日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

1981~1985

『ウェディング・ベル』 シュガー ~ 静粛どころか奔放すぎるオルガンにつき聴き逃がし注意

一発屋の巣窟として名高い、ヤマハの「ポプコン」出身である。 そんな出自から容易に想像がつくように、 表題曲の歌い手であるシュガー、および作詞・作曲の古田喜昭は、 いずれもご多分に漏れず、一発屋として記憶されている。 その特大の一発こそが、『ウ…

『星空のディスタンス』 アルフィー ~ 照れ屋なのか奥ゆかしいのか。ただ図々しいのか。

ジ・アルフィー。 そのスタイルからして、変なバンドとしか言いようがない。 なんといっても、「事実上」のメインボーカルが一番目立たないではないか。 3人並んだ向かって左端で、サングラスの向こうに照れ屋の瞳を押し隠して、 おとなしそうにチョコンとし…

『春なのに』 柏原芳恵 ~ 青い春の空に消えた、あっけない幕切れに

温度差の描写が見事。 送る側である主人公──おそらく在校生だろう*1──と、 卒業していく彼との、単純な別離の歌と捉えることもできる。 というか、ふつうはそう捉えるだろう。 しかしどちらかというと、自分がこの曲から受ける印象は、 おかれた立場の違いか…

『夏をあきらめて』 研ナオコ ~ ナイスカバー? yes. ナイスカバー。

ひとの持ち歌を歌うことを「カバー」という。 レコードにかぶせて歌うから、カバー。 つまりは、カラオケのイメージ。 ・・だと思っていたが、どうも違うらしい。 英語で"cover for ××"(××は人を指す) で、「××の代わりを務める」 という意味から来ている表…

『津軽平野』千昌夫 ~ にっぽんのふるさと。家族の絆を歌う。

いやいや、だって演歌だし、とか、だって千昌夫だし、とか 食わず嫌いしていないでこの曲を聴いてごらんなさいヨ。 びっくりするほど美しい曲だから。 出だしのオーボエとアコースティックギターの絡みと、遠くで聞こえる拍子木の音なんか、 日本人の心にズ…

『まちぶせ』 石川ひとみ ~ ストーカーという概念の有無で、曲の印象がまるで違う!

この曲の作者である、ユーミンこと松任谷由実が のちに「荒井由実」名義でセルフカバーしたときには ストーカー気質の怖い女扱いされた、この曲の主人公だが、 まぁ、確かに文字通り捉えるならばかなり怖い女だ。 「あなた」と「あの娘」の恋人同士のテーブ…

『涙のリクエスト』チェッカーズ ~ 呪いの言葉を隠したリクエスト

ウルフルズにとってのそれは、 古きよきロックンロールに、現代の演奏テクニックを導入することであり、 ゆずにとってのそれは、 古きよきフォークソングに、ポップスのリズムを導入することであり、 チェッカーズにとってのそれは、 古きよきロカビリーに、…

『愛・おぼえていますか』 飯島真理 ~ 愛って旅立った先にはどこに行くのだろう。

当初からこれがアニソン*1だとは 全く意識していなかった。 出自を知った今になっても、その認識はさほど変わっていないと思う。 アニメソングという枠組みを超えて、純粋な楽曲としてもヒットした 『銀河鉄道999』(ゴダイゴ/1979年/※試聴環境がないよう…

『恋の予感』 安全地帯 ~ 恋に臆病な女は、キレイになる必要ないはずなのに。

ブラームスの交響曲第4番*1を彷彿とさせる 2音による構成が、何とも言えず物悲しい。 行間を読む、というか、 休符に込められた意味までも、感じ取れと求めてくるようだ。 なぜ・・・なぜ? 第三者による問いかけのようにも見えるが、 おそらくは、自らへの…

『天国にいちばん近い島』 原田知世 ~ とんでもねえ、あたしゃ神様じゃないよ

なんの予備知識も持たずに、ひとつの楽曲として聞くと、 なんだかいろいろと意味不明な部分が見え隠れする。 「♪二人には目印が光る」 これはおそろいの結婚指輪だろうか。 そうであれば、南の島に新婚旅行に訪れたカップルの物語、 と捉えるのが一番自然な…

『初恋』 村下孝蔵 ~ 覚えているのは名前だけ、エピソードなんてそんなもん。

先に謝っておく。 たぶんいろいろ失礼なこと言ってしまうから。 ごめんなさい。本当にごめんなさい。 村下孝蔵。 かねてより、絶対名前で損してるよな、と思っていた。 なんだか民謡歌手のようなイメージを蜂起させるお名前で、 こんな青春ど真ん中、という…

『もしも明日が・・・。』わらべ ~ 大げさなんだよ。今生の別れでもあるまい・・・し?

