おそらく一生のうちに一度も訊かれることは無いだろうが、
もしも、「演歌で最も美しい曲は」と問われたとしたら
迷わずにこの曲を選ぶ。
「♪ヒュールリー ヒュールリーララー」
森昌子のよく通る声による、寂しげなメロディが
実にキャッチ―で印象的。
このフレーズはツバメの啼き声として歌われているが、
実際つばめはこんな啼き方しない。*1
おそらく冬の風の音を、寂しげなつばめの啼き声と重ねているのだろう。
夏にやってくる渡り鳥であり、本来冬にいないはずの
南に還りそびれた、はぐれツバメ。
相手の男性をこの「冬のつばめ」に例えている*2ということは、
この男性も、本来ここにいるはずのないひとなのだろう。
「♪娘盛りを無駄にするなと」
なんていうおっさん臭い言い回しをするせいで
若い娘に言い寄られて過ちを犯す男との不倫の歌と思われがちだが、
必ずしもそうではないと思う。
自分といては不幸になる、幸せにしてやることができない、
という思いが、
「無駄にするな」「忘れてしまえ」
ということばになって表れているのだろう。
「♪季節背いた冬のつばめよ 吹雪にうたれりゃ寒かろに」
運命に抗う男。見ている方もつらい。
「♪絡めた小指互いにかめば あなたと痛み分けあえますか」
男は何らかの心の痛みを負った人間なのだろうか。
夢に破れドロップアウトした流れ者か、
罪を犯したはぐれ者か、
女を遠ざけようとする求道者か、
はたまた命が尽きようとしている男か。
それでも添い遂げたいと願う女と、
未練を残しつつそれを突き放す男。
女は、その去りゆく背中を
「♪ついておいでと 啼いて」いるように思わずにいられない。
そんな自分を「聞き分けのない女」と表現している。
「♪忘れてしまえと 啼いて」いるのかもしれない。
だけど、「♪ついておいでと啼いて」いると信じたい。
同情から生まれる恋は、古い恋なのだろうか。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
フォーク歌手で、かつ一発屋のレッテルを貼られた人間の作であるがゆえに、
色眼鏡で見られることを避けたものという。
この頃から、フォークやロック出身者による
演歌のニューウェイブが始まる。
このことで、転向者と元来者と、ベテラン同士がしのぎを削り、
演歌の最大のヒット時代を迎えることになるが*4、
新人が出ず、ファンも偏り高齢化してしまった。
このことが、かえって演歌の寿命を縮めてしまったような気がする。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
「娘盛り」
娘盛りは花盛り、という歌だか詩だかがあった気がする。
なぜか今急に思い出したが、なんのフレーズかトンと思い出せない。
若い女性が最も華やいでいる頃を指すことば。
「越冬つばめ」
つばめは、初夏に日本にわたってくる渡り鳥。夏の間に日本各地で子育てをし、冬の訪れの前に南に帰ってゆく。冬になっても帰らず、日本にとどまるツバメを越冬つばめというらしいが、正直そんなツバメは見たことがない。
現在入手可能な収録CD/視聴可能
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