かつては、タイトルや歌い手を間違えて覚えていたために
いくら探しても見つからない曲、というものが存在しえた。
ネット時代の今日では、些細な手がかりであっても
おおよその情報は(誤情報も含めて)ググって得ることができるが、
それ以前は、その方面に明るそうな人に尋ねるか、
さもなくばCDショップ店頭や、レンタルCDなどで
ジャケット情報をもとに、しらみつぶしていくのが常套手段だった。
そんなだから、ジャケットに収録曲の記載がないCDを運任せで購入して
玉砕することも当然の成り行きだったし、逆に思わぬ出会いもあった。
いくつか私的な具体例をあげてみよう。
大阪のアメリカ村で立ち寄ったレコードショップで、店内にかかっていた曲。
そのとき一回聴いたきりだったが、その後サビ部分だけが
頭の中で永久ループ的にリフレインし、大変苦しめられた。
「♪明日にこそ~明日にこそ~あした天気になあれ~」
歌い手は声からしてすぐにわかる。南こうせつだ。
タイトルはたぶんサビから想像するに「あした天気になあれ」だろう。
ちばてつやの漫画と同じ名前なので、
もしかしたらアニメ化した時の主題歌か何かでは、
などと、あて推量をしつつ探してみたが、これがちっとも見つからない。
たどり着いた正解は、かぐや姫『うちのお父さん』(1974年/ by
)。
伊勢正三の『なごり雪』( by)目当てに手に取った
名盤「三階建の詩」に収録されていたことでめでたく再会。わかるかっての。
歌詞も記憶違いだったようだ*1。
もうひとつ。
角川のアニメ映画のCMに使われていた(と脳内改変されていた)曲で、
「♪夢追いの旅人のロマンは永遠に 明日を求め未来を見つめ ほほえみ湛えよう」
という歌詞のもの。
映画「宇宙皇子」の主題歌『夢狩人』(ダ・カーポ/1989年/ by)が
まさにそれではないかとアタリをつけ、
ダ・カーポ*2のアルバムを片っ端からあたるうちに、
あろうことかダ・カーポのその尋常ならざるハーモニーラインにハマり、
ヒントを求めて、宇宙皇子の小説を読み始めたら、
新刊を追いつつ足掛け何年もかけ全巻*3読破してしまう迷走っぷりを見せた。
その後、ダ・カーポではなく
ハイ・ファイ・セット*4の曲であるとウワサに聞きつけ、
やはりCDをしらみつぶしに当たっていったのちに、
『歓び』(作詞 阿久悠作詞、作曲 鈴木康博)という仮タイトルの
未レコード化音源であったことを知り、見事討死。
なお現在、なぜかネット上では
この曲はサーカス*5の歌だというデマが主流を占めていることを知る。
一体何が正しいのだ!
そして、いよいよ問題の表題曲。原由子の『面影ワルツ』
NHKの連続テレビ小説*6の主題歌だったので
これもすぐに見つかるかと思いきや、一向に見当たらない。
ドラマのスタッフロールでは『面影ワルツ』と表記されていたと記憶しているし、
友人もそう証言していたため、間違いに気づかず全く見つからなかった。
見つけたのは、レンタル落ちのシングルCDが積み重なっていた
中古レコード屋の、通称「エサ箱」の中。
エサ箱とは、処分品のようなレコードなどが詰め込まれ、
無造作に床に並べられた段ボール箱の俗名だ。
ジャケットについている「連続テレビ小説『甘辛しゃん』主題歌」の記載をみて、
まあ百円だしとダメ元で購入して、ようやく本当のタイトルを知る。
『涙の天使に微笑みを』
一体これらのニセ記憶は何だったんだ。
世界が全部変わってしまい、自分だけが正しい記憶を残している!
