日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『Get Wild』TM Network ~ 強迫観念に負けないよう、ワイルド願望にすがる二人

正直言って、未だにこの『Get Wild』という曲を
どうやって評価していいものだか、決めかねている。

「100名曲」に入れようともしたし、その後も何回か書きかけては、
書きあぐねて、書けなくて、その繰り返し。

その後のミュージックシーンの、ひとつの転換点であることは解るのよ。
もちろんいい曲であることもね。
だけで何だかしっくりこない。ストンと腑に落ちない。
最後に自分の背中を押すのに、何か些細なひっかかりがあるようなのだ。


それは例えるなら、かの村上春樹の小説を、まわりの高評価に触れるにつけ、
そうかな、と思い何冊か手を付けてみているものの、
これぞ、という手ごたえを掴めずにいることと、似ているかもしれない。


なんとなく感じているのは、自分が物足りなく感じてしまう原因は、 
「熱っぽさ」の不足にあるのかもしれないこと。
しかし、カラッとした熱のなさ、もっと言い換えれば汗臭さのなさが、
この曲の魅力のひとつでもあるから、はっきりいって、これはジレンマだ。


さぁ、どうすっかな。

シングルジャケット/駿河屋より
Get Wild

Get Wild

 
  • 作詞 小室みつ子、作曲・編曲 小室哲哉
  • 1987年4月8日、エピック・ソニー・レコードより発売
  • オリコン最高位9位(年間22位/1987年)
  • 歌詞はうたまっぷへ: Get Wild TM NETWORK 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:Get Wild - Wikipedia

  • 困ったときの”歌詞”頼み、小室みつ子による歌詞に目を向けてみよう。

    と、その前に、話がそれるが、「T.M Network」というバンド名について。
    当時、そのネーミングは、作曲者と作詞者の、両小室氏、
    "Tetsuya - Mitsuko Network"から来ていると思っていた。
    のちに"Time Machine Network"と称したり、"TMN"と称したりするのを見て
    二人の縁が切れたのかと、ゲスの勘繰りをしていたものだが、
    その実は「多摩ネットワーク」が由来だとか*1。いやはや。



    「♪アスファルト タイヤを切りつけながら」
    という表現が実におもしろい。
    普通に考えるのであれば
    タイヤが、アスファルトを切りつけるように走るのであって、
    動かないアスファルトの地面が、タイヤに向かって切りつけるように
    迫ってくることはないはずなのだ。

    ここに主人公の、能動的ではなく受動的なものの捉え方を見ることが出来る。
    やっていることは同じでも、自分が暗闇を切り裂いて進んでいると感じるか、
    暗闇の中に浮かび上がるアスファルトの地面が、自分に迫ってくるように感じるかの違いだ。

    次の歌詞で、「♪チープなスリルに身をまかせても 明日におびえていた」
    といっていることからも、
    自分に「迫ってくるもの」に恐れを抱いている主人公の心理が見て取れる。


    ところで、この時主人公はひとりでいるわけではないらしく、
    「you」だの「君」だのがそこここに登場する。

    似たもの同士のカップルらしく、ただ傷を舐め合うことに疲れてもいるようだ。
    君や僕、お互いのためではなく、ほかの誰かのためであれば
    そんな恐怖を克服できるかもしれない、と感じている。

    「♪君だけが守れるものがどこかにあるさ」
    「♪ひとりでも傷ついた夢を取り戻すよ」
    どこかにある、ということは、ここにはない、と言い換えることが出来る。
    そしてどこか突き放したような、一人でもやっていける勧告。
    これは、もたれあいの現状にんで、
    恋人に別れを告げる歌なのかもしれない。



    "Get Wild"。ワイルドであれ!
    "Get Tough"。タフであれ!
    "Get Chance"。チャンスをつかめ!
    "Get Luck"。幸運をつかめ!

    どの口が言っているんだ、と突っ込みたくもなる、
    熱っぽさのカケラもない、ないものねだりなワイルド&タフ宣言が、
    ちょっとだけ痛かったりする。


    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    It's your pain, or my pain, or somebody's pain
    It's your dream, or my dream, or somebody's dream
    なんて歌っているか全然聞き取れないけど、
    文字に起こすとわかりやすい。

    それは、君の痛みか、僕の痛みか、それともほかの誰かの痛みなのか。
    それは、君の夢か、僕の夢か、それともほかの誰かの夢なのか。






    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    Gift for Fanks(DVD付)

    Gift for Fanks(DVD付)

     ↑CD4枚すべてGetWild。様々なバージョンの同曲を収録したいかれたCD。
    やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット

    ※該当曲を聴ける保証はありません。




    脚注

    *1:もっとも、これに限らず由来の公称なんてのは実にアテにならず、後付けであることも多い。当初はダブルミーニングでもトリプルミーニングでもあったはずなのに、他を排して一つの由来が正式だとされるものとよく見かける。そのいい例は「サントリー」だったり、「DVD」だったりする。それぞれ、「由来」をつけて検索してみよう!