日本百名曲 -20世紀篇-

20世紀の日本の歌曲から、独断と偏見による日本100名曲を紹介(500名曲もやるぜよ)

『ルビーの指環』 寺尾聰 ~ たぶん、1拍目はアンタッチャブルなのだろう

ひとつひとつの要素を見ていくと、

まったくと言っていいほど、いいところが見当たらない。

 

 

終始低い声でぼそぼそ歌うし、

単調で盛り上がりに欠けるし、

未練たらたらの失恋ソングだし、

歌い手のビジュアルもいまひとつパッとしないし。

 

だのに、なぜここまで、「いい歌」となって

さらに、2か月以上にわたってオリコン1位という大ヒットになったのか?

正直永遠の謎だ。

 

【EP】美盤!寺尾聰 「 ルビーの指環/CINEMA HOTEL」【検:針飛び無】 シングルジャケット/amazonより
ルビーの指環

ルビーの指環

 
  • 作詞 松本隆、作曲 寺尾聰、編曲 井上鑑
  • 1981年(昭和56年)2月5日、東芝EMIより発売
  • オリコン最高位10週連続1位(年間1位/1981年)
  • 歌詞はうたまっぷへ:ルビーの指環 寺尾聰 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
  • 曲にまつわる背景などはwikipediaにくわしい:ルビーの指環 - Wikipedia
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    メロディーに至ってはまさにお経さながらで、

    ひょっとすると、全ての歴代オリコン1位曲のなかで

    もっとも音域が狭く、もっとも最高音が低い曲なのではないかと

    勘ぐっている次第。検証したことはないけど*1

     

    あまりに単調なためだろう、途中で転調を試みているが、

    多少キーが上がったところで低いものは低い。

     

     

    ただ、リズムがすこぶるいい。

    イントロのエレキギターに続く、ダダ!の2音にゾクゾク来る。

    そのリズムに、ルーズなボーカルがかぶさる。

     

     

    もしかしたら、これが

    日本のメジャーシーンで、ルーズがオシャレに転化した

    最初の出来事だったのかもしれない。

     

     

    名曲・聴きドコロ★マニアックス

    拍の頭になぞ、決して音を出してやるもんか。

    まるで地雷でもあるかのように、4拍子の1拍めを

    ほとんどすべての音が避けている。

     

    出したとしてもおそるおそるという感じで、

    本来ここにあるべきバスドラムの音も聞こえない。

    というより曲全体通してバスドラムを鳴らしていない??

     

    サビの頭で、ようやくシンコペーション*2ではない

    素直なタイミングでボーカルが入るが

    どこか落ち着かない感じで力無げだ。

    サビがシャキッとせず、だらけて聞こえるのは、

    おそらくこの出だしに原因があるのだと思う。

     

     

     

    意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み

    ルビーの指環

    表記としては指輪ではなく指環。まあ、比較的どうでもいいことだが。

    ルビーは7月の誕生石なので、「貴女」は7月生まれなのだろう。

    このうたで「ルビーのゆびわ」が高い知名度を得たおかげで、

    「留守番電話」というものが普及していなかった当時、

    日本の多くの子どもが、しりとりにおいて数少ない

    「る」の返し手を一つ得たのだった*3

     

    「曇りガラスの向こうは風の街 問わず語りの心が切ないね」

    曇りガラスの向こう=世間。風の街=冷たい。

    問われてもいないのに、世間は冷たい、と

    ひとり感じてしまう切なさ。ひきこもりの心境か。

     

    「枯葉一つの重さもない命 貴女を失ってから」

    命→失う、で勘違いしそうになるが、「貴女」は死んだわけではない。

    命は主人公の命のこと。

    女にフラれてから、抜け殻になってしまった主人公。

    自分の命の価値も見失ってしまったようだ。

     

    「ベージュのコートを見かけると 指にルビーの指環を探すのさ」

    手を見るということは、

    後ろ姿を見かけると、ということだろう。

    正面から見ているのであれば顔を見るだろうからね。

    『駅』(竹内まりや/1987年/ by)と同じようなシチュエーション。

     

    しかし、あの時返されて受け取ろうとしなかった指環を

    彼女がまだしていてくれているという

    望みを持ち続けるなんて。なんてことだ!

     

     

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    ▼ 寺尾聰
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    脚注

    *1:検証する気もないけど

    *2:1,2,3,4のリズムよりも、前のめりで入る音

    *3:そういえばどちらも「わ」で終わるね