前作、『めだかの兄妹』(1982年/※試聴環境がないようです by)に引き続いての新作童謡。 習作のようなアレンジで大ヒットした前作とうって変わって、 実に凝ったアレンジを引っ提げての登場となった。 大ヒット曲の次に多いんだよね。こういうの。 いやら…

『大きな玉ねぎの下で』 爆風スランプ ~ 純粋な少年が大人になる、通りゃんせ通りゃんせ

爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野と云う御仁は つくづく不思議な歌い手で、 そもそも上手いのか下手なのかがよくわからない。 ・・・イヤ、もちろん上手ですよ? だけどなんて言うか、情緒の襞ひだというか、 そういうのをあまり感じさせない歌い方を…

『北ウイング』 中森明菜 ~ 鳴り響く不協和音は、破局の予感か

サビでは、力強く。 そしてそれ以外の部分では、囁くように。 遠い町に行ってしまう恋人に、 一緒に来て欲しいと言われたものの、一度は断ったのだろう。 しかし後悔と未練は募るばかりで断ち切れない。 すべてを捨てて、かつての恋人のもとへと旅立つ。 中…

『探偵物語』 薬師丸ひろ子 ~ 連想ゲームの時間です。お題は「とまどい」

その詩といい、そのメロディといい、 かなり映像的な曲だと思う。 「♪あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む」 激しく波音を立てていた海が、 ひとりの人物を映しだした瞬間に、無音の世界に変わる。 「♪夢で叫んだように唇は動くけれど 言葉は風にな…

『越冬つばめ』 森昌子 ~ 美しく唄うツバメ男は何にあらがうのか

おそらく一生のうちに一度も訊かれることは無いだろうが、 もしも、「演歌で最も美しい曲は」と問われたとしたら 迷わずにこの曲を選ぶ。 「♪ヒュールリー ヒュールリーララー」 森昌子のよく通る声による、寂しげなメロディが 実にキャッチ―で印象的。 この…

『め組のひと』 ラッツ&スター ~ べらんめえ女とそれを取り巻くナンパ男たち

浮かれたバブル期の到来を予感させるような ラテン風でトロピカルな曲調*1とは裏腹に、 「いなせだね」 「目元流し目」 「粋なこと」 「め組のひと」 「気もそぞろ」 と、やけに古風な言い回しが目に付く。 視線の力と妖しい魅力で、男たちを虜にしていく女…

『冬のリヴィエラ』 森進一 ~ さわやかな森進一はお好きですか?

演歌とは何か、という問いの解のひとつに、 「演歌歌手が歌っているうた」という、 文字通り本末転倒しているくせに言い得て妙、な答えがある。 演歌というのは非常に厄介な分類で、 メロディーやリズムといった、音楽上の特徴から、 ジャンルを分けることが…

『聖母たちのララバイ』 岩崎宏美 ~ この子守歌はテンションが高すぎて眠れやしない

どこまでも、上がっていく音階の歌唱。 どこまでも、ヒートアップしていく演奏。 歌いだしからクライマックスまで、 この歌唱と演奏の二つが 螺旋のように絡み合い上り詰めていく。 まさに圧巻。 ん~、あふれる思いが強すぎるのか うまく文章で表すことがで…

『赤いスイートピー』 松田聖子 ~ 実は隠れ鉄道ソング

なんの気のてらいもない、純粋にメロディーのいい曲。 よって、よほど文章が巧みか、曲の構成に造詣が深くないと 文章を書く手掛かりが見つからない。 作曲者の呉田軽穂が実は松任谷由実の変名だった、 というような、ちょっと調べればわかる裏話を書いても…

『センチメンタル・ジャーニー』 松本伊代 ~ 短命を宿命づけられていた長寿曲

センチメンタル、という言葉の意味を 思わずはき違えてしまいそうになるこの曲、 歌詞の最中に自己紹介が入るという 画期的なチャレンジを施した曲でもある。 そしてチャレンジャーの最たる部分は 自らが、賞味期限を数か月に絞ってしまっているところだ。 …

『お嫁サンバ』 郷ひろみ ~ 追っかけに追い越されてるんですけど。

ある種、持ちネタのひとつとして、 ことあるごとに郷ひろみがエピソードを披露しているうた。 メロディーが先にできていて、 あとからそれに合わせて歌詞が加えられるという いわゆる“曲先”*1の曲にあって、 先に聴いていたメロディーのよさに仕上がりを楽し…

『ルビーの指環』 寺尾聰 ~ たぶん、1拍目はアンタッチャブルなのだろう

ひとつひとつの要素を見ていくと、 まったくと言っていいほど、いいところが見当たらない。 終始低い声でぼそぼそ歌うし、 単調で盛り上がりに欠けるし、 未練たらたらの失恋ソングだし、 歌い手のビジュアルもいまひとつパッとしないし。 だのに、なぜここ…