その詩といい、そのメロディといい、
かなり映像的な曲だと思う。
「♪あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む」
激しく波音を立てていた海が、
ひとりの人物を映しだした瞬間に、無音の世界に変わる。
「♪夢で叫んだように唇は動くけれど 言葉は風になる」
激しく何かを叫んでいるが、何を言っているのかは聴こえない。
聴こえるのは、ただ風の音だけ。
イメージがひしひしと沸いてくるが、
この曲が主題歌である肝心の映画の方は見たことないので、
実際にはどういうシーンで使われたのかは知らない。
たぶん全然違うのだろうと思う。
妄想とはそんなもんだ。
歌の内容からは全く意味不明な曲のタイトルは、
まんま映画のタイトルそのもので、まさに“取って付けた”もの。
前作の『セーラー服と機関銃』(1981年/ by)の原題が
『夢の途中』だったように、
この曲も『海のスケッチ』という原題を持っていたらしい。
といっても、作者の来生たかおによって
原題でリリースされた『夢の途中』(1981年/ by)とは違い、
原題はあくまで裏話として語られているだけで、公式なものではない。
その場限りのタイトルをつけられたことが、
マイナスになっているよな、と思う。
曲名で人に伝えたい時などに、とっさに思い浮かばないのだ。
正直、この曲ほんとにこのタイトルでよかったんだっけ、
といつも不安に掻き立てられる。*1
タイトルだけでなく、曲調も、
透き通った美しさ、と表現するには
あまりにもムズムズするような不安さ、不気味さがある。
ちょっと暗いけど、とてもいいメロディ、、なんだけど、
どこが盛り上がりのサビかはっきりとしない。
どこで終わるんだかもはっきりしない。
スローテンポのようで、実は通常のミドルテンポ。
ドラマチックな展開を見せるのは実はイントロだけ。
はっきり言って、落ち着かなく気持ち悪い。
無表情な薬師丸の歌い方が、いっそうそれを煽っている。
しかし、この気持ち悪さが、
こんなにもやすらかに、
気持ちいいと感じるのは、いったいどうしたことだろう。
僕の体が昔より、大人になったからなのか?*2
お子様にはこの良さがわかるまい。
大人ってホントやーね。
名曲・聴きドコロ★マニアックス
不思議な始まり方をして、不思議な終わり方をする。
遠くで聞こえるような寂しげなピアノの音--聞き逃しそうになる--、
ピアノに遅れをとったかのように慌てて飛び出すストリングス。
そんな意外な始まりが、曲の世界の中に
聴き手を引きずりこんでいく。
そして最後に余韻を残した終わり方、と言えば聞こえがいいが
何だろう、このもやもやした感じは。
曲の終わりとともに、聴き手は解放されて
訪れる静寂から日常の音が復帰してくる。
いや、おっかない曲だな。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
この曲、言葉の持つイメージからくる
例えだけで構成されているようなもので、
難解というよりも、むしろ連想ゲームのようなものだ。
テーマは、たぶん「戸惑い」。
そんな感情をいろんな例えで表現している
「あんなに激しい潮騒が あなたの後ろで黙り込む
身動きも取れないの 見つめられて」
背景と人物が一緒に見えるような、少し離れた位置から、
頭の先からつま先まで-もしかしたら心の中まで-観察され、
周囲の音まで聞こえなくなるような戸惑いをおぼえた。
「話をそらして歩いても 心はそのまま置き去りね
昨日からはみ出した私がいる」
戸惑いから逃れようと話を逸らすが、どうしたら良いかわからず
そこから心が一歩も動けなくなってしまった、
まるで時間が止まってしまったような
心ここにあらずの自分がいる。
「波のページをめくる 時の見えない指先」
本のページをめくるように、規則正しく引いては寄せる波。
止まったように思える時の中でも
時間はたえず過ぎていく。
「透明な水の底 ガラスのカケラが光る」
どちらも透明で見えないのだけれど、
うっかり足を踏み入れると怪我するもの、
あるいは壊れやすいものが潜んでいる。
純粋さの心に潜む危うさか。
「離れて見つめないで」
ここでやっというべき言葉が見つかる。
言葉にならない言葉を無理に言おうとするのではなく、
戸惑いの原因となるものをまず排除するべき、と気づく。
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※該当曲を聴ける保証はありません。