハガキを一通、ラジオネーム・恋するウサギちゃん」と、
ダイアルをして、って言っているにもかかわらず、ハガキを読むってのは何事かというのは
別にツッコミどころでも何でもなくて、いたって普通のことなのだ。
ちなみに「ラジオネーム」は、ラジオでいうペンネームのこと。


そのほか、やりすぎとも思えるまでに盛り込んである小ネタを
おもいつくままに、もういくつか挙げてみよう。


イントロや間奏で聞こえる、キュイチュイーン、チュイーンという甲高い音。
これはおそらくラジオのチューニング音を模したものだろう。
いまや周波数の数値指定によるデジタル選局が多数派になっていて、
ダイヤルやレバーをちょっとずつ動かして、うまく受信するポイントを見つけるような
手動チューニングする機械がほとんどなくなってしまったため
この音を聴く機会はほとんどなくなってしまった。


間奏でなんとなく聞こえる英語まじりのラップ。
考えすぎかもしれないけど、ほかの放送局の音の混信をイメージしているのではと思う*5
ラジオでは、聴いている放送に混じって、
遠隔地の別の放送音が聞こえてしまうことがあるのだ。
国内の別地域の放送局の音だけでなく、中には、
何のはずみか、まるでわからない朝鮮語やロシア語と思われる放送までもが混信する。
演奏の後ろでごにょごにょ言っていて聞き取れないラップは、まさにそれを思わせる。



これで、本当にリクエスト曲が曲中に挿入されていれば言うことなかったのだが、
さすがにそこまでは出来なかったのか、結果的にやらなかったようだ。
(ひょっとすると、前述のラップ風の部分がそれなのかもしれない)

スチャダラパーの『今夜はブギー・バック』(1995年/ by)のように、
ゲストを招いて別の楽曲をブチ込むくらいのことをしてくれていればなと。
「♪心のベストテン 第一位はこんな曲だった『♪ダンスフロアーに華やかな光・・・』」
そういう曲中曲、っていうのはほとんど見られないので、
この独創的な楽曲が、さらに完璧なエポックメイキングになったのに。


ミュージック・アワー シングルジャケット/amazonより
  • 作詞 ハルイチ、作曲・編曲 ak.homma
  • 2000年(平成12年)7月12日、ソニー・ミュージックエンタテインメントより発売
  • オリコン最高位5位 年間55位(2000年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:ミュージック・アワー ポルノグラフィティ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:ミュージック・アワー - Wikipedia



  • リスナーからのハガキを読んで、パーソナリティーが自分なりの回答をして、
    最後にリクエスト曲を流すという、ラジオ上ではいたって正統である一連の流れ。

    最初にも書いたが、そういう日常にみられる、
    巷の音をそのまま書き起こしたような楽曲、
    一切のナレーションもなく、当たり前のように切り取った曲というのは、
    非常に「まれ」だ。
    小説やドラマ、演劇ではありがちかもしれないが、楽曲となると
    色々と思い当ってみたが、類似するものがまるで見当たらない。



    何かあっただろうか。思いめぐらせることしばし。
    実日数で数週間考えてみたが、全然思い当たらない。
    せめて近いものを考えてみる。


    競馬実況を模したような
    「♪これから始まる大レース ひしめき合っていななくは 天下のサラブレット四歳馬…」
    走れコウタロー』(ソルティー・シュガー/1970年/ by)、

    相撲中継の珍事を描いた
    「♪片や巨漢の雷電と 片や地獄の料理人若秩父が 両者見合って待ったなし…」
    『悲惨な戦い』(なぎらけんいち/1973年/ by)などは
    系統は近いような気もするが、
    ところどころ説明的な語句や、個人的なモノローグが入っており、
    そもそもが現場の音ではなく、実況中継にすぎない。


    やり取りする手紙の内容を、交互に綴った
    太田裕美の『木綿のハンカチーフ』(1975年/ by )や
    『さらばシベリア鉄道』(1980年/ by )は、
    近いようでなんか違う。
    これならば、物語をそのまま書き起こした
    「♪もーもたろさん、ももたろさん。お腰につけたきび団子 一つ私にくださいな」
    童謡『桃太郎』( by)なんかの方が、まだ近いかもしれない。

    ピタゴラスイッチの『オノマトペのうた』(2007年/栗原正己)は、
    日常の些細な事件を、擬音(オノマトペ)だけで表現する曲だが、
    これは映像あっての曲だ。興味のある人は動画サイトなどで確認してほしい。


    「♪汽笛一声新橋を はやわが汽車は離れたり…」
    で始まり、鉄道の各駅を歌う『鉄道唱歌』(試聴はこの先から)や、
    「♪一番高木が塁に出て、二番谷木が送りバント…」
    と、年代ごとに打者を変えつつも打線が進む『燃えよドラゴンズ』(試聴はこの先から
    あたりが最も近いような気がして、だけどやっぱり違うことに気づく。

    そういえば『燃えよドラゴンズ』という曲は、
    作詞・作曲の山本正行(のちにタイムボカンシリーズの主題歌で知られるようになる)が、
    ラジオ番組に投稿したデモテープがラジオにかけられ、
    そこから火が付いたところから始まっているらしい。

    ああでもない、こうでもないと悩んでいるうちに、
    異常に長くなってしまったこの稿が、(ここまで読んでくれた気の長い方、あっりがとう!)
    ラジオつながり、ということで、うまく収まったふりをして
    ここいらで駄文をおしまいにしよう。





    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    Stay Tune
    テレビでいう、「チャンネルはそのまま!」


    ナンバー
    今更説明がいるかどうかは知らないけど、ナンバーとは楽曲のことを指す。
    だけど何でナンバーなのだろう?
    Numberという英単語の意味自体に、楽曲、雑誌の号、品番というような意味が存在するので、
    それ以上の意味を説明するのは難しいかもしれない。

    おそらく、日本語でこのnumberの用法に相当する語句は「もく」。
    分類を表す語句だ。演目、曲目、種目のように使う。
    んで、なんで「目」っていう字を使うのと訊かれたら、返事に困るのと同じだろう。


    壊れかけたピンボールみたいで ルールがいつまでも曖昧
    この比喩表現が何をあらわしているのか。
    一般的な比喩表現ではないので、憶測するしかない。

    たとえば、あるポイントの当たり判定が半分死んでいる台があったとする。
    一番の高得点ポイントに入って、やった!と思ったら無反応。
    店のオヤジが言うには、
    「その機械そこはノーカウントだから。なんかの拍子で点が入るときもあるぜ!」
    そんなんアリか!

    そんな無理やり解釈しかできないような表現だが、
    果たしてどういう意味なんだろう。


    現在入手可能な収録CD/視聴可能

    ミュージック・アワー

    ミュージック・アワー

    • 発売日: 2014/04/01
    • メディア: MP3 ダウンロード
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:実際、ポルノグラフィティ―による実在のラジオ番組がネタ元らしい

    *2:ラジオを聴いている人のこと。聴取者ともいう

    *3:DJともいう。司会進行役のこと

    *4:リスナーがしょうもないお題を振って、お笑い芸人などの進行役がエピソードトークを繰り広げる逆パターンもある

    *5:ビートルズの『I am the Walrus』(1967年/ by )に、ラジオの生音声(シェイクスピアの「リア王」らしい)が組み込まれているように。