以下に記載するのは、表題曲の場面に至る前の出来事を、思いめぐらせてみたものだ。
こういうのは単なるイタい妄想ともいう。
「・・・私がいないと、あなた一人じゃ何にもできないんだろうけど、せいぜい頑張ってね。」
いったい君にはいくつ頭と足があるんだい?と尋ねたくなるくらい、いっぱいの帽子といっぱいの靴を、一つ一つ丁寧に荷造りしながら、君は言った。
次から次へと湧き出してくるそれらの物に半ば呆れながら、僕は尋ねる。
──本気で出ていくのかい?脅しのつもりならもう充分だろ?
「潔くないなぁ。何度もいったでしょ。男らしく諦めたら?」
女のくせに、と言ったら怒るくせに、そういうことを言うんだ。それに、諦めろと言うけど、そもそも家を出ていく理由すら教えてくれないじゃないか。ワケ分からないよ。どうすればいいのさ。
──どこに引っ越すのかも教えてくれないの?
「教えたくない。教える必要もないし。」
──馬鹿だな、忘れ物とかあったら困るだろ。
「いいよ。捨てちゃって。気に入ったら取っておいてもいいよ。あげる。」
いつもだったら、ごみとしか思えないようなものでも、処分しようとすると、全部大事なの!と主張する人間の言葉とは思えない。
一緒に暮らすようになってから、物が増えるにつれて自分の領域が侵食されるような恐怖を感じていたのは確かだけど。
──君が心配なんだよ。
「私は私でしっかりやるからほっといて。あなたもそう。これからは自分ひとりで生きていってね。」
いい笑顔を見せて君は言う。そういえば怒っていない君の顔を見るのは久しぶりかもしれない。吹っ切れたような表情で君は続ける。
「一人で暮らすのが嫌なら、私の知らない誰か、好きな人を見つけて、その人と一緒にやってね。」
──やだよ。もう二度と恋なんてしないよ。するもんか。
精一杯の皮肉と強がりのつもりだったけど、まるで拗ねているようになってしまった。
「そう、ご自由に。」
こうして、長年ずるずると同棲した彼女は遂に家を出てゆき、
残された主人公は、ひとりの朝を迎える。
訳分からないという様子で訪れた別れの物語のエンドロールに合わせ、この曲が始まる。
「♪君がいないと何にもできないわけじゃないと・・・」
それっぽいでしょ?
常々、エンディング曲っぽい歌だなぁ。と個人的に思っている。

おそらく主人公は、そんな風に同棲する彼女に対し、
常々少し下に見るような言動を取っていたのだろう。
彼女の作った朝食に対し「♪君が作ったのなら文句も思い切り言えたのに」と言い、
彼女の甲斐甲斐しさを失ったことに対し「♪やっと自由を手に入れた」と言い、
彼女の揃えた物に対し「♪無駄なものに囲まれて暮らす」と言う。
悪気もなく、さらりと当然のように言い切るあたりがそれを物語っている。
それでいて、「♪さよならといった君の気持ちはわからない」
という無神経さも兼ね備えており、愛想つかされるのも必然というものだ。
結果、彼女は出て行ってしまうわけだが、
そこで主人公は、どれだけ自分が彼女に依存していたかにようやく気付くことになる。
最初に書いた妄想のような展開があったかどうかは自明ではないが、
彼女の残したものは、「歯ブラシ」や「君あての手紙」といった『君の抜け殻』だけではなく、
こうあらねばならない、という強迫観念ではなかったろうか。
「君がいないと何にもできない」「男らしく、潔く」「二人で出せなかった答え」
なんて、自分で考えているようで、実は彼女に言われたことや刷り込まれたことを
無意識に反芻してしまっているだけなんじゃないかな。
そんなことを考えていたら、最初に書いたような妄想物語が出来上がった。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
いつもより眺めがいい左
プリンセス・プリンセスの「M」の回にも触れたけど、
これは、車の助手席にいつもいるはずの人がいない、とする説が一般的。
songs20thcentury.hateblo.jp
だけど、自分の妄想の文脈でたどると、
すっかりなくなった彼女の荷物のおかげで、今まで見えていなかった
リビング左側の壁や窓が見えるようになった、という解釈をしてもいいと思う。
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