沖縄音楽の最大のヒットが、
このヤマトンチュ*1による『島唄』だったのは、
ちょっとした皮肉だったろうか。
しかし、 『ハイサイおじさん』*2(1976年/ by)や
『すべての人の心に花を』(1980年/ by)で、
喜納昌吉らが長年かけてコツコツと浸透させてきた沖縄音楽を
一気にポピュラーソングまで持って行った功績は大きい。
まるで様子窺いのように、最初に沖縄でリリースし、
局地的にヒットさせたあとで、ファンの要望にこたえる形で全国発売、
一大ヒットになった。
この事態を音楽シーン以外で例えるならば、
外国人の無名シェフが、誰もが日本人が作ったと疑わないような創作日本料理を考案し、
まず最初に本場日本でブームを巻き起こし、お墨付きを得てから、
満を持して本国に持ち帰り一大ムーブメントに育て上げた。
そんな感じだろうか。
・・・具体性がないのでかえって解りにくい例えになってしまった。
何か良い実例がないかいろいろと考えたが 、一向に思いつかない。
日本製中華料理である、カップラーメンが比較的近いかもしれないが、
最初に中国でブレイクしたわけではないので、チト違う。
そんな、ジャンル問わず前例がないような事態と考えてよいと思う。
ロックと琉球民謡の融合と、
琉球音階と西洋音階が交互に現れる展開*3など、
単なる琉球音楽の模倣ではない、ジャンルの垣根を乗り越えたことが
ヒットの秘密だったのではないかと思う。
伸びのあるエレキギターで奏でる琉球音階から
三線(琉球三味線)に受け継がれるイントロはまさに特筆もの。
心地よいサウンドについ見逃してしまうが、実はこの表題曲は、反戦歌であり鎮魂歌である。
太平洋戦争沖縄戦の犠牲になったウチナンチュ(沖縄県人)を悼み、永遠の平和を願う歌だ。
「♪このまま永遠(とわ)に夕凪を」は、今の平和が長く続くことを願う言葉になっている。
同じ題材を扱った『さとうきび畑』(森山良子/1969年/ by)では
「♪むかし海の向こうから 戦がやってきた」
「♪あの日鉄の雨に打たれ 父は死んでいった」
と直接的な言葉で歌われているのに対し、
『島唄』では、「♪でいごが咲き乱れ 風を呼び嵐が来た」
「♪ウージの森であなたと出会い ウージの下で千代にさよなら」
と、直接的な言葉をほとんど使わないで歌われている。
メッセージを広く伝えるうえで、どちらが良いのかはわからない。
『島唄』が言葉をオブラートで包んだことで、万人に受け入れられたことは確かだろう。
ほのめかす程度でも、より多くの人に届くのが良いのか。
つらくとも直接的な誰もがわかる言葉で、くさびのように心に突き刺していくのが良いのか。
言わんとしていることは、どちらも同じなのだけれど。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
ラララで歌われる最後の部分は
マントラとかチャントとかいうのを思い起こさせる。
どんどん早くなって締めくくられる。
マントラ? しらない? あ、そう。
ほんとにマニアックになりそうなので、おしまい。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「でいご」「ウージ」
これらは固有名詞なので、特に深い意味というかはない。
どちらも植物の名前。
梯梧(でいご)は沖縄県の県花。ウージはさとうきびのこと。
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