まさにそんな気分。
それにしても、またぞろ桑田佳祐作品かね。
何回か前に研ナオコ『夏をあきらめて』をやったばかりじゃないかね。
と、自分の内なる声が聞こえてしょうがない。
だいいち、この曲のイントロのピアノのフレーズなんて、
前年のサザンオールスターズ『太陽は罪な奴』と途中まで全く一緒じゃないか。
などと不届きな脳内悪魔の声までよぎるが、
桑田のノスタルジック・サウンドは、特に本人以外に歌わせると、
クセが消えて大変すばらしいものに出来上がるので、何とも捨てがたい。
まだまだこの後にも、高田みづえの『私はピアノ』(1980年/ by)をはじめ、
数作品は桑田佳祐作品を採り上げていくことになると思うので、
懲りずにお付き合いのほどを。
マニアックなほじくり方をすると、この曲、
雰囲気の異なる3通りのサビを愉しむことが出来る。
ボーカルの雰囲気が変わらないのと、あまりにさりげなく変化していくので、
これが全然気づけないんだけれど、
最初はドラムスもベースもなく、ほぼピアノとボーカル、プラスの装飾的な音だけで
まるまるワンコーラス通してしまっている。
2番以降で、ドラムが静かにフィルインしてきて、やがてベースも入って
最終的にバンドサウンドっぽくなる。この構成が実に巧妙。
もしも最初っから全部の音が入っていたら、
たぶん、結構つまらない曲になっていたのではないかと思う。
この構成が生きているから、途中の正弦波的な心細いシンセサイザーの音色や、
最後のバンデネオン*7のような寂しげな音の余韻が実に生きてくるのだ。
心憎いよな。
意味が知りたい★ここんとこ 深読み&ななめ読み
結えない髪
髪をくくることが出来ない程度に短くした髪。
古風に考えれば失恋して髪をバッサリ、というシチュエーションだろう。
それほどではなくても気分転換に、長かった髪をショートにしたのだろう。
One Way Lover
直訳すると、片道愛好者、となるが、
ここでの意味合いは、一方通行の恋人、くらいの意味だろう。
片思い、というものではなく、
付き合っているけれども、自分だけが一方的に想いを寄せていて、
相手はあまり関心がなさそうに見える、くらいの状況だったと思われる。
そこから破れた、あるいは破れかかっている恋物語、なのだろう。
いつか失くした夢のかけら
この夢というのは、「母の背中で見ていた夢」と同じものだろう。
「愛する誰かと巡り合えたら 大事な生命が世に報われる」
の部分がそれにあたるとすると、
運命の人と見定めた相手が、またしても目の前から去っていく、
そんな運命に翻弄されてきた主人公。
おそらく、運命に理想を求める過ぎて、重いことに気づいていないのだろう。
それにしても、何回目の運命の勘違いだったのだろう。
現在入手可能な収録CD/視聴可能
やっぱ生で聴きたい人は、ライブ・イベント情報&チケット
※該当曲を聴ける保証はありません。
脚注
*1:正しくは、「♪ニッコリ笑う ニッコリ笑う 明日天気になあれ」
*2:久保田広子と榊原まさとしによるデュオ。
代表作に『結婚するって本当ですか』(1974年/ by
)
『野に咲く花のように』(1983年/ by
)や
『宗谷岬』(1976年/ by
)
『空からこぼれたStory』(1984年/試聴はこの先から)など。
個人的に大好きなデュオなので、これ以外に挙げたいマニアックな曲がいっぱいある
*3:全部で52冊もある。1998年にようやく完結。
*4:3人組の混声コーラスグループ。
代表曲に『卒業写真』(1975年/ by)
『冷たい雨』(1976年/ by)
『フィーリング』(1976年/ by
)など
*5:ABBAを意識したような男2人、女2人の混声コーラスグループ。
代表曲に『Mr.サマータイム』(1978年/ by
)
『アメリカンフィーリング』(1978年/ by
)
*6:ちゃんと見ていないのでタイトル不明だった。時計代わりにつけていたテレビで、この曲が流れるタイミングが出掛けるタイミングになっていたと思う。