正直言って、未だにこの『Get Wild』という曲を
どうやって評価していいものだか、決めかねている。
「100名曲」に入れようともしたし、その後も何回か書きかけては、
書きあぐねて、書けなくて、その繰り返し。
その後のミュージックシーンの、ひとつの転換点であることは解るのよ。
もちろんいい曲であることもね。
だけで何だかしっくりこない。ストンと腑に落ちない。
最後に自分の背中を押すのに、何か些細なひっかかりがあるようなのだ。
それは例えるなら、かの村上春樹の小説を、まわりの高評価に触れるにつけ、
そうかな、と思い何冊か手を付けてみているものの、
これぞ、という手ごたえを掴めずにいることと、似ているかもしれない。
なんとなく感じているのは、自分が物足りなく感じてしまう原因は、
「熱っぽさ」の不足にあるのかもしれないこと。
しかし、カラッとした熱のなさ、もっと言い換えれば汗臭さのなさが、
この曲の魅力のひとつでもあるから、はっきりいって、これはジレンマだ。
さぁ、どうすっかな。
困ったときの”歌詞”頼み、小室みつ子による歌詞に目を向けてみよう。
と、その前に、話がそれるが、「T.M Network」というバンド名について。
当時、そのネーミングは、作曲者と作詞者の、両小室氏、
"Tetsuya - Mitsuko Network"から来ていると思っていた。
のちに"Time Machine Network"と称したり、"TMN"と称したりするのを見て
二人の縁が切れたのかと、ゲスの勘繰りをしていたものだが、
その実は「多摩ネットワーク」が由来だとか*1。いやはや。
「♪アスファルト タイヤを切りつけながら」
という表現が実におもしろい。
普通に考えるのであれば
タイヤが、アスファルトを切りつけるように走るのであって、
動かないアスファルトの地面が、タイヤに向かって切りつけるように
迫ってくることはないはずなのだ。
ここに主人公の、能動的ではなく受動的なものの捉え方を見ることが出来る。
やっていることは同じでも、自分が暗闇を切り裂いて進んでいると感じるか、
暗闇の中に浮かび上がるアスファルトの地面が、自分に迫ってくるように感じるかの違いだ。
次の歌詞で、「♪チープなスリルに身をまかせても 明日におびえていた」
といっていることからも、
自分に「迫ってくるもの」に恐れを抱いている主人公の心理が見て取れる。
ところで、この時主人公はひとりでいるわけではないらしく、
「you」だの「君」だのがそこここに登場する。
似たもの同士のカップルらしく、ただ傷を舐め合うことに疲れてもいるようだ。
君や僕、お互いのためではなく、ほかの誰かのためであれば
そんな恐怖を克服できるかもしれない、と感じている。
「♪君だけが守れるものがどこかにあるさ」
「♪ひとりでも傷ついた夢を取り戻すよ」
どこかにある、ということは、ここにはない、と言い換えることが出来る。
そしてどこか突き放したような、一人でもやっていける勧告。
これは、もたれあいの現状に倦んで、
恋人に別れを告げる歌なのかもしれない。
"Get Wild"。ワイルドであれ!
"Get Tough"。タフであれ!
"Get Chance"。チャンスをつかめ!
"Get Luck"。幸運をつかめ!
どの口が言っているんだ、と突っ込みたくもなる、
熱っぽさのカケラもない、ないものねだりなワイルド&タフ宣言が、
ちょっとだけ痛かったりする。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
It's your pain, or my pain, or somebody's pain
It's your dream, or my dream, or somebody's dream
なんて歌っているか全然聞き取れないけど、
文字に起こすとわかりやすい。
それは、君の痛みか、僕の痛みか、それともほかの誰かの痛みなのか。
それは、君の夢か、僕の夢か、それともほかの誰かの夢なのか。
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