日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見で100曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『軍艦行進曲』 日本海軍 ~ あっけらかんと、守備重視のカウンター戦法

「♪キン・キン・キンタマリンの ナ・ナ・フ・シ・ギ!」


いきなりこんなんでスマンスマンスマン。

ご存じ「軍艦マーチ」こと『軍艦行進曲』だが、
自分が小学生のころ、こんな替え歌が流行っていたのだ。

そんな替え歌が通用するほど、
昭和生まれの小学生には身近な曲だったってことだ。
パチンコ屋なんかに出入りしてはいなかったけど、
当然のこととして、昭和の娯楽・パチンコの代名詞的な曲だと認識していた。


で、おそらく、「パチンコ」→「チンコ」→「キンタマ」的な
小学生大喜びパターンの替え歌が流布していたと思われる。
どうでもいいことだが、冒頭の歌詞は、前奏ともいえる部分に当てはまり、
本来歌詞がある「♪守るも攻めるも・・・」の部分は、次のような歌詞だった

♪ゴムでもないのに伸び縮み 直径2センチ金の玉
♪取られてたまるかソーセージ しぼれば黄色いお茶が出る


内容はひどいけど、小学生にしては良く出来た歌詞だよな。
どこかに元ネタがあるのだろう。
七不思議というわりに4つしかないので、続きがあるのかもしれないが
あいにく自分のところにはここまでしか伝来してこなかった。

惜しいな。


ところが、あるあたりを境目に、この曲を取り巻く状況は一変するようだ。
「ぐんかんマーチ? なにそれ。うまいんか?」
この曲を全く知らない、という世代にスッパリと切り替わるのだ。
こんな統計を取った人間はいないと思うので、感覚的なものに過ぎないが、
おそらく、平成に入ってから生まれた世代あたりからだと思う。
ウソだと思うなら、平成生まれの人間に聞いてみるといい。
保証はしないけど、たぶん知らないから。


いわれてみれば、もう長いこと、テレビや街で軍艦マーチを聞いた覚えがない。
思い立って聴こうともしないから、
記憶の中だけにそのメロディーが流れるにとどまっている。


f:id:outofjis:20200219003404j:plain ネットの拾い物(いけません)
軍艦行進曲

軍艦行進曲

ロンドンフィル版。何でもやるな、ロンドンフィルは。
こちらはあまり馴染みがないが、歌詞入り。
  • 作詞 鳥山啓、作曲 瀬戸口藤吉
  • 1900年(明治33年)4月初演
  • 歌詞は歌詞GETへ:軍艦行進曲(「海ゆかば」入り)/キング男声合唱団 - 歌詞検索サービス 歌詞GET
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:軍艦行進曲 - Wikipedia


  • まぎれもない軍歌のはずなんだけど、なんだか不思議な曲だと思う。
    「軍隊」というものが、ある種タブー視されているこの国にあって、
    何の違和感もなく、戦後何十年たっても巷で独り歩きしていたことが驚きだ。

    そもそも「軍艦」なんて物騒な名前がついているけど、
    これが軍歌という認識はほぼなく、
    どちらかというと、あっけらかんと平和なイメージを持っていた。
    これは、現代における、すしネタの「軍艦」に、
    軍事色を全く見出さないのに似ているのかもしれない。


    歌詞からして、「♪守るも攻むるもくろがねの・・・」と、
    受け身から入っていることが、変テコリンさを増幅させている。
    例えば、フランス国歌でもある軍歌『ラ・マルセイユ*1 by)が、
    「♪Allons enfants de la Patrie, Le jour de gloire est arrivé !」
    (祖国の子らよ 栄光の日の到来だ!)
    と意気高らかに宣言するのに比べ、何とおとなしいことだろう。

    「♪まもるもむるも 黒鉄くろがねの かべるしろたのみなる
    (守るにしても攻めるにしても実に頼りがいのある、まさに海に浮かぶ城と呼ぶべき鉄塊!)
    「♪かべるそのしろ日本ひのもとの 皇国みくに四方よもまもるべし
    (日本の海に浮かぶこの城は、国家の全方位をも守るといっても過言ではない)


    もちろんこのあと、守るだけではなく攻めるんだけど、
    「♪あだなすくにを めよかし
    (危害を加えてくる国には、攻めてやれってもんじゃね?)
    と、どこまでも受け身である。
    カッコよく言えば、後の先を取ることを信条としているといってよい。

    そして、2番は機関や大砲などの装備自慢に終始するため、
    男臭いだけで血なまぐさいところがほとんどない。
    意気を揚げるのに有効だったんだろうか甚だ疑問だ。
    軍歌なのに。



    やっぱりこれじゃいけないと思ったか、歌唱を伴うときには、
    万葉集からとった「海ゆかば」の部分をオマケのようにつけて演奏されていた。
    その部分の内容は、モチ、お国のために死にますぜ?という内容で*2
    内容的に決して褒められたものではい。





    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    黒鐵くろがね眞鐵まがね
    どちらも鉄を指す言葉で、鉄の組成的・構造的な分類ではなく、
    どちらかというと印象としての鉄の分類。
    黒光りするような鉄の大きな塊を「くろがね」といい、頑強なイメージを持つ言葉。
    「まがね」は、同じく鉄を指すが、張りぼてではない正真正銘の鋼のイメージを持つ。


    石炭いわき
    石炭と書いてイワキと読む。
    もとは木のような石、という意味合いで「石木」と書いたらしい。
    磐城国(現在の福島県浜通り地方)とは、語源が同じ可能性があるだけで、
    おそらく直接の関係はない。


    わだつみ
    海神のことだが、ギリシャ神話のポセイドンではなく、
    日本神話のイザナギイザナミ夫妻の子。
    この歌に出てくるわだつみは、単に海原を指している。


    どよむ
    淀むの誤記ではなく、漢字で書くと「響む」。
    現代では「どよめく」という表現の方がよくつかわれる。
    意味は漢字で書いた通り、響き渡ること。





    現在入手可能な収録CD/視聴可能
    盛岡第一高校校歌バージョンから始まり、
    ミャンマー軍に採用されたものなど
    変わり種を含む
    あらゆる軍艦マーチを集めたCD。
    じつに楽しい。


    脚注

    *1:正しくは、『ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)』らしい。どこかで間違えて覚えたか、世界が自分を残して変わってしまったかどちらかだ。たぶん後者に違いない。

    *2:そんな軽い口調ではないが